[宮家邦彦]外交・安保カレンダー(2013年12月16日-22日)
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
先週末に東京で開かれた日本・ASEAN特別首脳会議に関する分析については別途書いたので、ここでは繰り返さない。それよりも何よりも、先週最も驚かされたのは北朝鮮の張成沢処刑のニュースではなかろうか。12月17日は故金正日総書記の命日だから、ひょっとしたら今回の事件の全貌ではないにせよ、一部なりとも明らかになるかもしれない。17日の式典には誰が出席するのか。こんな初歩的なことで大騒ぎするのだから、実に不思議なマーケットである。
それにしても北朝鮮を専門とする方々には、つくづく「大変な仕事だな」と、僭越ながらご同情申し上げる。とにかく裏の取れない仕事が多過ぎる。それでも何か喋らなければならない。「よく分からない」とも言いにくい。神経の磨り減る毎日であろう。
ウイグルでの出来事も気になるところだ。15日夜にカシュガルで住民と警察当局が衝突し、十数名が死亡したらしい。10月の天安門前での車両炎上事件との関連はあるのか。同事件以降の取り締まり強化の結果であれば、事件の連鎖が懸念される。
エジプトがまた新憲法を作るらしい。暫定大統領によれば、来年1月中旬に国民投票を行うそうだが、ムスリム同胞団はどう対応するのか。前憲法はイスラム色が強かったというが、昨年の国民投票で承認されたではないか。今更何を作るのだろう。新エジプト憲法案は宗教政党に厳しく、軍部に優しいという。同胞団が国民投票をボイコットすれば、新憲法は正統性を失いかねない。そうなれば、元の木阿弥。エジプトは1950年代から基本的に進歩していないことになる。情けない話だ。
中東アフリカといえば、16日に南スーダンでクーデター未遂事件が起きたらしい。7月に解任された元副大統領が背後にいるのだとすれば、混乱の長期化もあるだろう。こんなことを彼らは一体何度繰り返せば気が済むのだろうか。
今週も重要なイベントが目白押しと言いたいところだが、欧州はクリスマス前の週らしく、会議は多いが、中身が少ない。この点は米国も同じで、忙しいのはアジアと中東アフリカばかりということか。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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