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.国際  投稿日:2015/7/6

[林信吾]【「らしくなかった」ギリシャとなでしこ】~ギリシャ危機の真実 3~


林信吾(作家・ジャーナリスト)

「林信吾の西方見聞録」

執筆記事プロフィールブログ

まったく・・・。週明けの朝から、そんなバカな、と言いたくなるシーンを立て続けに見せられ、さわやかさのカケラもない。

ひとつは、ギリシャ。現地時間の5日、EUが求めていた、さらなる緊縮財政案を受け容れるか否かの国民投票が行われたが、なんと61%が「NO」という結果だった。

らしくないなあ。事前の世論調査では、賛否そのものは拮抗していたが、60%以上の国民が「ユーロ圏にだけはとどまるべき」と回答していたのに。選挙に不正はなかったという前提で、理由としてひとつ考えられるのは、「中国が、世界経済への影響力を一段と強めるべく、EUへの投資を拡大する」という投資筋の観測があるのだが、これがいつの間にか、「EUからの資金が途絶えても、今度は中国マネーが入ってくる」などという噂に形を変えて流布し、投票行動に影響を与えた可能性くらいか。

しかし、いや、言うまでもないことだが、ユーロ圏から離脱(自発的であれ半強制的であれ)を余儀なくされたギリシャに、今さら投資する国があるはずもない。まあ、年金カットに続く事実上の預金封鎖で、生活苦に陥った人たちにしてみれば、「どのみち破産するなら、EUの奴隷になるより自由に将来を選択したい」といった気分だったのかも知れない。ギリシャ自由市民の意地か。理解できないが。

いずれにせよ、私が前回示した予測は見事に裏切られ、しょうがない、なでしこジャパンが女子ワールドカップで奮戦する姿を見れば気分も直るかな、と思っていたら・・・。

相手は米国。これは言い訳でもなんでもなく、勝ち目は五分五分もない、と思っていた。解説者なども、勝率30%くらい、と言っていた人が多い。しかし、それにしても、5-2の惨敗とは。

サッカーでは一般に、3点差がつけば、相手を粉砕したとか、されたとか言うのだが、開始早々から一方的な展開での5失点とは、まさに木っ端微塵。客観的に見ても、ワールドカップの決勝戦とは思えない、レベルの低い試合だったと言う他はない。相手のロイドというエースを、幾度もディフェンスの選手が見失って、挙げ句、彼女ひとりで3得点。ハットトリックを許してしまった。

最後まで諦めず、必死で反撃したことは認めるけれど、問題はその反撃手段。

平均身長で6センチも勝る相手に、クロスをどんどん放り込んでのパワー・サッカーを仕掛けるなど、もはや自爆攻撃。相手のオウンゴールを誘って1点返したが、直後に1点取り返されたし、最後まで神風は吹かなかった。

途中交代で、大ベテランの澤が投入されたが、自らのファウルでチャンスを潰すわ、しまいには警告(イエローカード)受けるわ、とにかく「らしくない」プレイばかり。歯車がひとつ狂うとこんな結果になる。それがサッカーの怖さでもあり面白さなのだな。

こちらはまあ、敗戦によって女子サッカーの人気が一気にしぼんでしまう、ということもなさそうで、ギリシャの将来ほどには悲観的でないのかも知れない。

ただ、女子ワールドカップ連覇の夢が砕け散ったことで、期待された「特需」もまた、夢と消えたことも事実である。

日本の女子サッカーは、未だプロの環境が整えられておらず、日本代表クラスでも、バイトしながら頑張っている選手がいたりする。こんなことでは、強豪国の座から転落するのも、そう遠い将来のことではないかも知れぬ。今次の結果によって、大きく変わってくるのでは、というのが我らサッカー者に共通する期待だったのだけど。人生において楽観的であることは大事なことだと、筆者はかねてから考えているが、それも程度問題だということなのだろう。特に、お金がからむ話では。

(この記事は
【ギリシャ、困った時の歴史認識】~ギリシャ危機の真実 1~
【“ユーロ離脱辞さず”こそ、国民はNO?】~ギリシャ危機の真実 2~
の続きです。)


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