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経済  投稿日:2014/10/29

[藤田正美]【独・新発国債ゼロ、ユーロ圏の矛盾】~どうする、圏内の富の再配分~

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 藤田正美(ジャーナリスト)「藤田正美が見る世界と日本」

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ドイツは来年の新発国債がゼロになる見通しだとか。さすがにEUの中で、財政規律の守護神の役割を果たしてきた国だけのことはある。日本などは、小泉純一郎首相が「30兆円を上回ることはない」と明言したのに、それを若干上回ることになって「そんなのは大した話じゃない」と答弁して大騒ぎになったことがある。その30兆円などとっくに越えてしまったのに、最近は誰も話題にしない。

たしかに、ドイツはすごい。しかし日本とは違うのである。いちばん違うのは、ドイツはユーロ圏の中で「固定相場制」で生きているということだ。通貨・円は変動相場制だ。もし日本の競争力が弱まって、大幅な経常収支の赤字が続けば、何らかの形で為替相場が調整され、円は安くなる。そして競争力を取り戻して、たとえば貿易収支が改善し、日本に来る外国人旅行者が増えて、経常収支が好転してくれば円は高くなる。要は、そうやって調整するのが変動相場制ということになる。

ところがドイツはどうか。EUの中で、ユーロという統一通貨を設定したことによって、ドイツはユーロを採用した国との間では「固定相場」を採用したのと同じことになった。さらにユーロとドルや円との関係は、従来のドイツの通貨マルクとドルや円の関係と違う。ユーロにはドイツだけでなく、ギリシャやポルトガル、スペイン、イタリアなど競争力の弱い国の力も反映されているからだ。

ユーロ圏内で固定相場ということになれば、競争力の強いドイツは域内貿易において安定的な優位に立つことになる。為替という調整手段を欠いているのだから、弱い国は為替以外の競争力回復手段を探すということになる。これは容易ではない。域内ではドイツにやられ、域外とは「強い通貨ユーロ」で苦しい思いをする。もともと「粉飾決算」などがあったにしても、ギリシャが苦境に陥るのは目に見えていたと言ってもいいだろう。

言い方を換えれば、ドイツの強さを支えていたのはユーロ圏のギリシャなど主に南欧の国(英語ではperipheralと呼ばれた)であるということになる。

もしユーロ圏を前に進めようとするならば、こうした「貧困を生み出す構造」を変えなければなるまい。早い話が、日本の国内での資産再配分機構である地方交付税交付金と同じような制度をユーロ圏内に設ける必要があるということだ。

もちろんこうした再配分はキリギリスにとっては嬉しい話だが、アリにとってはとんでもない話だ。門前にキリギリスが列をなせば、アリは面倒を見切れないと思うだろう。ただもしユーロ圏を前に進め、やがては財政同盟まで結ぶとすれば、それは避けて通ることはできない道である。ユーロ圏の盟主ドイツはそれをどうやって国民に説明するのだろうか。原発廃止どころではない難しい政治的課題である。

 

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