無料会員募集中
.国際  投稿日:2014/12/31

[遠藤功治]【自動車メーカーの救済支援も視野に】~タカタ製エアバッグリコール問題 その5(最終回)~


遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)

「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」

執筆記事プロフィール

 

タカタは今上期に、476億円のリコール費用を計上しています。これは特別損失として今期収益に影響、タカタの最終損益は250億円の赤字と予想されています。今期無配転落も正式に発表されました。但し、下期に入ってから調査リコールの全米への拡大、リコール台数の大幅な追加が起きていますから、更に費用計上が必要となる可能性が高いと言えましょう。

今回のリコールに必要なコストは、自動車1台当たり約8,000円から1万円程度と言われます。調査リコールを全米に拡大した場合、タカタは新たに800万台以上のリコールになると推定しています。つまり全量がリコールされた場合、800億円から1,000億円程度の規模の追加費用とも考えられます(ただ現実問題として、全量がリコールされることはありません。特に米国では日本に比べて実際にリコールが実施される割合が低いのです。国土が広いこと、日本のように車検制度が無いこと、中古車の取引が俗人ベースでも活発なことで、確認出来ないリコール対象車が比較的多いのです)。

タカタの株価は足元1,300円程度で推移しています。これは今年初めの水準からほぼ60%下落した水準、現状の時価総額は約1,100億円なので、年初から約2,200億円の時価総額が失われたことになります。会社の価値である時価総額が1,000億円強の会社に1,000億円近い追加コストが発生すればどうなるか、ことは深刻です。

2014年3月期のタカタの自己資本は1,753億円。手元の現預金残高は約1,100億円です。仮に今期特別損失が更に1,000億円追加発生すれば、今期の赤字額は1,250億円に拡大、自己資本はこの分が丸々減少しますので、500億円強の水準まで落ち込みます。これは財務の健全性から言って、余りに低い水準とも言えます。

株式売却等により特別利益も計上すれば、この資本の減少幅や今期の赤字額は縮小しますが、トカゲの尻尾切りのようで、根本的なバランスシートの劣化は避けられません。勿論、ここには現在発生している裁判関係のコストは一切考慮していません。このため、自動車メーカー、ないしは金融機関が支援に乗り出す可能性も排除しません。

ただ前述した通り、自動車メーカーとのコストの割合次第というところもあります。タカタは日本最大のエアバッグメーカー、日本のほぼ全社に納入をしています。タカタからのエアバッグ供給が無くなるなどしたら、最もその影響を受けるのはホンダであり、他にもエアバッグ供給を受けられない自動車メーカーが続出します。

エアバッグの購買先を、右から左に変更するなど、少なくとも物理的に10年間は無理でしょう。もしそうなら、財務的にタカタを救済支援する方が、少なくとも短期的に供給を受けられなくなるリスクよりも良いという経営判断もまた可でしょう。少なくとも調査リコールのコスト負担は、自動車メーカーが多く負担する、などのオプションは残っています。取り敢えず、来年2月初旬前後に発表される第3四半期の決算数値が注目されます。

(了)

 

【あわせて読みたい】

[遠藤功治]【全米騒然、日本車メーカーも狙い撃ち】~タカタ製エアバッグリコール問題 その1~

[遠藤功治]【初期対応の遅れがバッシング招く】 ~タカタ製エアバッグリコール問題 その2~

[遠藤功治]【ライバルにシェア奪われるタカタ】 ~タカタ製エアバッグリコール問題 その3~

[遠藤功治]【当初から迅速に動くべきだったホンダ】 ~タカタ製エアバッグリコール問題 その4~

[加藤鉱]<司法を支配する中国共産党による外資企業の摘発が猛威>中国独禁法当局が日本自動車部品メーカーもターゲットに

タグ遠藤功治

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."