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.社会  投稿日:2014/11/17

[為末大学]【意思決定はどの程度自分の意思?】~”関係性“の中で生きている私達~


為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)

執筆記事プロフィールWebsite

 

認知症患者と契約を結んだ場合、それはどの程度効力があるだろうか。自分の意思でハンコを押しサインをしているかもしれないけれど、それを自分の意思と言っていいのか。カルト集団の信者でいる間にした意思決定はその人の意思としていいのか。それとも冷静でないからとその人の意思としないほうがいいのか。

また、未成年が意思決定は自身の意思としていいのか。しっかりと将来も見据えて意思決定できるだけの経験はどの程度必要か。10歳の子の決定を認めるべきか、それともまだ未熟だからわからないといって退けるべきか。

焼き鳥屋の前でいい匂いがする。お腹が空いて赤のれんを潜る。お腹は空いていたのかそれとも匂いに誘発されたのか。自己決定バイアスというものがある。認知バイアスがある。自分で決定したことが実は自分の意思ではなく何かに引っ張られていたということを人は受け入れようとしない。自分の決定は自分の意思で行われたと認識する。

正常な状態とはなにか。自分の揺るぎない意思とは何か。尊厳死も、一貫してある一定期間死への揺るぎない意思がなければ決定できないという。一瞬の意思決定はただのゆらぎの可能性がある。果たして揺るぎない自分の意思も存在するのかどうか。そもそも今の自分が正常ではないと、人は気づくことができるのか。

意思決定はどの程度自分の意思によるものか。人は関係性の中に生きている。間を生きる私たち。

 

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