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ビジネス,経済  投稿日:2015/4/20

[神津多可思]【少しずつしかし着実に進む経営環境の変化】~GE、金融部門売却に見るグローバル企業の経営判断~

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神津多可思(リコー経済社会研究所 主席研究員)

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毎日の慌しい仕事の中では、少しずつ着実に変わって行く経営環境の変化は、意外に意識できないものだ。どの企業も、毎日、毎週、毎月、半期、年度という時間視野の中で、目標を追い、見通しを修正しながら忙しく経済活動をしている。その一方で、当面は元には戻りそうにない経営環境の変化も少しずつ進行しているのである。

先般、米国のゼネラル・エレクトロニクス社(GE)が、その金融ビジネス部門のほとんどを売却すると発表した。GEは、もともとは日本で言う電機産業に属する企業だが、消費者向けの最終製品について国際的な競争力を次第に失っていく中で、金融ビジネスにも注力するようになった。昨年も、利益全体の半分近くは、金融ビジネス部門であるGEキャピタルが稼ぎ出している。

ところが、先の世界的な金融危機の後、銀行に続きノン・バンク(最近ではシャドー・バンクと称されることも多いが)の規制も強化される方向にある。米国の規制は、金融システムにおいて重要とみなされる場合、クレジット・カード、保険、リース、不動産などを扱うノン・バンクであっても、自己資本、流動性、さらにはコンプライアンスの面でも、これまでより厳しいものになる。

そうした中で、GEキャピタルの利益額も(したがってROEも)低下傾向にあり、それを踏まえての今回の経営判断だ。今後GEは、そのビジネスを製造業に回帰させていくとしているが、それは単純な過去への回帰ではなく、これからも競争力を発揮できるとみる重電などの分野を重視してのことである点も忘れてはならない。

このGEのケースのように、少し長い目でみると、はっきりと変わりつつあり、かつ当面は元に戻らないような経営環境の側面が浮かび上がることがある。金融規制の潮流はその典型だが、それ以外にも同じような変化はないだろうか。

日本にとっては、人口動態をまず思い付く。国内市場だけをとれば、お客様の数が年々減っていく市場がどんどん増えているはずだ。その中にあって、今年の新入社員がハッピー・リタイアメントを迎えられるような経営の道筋をどう描くか。答の出ない問いだが、見ない振りもできない。

また、今年の暮れには国連の気候変動枠組条約締結国会議(いわゆるCOP21)がパリで開催される。どこまで温暖化ガスの排出抑制を急ぐかについてはなお色々な意見があるが、少なくとも二酸化炭素の発生をこれまでより抑制しなくてはならないとみておくべきだろう。それは、今後の企業経営にも大きく関係してくるはずだ。

さらに、現在の世界経済の成長パターンはどうも国際的な金融危機前とは違ったものになっているようだ。先進国よりはまだ高いが、新興国の経済成長率は平均的には危機前の水準には戻らないことが次第にはっきりとしてきた。他方、先進国の経済成長も、米国は相対的にしっかりしているようだが、全体として決して勢いのあるものではない。両者を合わせれば、世界経済の拡大スピードはこれまでもより鈍い。そうした状況において、どこの国のどの層の需要に焦点を定め、そのための供給能力をどこで拡充していくか。そしてそのスピードはどうするか。グローバル企業は改めて複雑な連立方程式を解かなくてはならなくなっている。

毎日の目まぐるしさの中ではなかなか落ち着いて考えられないが、しかし企業を巡る経営環境は、色々な面でこれまでとは違うものになっている。そこをどう読み取って明日のビジネスに反映させるか。今回のGEの決定は、それが結果的に正解になるかどうかはまだ分からないが、少しずつではあるが着実に進む経営環境の変化を読み取り、今、意思決定することの重要性を改めて思い起こさせる。

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