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.国際  投稿日:2013/11/26

[宮家邦彦]外交・安保カレンダー(2013年11月25-12月1日)


宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)

執筆記事プロフィールblogWeb

 

今週の焦点は二つ。

一つ目は中国国防部が発表した「東海防空識別区」に関するものだ。日本語では「防空識別圏」、英語ではADIZ(air-defense identification zone)という。専門家によれば、中国の「防空識別区」は国際慣習上のADIZと、微妙にというか、かなり大幅に異なるのだそうだ。

例えば、国防部は同識別区を飛行する航空機は中国側にその「飛行計画の通報」、「無線通信による質問への回答」、「二次レーダー応答機の始動」、「識別標識の表示」が義務付けている。これが新たな現状変更の試みであることは明らかだろう。

更に、中国側指示に従わない場合、中国の武装兵力が防御的な緊急処理措置を講ずるのだそうだ。しかし、ADIZはあくまで自国の領空を守るための目安として定める空域で、領空以外の部分は公海上空だ。勿論そんな指示に従う義務などない。11月24日の日本の外務大臣談話も、「こうした措置は,国際法上の一般原則である公海上における飛行の自由の原則を不当に侵害するものであり,国際航空秩序に対して重大な影響を及ぼすもの」だと述べている。当然だろう。

人民解放軍に国際法と国際慣習を正確に理解する者がどれだけいるかは不明だが、どうやら中国側はEEZやADIZを「準領海」、「準領空」とでも考えているフシがある。本気だとしたら信じ難い。通常の国際理解をはるかに超えているからだ。

共産党中央文民から指示があったとは思えない。恐らく解放軍空軍の見切り発車だろう。日本に圧力を掛け日米の離反を図ったのだとしたら、むしろ逆効果ではないか。日米同盟が一層強固になることが、なぜ中国の軍人には分からないのだろう。

第二の焦点はイラン核問題に関する同国と英米仏独露中による暫定合意だ。筆者は1994年を思い出す。対北朝鮮攻撃を諦め、「枠組み合意」を作ったものの、結局北朝鮮の核兵器開発を許してしまった痛恨の年だ。北朝鮮とイランは違うって?勿論、同一ではないだろう。しかし、如何に戦術的合意を重ねても、戦略的な意見の相違は決して解消できない。6か月後、最終合意に達すると思うかと問われれば、筆者は交渉が暗礁に乗り上げる方に賭けるだろう。

これ以外にも、重要なイベントが目白押しだが、もうこれ以上コメントするスペースがない。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

 

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