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.社会  投稿日:2014/1/11

[為末大]箱根駅伝とAKB48〜その「人気」は「場」にあって「演者」にあるのではない


為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)

執筆記事プロフィールWebste

 

◆決意の仕方◆

新年を迎えると「今年こそはこれをやるぞ」という決意をしては、2月あたりになってはたと何も変わっていない事に気がつく。そういう事を繰り返しいて、ある日はたと思ったのは、決意→実行→実現、には技術があるという事。

私の決意は脆く、想像以上に意志が強くないという前提にまずは立った。その上で「じゃあ、そんな人間の行動が変わるにはどうすればいいか?」を考えると、会う人と場所を変える事が一番簡単だった。言葉で言うと簡単だけど実はこれがかなり厄介。

「会う人を変える、会う人を決める」という事は、「会わない人を決める」という事でもある。つまり年の初めに「誰との縁を切るのか」を決める事でもある。一期一会や、縁を大切にという言葉は大事だけれど、本当にそれを実行すると縁の維持の為に人生の時間をかなりもっていかれてしまう。

決意を一番阻害するのは、去年から続いているもの。今までのものも大事にしながら新しい事を始めるのはほぼ不可能だ。だから僕は五輪後や年初めなど、キリがいい所で、捨てるものを決めていた。余白が無いと何も入らないからだ。

縁を切るのだから、当然、様々な所で罵られるし、悪い噂も立つ。でも“決意”とは多分そういう事で、特に継続圧力が強い社会では相当に力技でいかないと、決意なんてできない。続ける事は私達には染み付いている。やめる事、断ち切る事が日本人にとっては一苦労。

決意を阻害するのは、何となく続けている習慣、持ち続けているもの、着れないでいる人間関係だと思う。いい人でいたい人や、八方美人は、大事なものを絞れず、結果決意が出来ないのだと僕は思う。

 

◆箱根とAKB48◆

以前、立て続けに箱根駅伝の功罪について話を聞いた。箱根駅伝は陸上界では最大と言える位注目度が高く、当然そこで活躍する選手の中からスターが現れ、世間に名を馳せる。そのおかげもあって駅伝、ひいてはランニングを広める事やそのブランディングに貢献している面はかなり強い。

しかし、大学側が教育の観点をかなり薄め、大学の名前を売る為に駅伝を使うという例が増えている。強化費や、勧誘方法に特にルールがない今は、陸上界としてはかなり大きなお金が動く。正月にあれだけ露出があるにも関わらず、1、2億もあればチームを作ることができれば、大学としては『おいしい広告』なのだ。

箱根駅伝はスターを生んできた。僕の後輩も箱根で一世を風靡した。でも、箱根があまりに人気な為に、はっきりと言って長距離選手が箱根駅伝以上に世の中に注目される事はほぼない。箱根でスターになった選手は知名度といい、認知度といい、なだらかに下っていく競技人生を生きる事になる。

箱根人気は、箱根という場にあって、その演者である選手によるものじゃない。もちろん演者が毎年感動を作る主役ではあるのだが、たくさんの仕掛人によってその舞台は支えられている。言い切ってしまえば、箱根という舞台とシステムが人気な訳で個々の選手が人気という訳ではない。

舞台とシステムがしっかりしていてそこにブランドがある場合、どうしてもそれを抜けた後に右肩下がり感を感じてしまう事が多い。それは長期的に見て本来の価値に落ち着くという事なのだが、そのギャップが辛い。自分の世間の評価が下がっていると感じると人間は幸せになりにくいからだ。

何かに似ているなと思ったのがAKB48。システムと場にブランドがあって、そのドラマに価値がある。もちろんその場があるから人はそれを目指せるし活躍もできるわけであって、場にはいい面も悪い面もあるんだろうけど、この構造自体をある程度演者が理解しているかどうかで随分人生が違う気がする。

箱根でスターになった人の為にせめて少しでも元スターが話をする機会を持てないものか。強烈な祭りを体験して、日常が空虚に感じられている、そんな虚しさを抱えている選手に会う事がよくある。熱狂はいつか終わると知っているのとそうでないのでは、随分違うと僕は思う。

※本連載は、為末大の公式ツイッターの内容をJapan In-Depth用にまとめて掲載しています。

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