無料会員募集中
.国際  投稿日:2014/9/28

[梁充模]【“勝者の呪い”にかかるのか】~評価割れる、現代自の巨額土地買収~


 梁充模(経済ジャーナリスト)

執筆記事TwitterFacebook

「勝者の呪い」この表現は、競争では勝ち抜けたが、勝利のために過度なコストを支払ったことで、むしろ危険な状態や 後遺症に陥る状況を意味する。もしかしたら、グローバル5位の自動車企業である現代(ヒュンダイ)自動車グループは、今後、「勝者の呪い」を経験するかもしれない。それは、9月18日の“勝利”のせいだ。

この日、現代自は、ソウルの三成洞(サムソンドン)に位置した韓国電力の敷地7万9342平方メートルの競争入札で落札者に選定された。三成洞(はビジネスや商業の中心地の一つで、韓国電力の敷地は三成洞内でも「最後に残った卵黄」と呼ばれている。現代自グループはこの敷地にホテルや自動車テーマパークを含むグローバルビジネス センター(GBC)を建設する計画だ。

この土地を手にするため、 現代自がかけた金額はおよそ10兆5500億ウォン(約1兆1000億円)だ。鑑定価格の3兆3000億ウォンより3倍を上回る。マーケットは、現代自が4~5兆ウォンに入札するだろうと予想したが、その2倍を越える金額が発表されると、大きな衝撃が走った。ここに加えて、今回の競争入札に参加した三星電子の応札額は6兆ウォン程度だったといううわさが流れ、現代自に対する市場の反応はさらに冷たくなった。

現代自の過度な応札額に対する否定的な反応は、株式市場で真っ先に現れた。入札に参加した現代自動車グループの3社(現代車、起亜自動車、現代モービス)の株価は急落した。発表当日、 現代自の株価は9.17%急落、 起亜自動車、現代モービスはそれぞれ7.80%、7.89%下落した。入札金額10兆5500億ウォンのうち、現代自動車が5兆8025億ウォン(55%)、起亜自動車は2兆1100億ウォン(20%)、現代モービスは2兆6375億ウォン(25%)を負担する。

資金調達には問題がない。3社が保有している現金及び現金同等物は落札価格の約3倍の29兆4856億ウォンだ。財務構造にもショックはない。現金が土地や建物のような固定資産に横滑りするだけだ。10兆5500億ウォンの現金が作り出した利子収益の減少分も、税引き前利益の1.5%水準に過ぎず、1株当たり純利益率(EPS)に及ぼす影響も限定的だろう。

問題は「機会費用」だ。10兆5500億ウォンを他のところに投資したとしたら、もっと高い価値を創出したのでは?という思いがマーケットに広がっている。この資金を新規工場の建設、M&A(合併買収)、R&D(研究開発)などに投資したならば、現代自はより良い結果を得られるのかもしれない。単純計算に過ぎないが、10兆5500億ウォンと追加建設費用5~6兆ウォンの資金で新規工場を建設すれば、現代自動車グループはグローバル生産台数1位になることができる設備を持つようになるのだ。

グローバル企業らは技術開発や果敢なM&Aを通じて競争する。トヨタはPHV(プラグインハイブリッド車)やEV(電気自動車)、FCV(燃料電池自動車)などエコカー開発投資のために、今後1兆8000億円を投入すると発表している。一方、現代自は莫大な資金を投入して土地を買収する。現代自は、今回の選択で、「勝者の呪い」にかかってしまうのか、それとも、「真の勝者」への道を歩み始めるのか。今後の行方が注目されている。

【あわせて読みたい】

[梁充模] 【低迷する韓国経済「チョイノミクス」の効果は?】

[李受玟] 【ユニクロと無印良品の韓国進出記~過去10年を振り返る~】

[梁充模]<韓国・朴槿恵政権の外交能力が試される>「東アジアの中間者」として「安保と経済」の二兎を追う韓国

[梁充模]<反NAVER連合?>韓国ポータルサイト2位「ダウム」と「カカオトーク」が合併

タグ梁充模

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."