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.政治  投稿日:2015/11/11

[安倍宏行]【改憲を求め、都内で1万人集まる】~来年の参院選に向け、憲法改正発議を~


トップ写真: 「今こそ憲法改正を!1万人大会」©安倍宏行

安倍宏行(Japan In-depth 編集長/ジャーナリスト)

「編集長の眼」

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あの日本武道館(東京都千代田区)が満員になるとは。正直、これほどとは思っていなかった。10日行われた、「今こそ憲法改正を!1万人大会」がそれだ。有識者らでつくる「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が主催したもの。会場には小雨が降ったりやんだりする中、1万1,321名の人が詰めかけた。

「国民の会」共同代表でジャーナリストの櫻井よしこ氏は、「憲法改正の機は熟しつつある」との認識を示した上で、「今、世界は驚くほど変化している」とし、南シナ海と東シナ海での中国の行動や、ウクライナや中東におけるロシアの行動を、「国際法の順守や問題の平和的解決という決まり事を、力の行使で現状変更を迫る手法で取って替えるもの」と厳しく非難した。

又櫻井氏は、現行の日本国憲法では、中国やロシアの脅威に対し、「まともに対処することができない」と指摘するとともに、大規模な自然災害に対しても「緊急事態条項さえない現行憲法では、国民の命を守り通すことは困難」とした。

その上で櫻井氏は、「現在、戦後初めて衆参両院で憲法改正の発議に必要な三分の二の議席の確保が可能な状況が生まれている」とし、「国民全員が何故憲法改正が必要なのかを互いに確認し合うこと」が大切だと述べた。最後に、「来年7月の参院選を一つの目標として憲法改正の実現に向け全員の力を結集していこう」と檄を飛ばした。

予算委員会に出席していた安倍首相は欠席したがビデオメッセージを寄せ、現行憲法が占領軍の影響下で原案が作成されたものであるとの認識を示した上で、「私たち自身の手で憲法を作るという精神こそが新しい時代を切り拓いていくことに繋がる」と述べた。

また、安倍首相は憲法改正の向けた議論が今始まっている、とし、国民的議論が深められることが大切だ、との認識を示した。また、憲法改正の発議の成否を決めるのはあくまで国民投票であるとした上で、国民的コンセンサスを得る為に党派を超えて取り組むべきだとの認識を示した。

続いて挨拶した次世代の党中山恭子代表は、「日本国憲法は独立国家の憲法ではないとしっかり認識する必要がある。」とし、「拉致された国民を救うことが出来ていない。」と述べて、日本は平和の維持すら危うくなっている、との危機感を示した。その上で、「日本は独立国家として長い歴史と伝統を持つ、日本の心を大切にした、日本人自らの手による自主憲法を制定しなければならない。」と述べた。

又、アメリカカリフォルニア州弁護士でタレントのケント・ギルバード氏は、「今の憲法には致命的におかしいことがある。元首の規定がないことだ。」と指摘、「象徴天皇とは、GHQ(連合国軍総司令部)の妥協の産物だ」との考えを示した。

さらに、「米国人の一人として断言する。(GHQは)ただ単に日本を弱い国にしたいから9条を作った。簡単に言えば制裁だ。(日本人は)早く目を覚ましてください。」と呼びかけると同時に、「米国が私たちを守ってくれるという依存症が日本国内に蔓延している。そうした病を早く払しょくすべき。自分の国は自分で守るという当たり前のことが憲法改正を通じて現実なることを願う。」と期待感を示すと、多くの観衆から拍手が沸き起こった。

会場には数十名の国会議員と同じく数十名の地方議員も参列した。「国民の会」事務局によると、会が目指している憲法改正への賛同者は、445万2,921名に達し、国会議員の署名は超党派で422名、地方議会での決議は31都道府県議会、「県民の会」は全47都道府県にて結成されたという。

大会は、1 各党が憲法改正案を提示し国民的大議論を巻き起こすこと、2 国会が憲法改正を速やかに発議し、国民投票を実施すること、の2点を決議して終了した。今後の会の運動としては、1 1000万人賛同者の達成、国会議員署名と地方会議会決議の推進、この力で憲法改正の国会発議を実現することと、2 憲法改正の国民啓発映画(作家百田尚樹氏指揮)の上映運動などによる国民世論の形成などを挙げた。

櫻井氏は国民投票の時期を来年の参院選としたが、実際に国会発議が行われるかどうかはその時の政治状況に左右されるため、不透明だ。改憲に向けての動きが国民的議論にまで発展するためには、メディアがこれまで以上に論点を明らかにし、取り上げていくことが不可欠だ。

一方で、安保法案の時も、与野党は対立するばかりで、国の安全保障のためにどのような法整備が必要なのかという本質的な議論にまで深まらなかったことは、私たち国民の側にも責任がある。憲法改正は、国の在り方にかかわる最重要課題であることを考えると、私たち一人一人がこれまで以上に真剣にこの問題に向き合い、考えていくことが求められる。それが私たちの子々孫々に対する責任であろう。


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