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.社会,ビジネス  投稿日:2015/7/14

[遠藤功治]【プラグインハイブリッド車が鍵】~大手自動車会社の決算と今後の課題 三菱自動車工業 1~


遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)

「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」

執筆記事プロフィール

今回は三菱自動車を取り上げます。前回の日産自動車と同様、最近なかなか三菱自動車の話題が無かったのですが、久しぶりにアウトランダーPHEVの発表会が行われました。今回はフルモデルチェンジではありませんが、約2年半でのビッグマイナーチェンジ。最大の特徴はそのデザインで、前モデルからフロントグリルなどを大きく変更、“ダイナミックシールド”と呼ぶフロントデザインを採用、随分精悍な顔つきとなりました。今後このデザインが三菱車のアイデンティティーになっていく、そしてブランドの再構築を推し進めて行く、とのことです。

この車輛はPHEV、つまりプラグインハイブリッド車です。昨年度は世界で35,000台を販売、特にオランダやイギリスなど欧州で人気が高く、全販売台数の約70%を欧州が占めました。これはPHEVなどのスーパークリーン車(特にCO2排出量の少ない車種)に対し、欧州各国が補助金を出しているからで、今後もこの補助金次第で、販売台数が変化する公算大です。アウトランダーPHEVの小売価格は約360万円から460万円と、比較的高水準。これに対して、オランダや英国では約50万円前後の補助金を出しており、販売を支えています。この新型アウトランダーPHEVの販売計画は年間42,000台と、前モデルから7,000台余りの上乗せを狙っており、うち27,000台が欧州、日本国内が12,000台、米国にも3,000台程度の出荷を計画しています。

プラグインハイブリッド車は今後、トヨタがプリウスの全面改良でこの秋に本格投入、ホンダや日産も新車投入の予定、またその欧州では、ポルシェ・アウディ、BMWなどが相次いでPHEVを登場させるなど、各社が凌ぎを削る今後の環境対策技術に置いて中核に位置づけられる模様です。欧州では4年後にユーロ7が導入され、米国でもZEV法の変更が間近です。ZEV法とはZero Emission Vehicleの一定量販売台数の義務化措置。つまり、カリフォルにアで販売している台数の何%かを、ZEVにしろというもの。ただ、現実問題としてZEVに分類されるのは電気自動車EVと燃料電池車FCVのみ、この2車のみで規制をクリアできるメーカーなど世界に殆どないので、何%はTZEV(Transient ZEV)で置き換えてもいいよと。このTZEVにプラグインハイブリッド車が入る訳で、各社共にその開発を急いでいるということになります。ちなみに普通のハイブリッド車は入りません。先にトヨタとマツダが提携しましたが、その理由の1つには、マツダにはEV・PHEVが無く、トヨタから電動化技術をもらって対応するつもり、ということになるのだと思います。

三菱自からはやや外れますが、カリフォルニアにテスラというEV専門メーカーがあります。現在価格が1,000万円以上するスポーツモデルの“モデルS”を販売していますが、今まで黒字になったことはありません。年間販売台数は僅か5万台程度。それでも存在出来ているのは、実は排出権取引のお陰だとも言われています。つまり、ZEVであるEVを販売して排出権のクレジットを得て、それをZEV規制等をクリア出来ないメーカーに販売する訳です。まさにCO2の排出権取引です。また、カリフォルニアでの販売台数が多い上から6社(GM、FORD、クライスラー、トヨタ、ホンダ、日産)にはより厳しい水準が求められます。中規模社の5社(BMW、現代、起亜、メルセデス、VW)、小規模社6社(ジャガー、ローバー、ボルボ、マツダ、富士重、マツダ、三菱自)はその規制値が下がります。実は小規模である三菱自は、ZEVではなく、全てプラグインで満たすことが許されます(この内容は頻繁に変わってはいますが)。よって、三菱自にとっては、プラグインハイブリッド車の成功が今後の鍵になる訳です。

【早期の提携模索も選択肢に】~大手自動車会社の決算と今後の課題 三菱自動車工業 2~ に続く。本シリーズ全2回)

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