ビーチバレーは裕福な国のもの? 伊選手ドーピング問題に揺れるバヌアツ
相川梨絵(フリーアナウンサー・バヌアツ共和国親善大使)
「相川梨絵のバヌアツ・ニュース」
前回お伝えした、バヌアツのビーチバレー女子チームですが、その後、新たな展開となりました。
お伝えしたように、今年6月の段階での上位15位でのオリンピック出場はのがしました。その時点でランキングは18位。その後、コンチネンタルカップで善戦し、オリンピック開幕直前の順位は16位でした。
そして、オリンピック開幕を3日後に控えた8月3日(水)、私の元へニュースが飛び込んできました。上位15位でオリンピック出場が決定しているイタリアコンビの一人がドーピング検査で除外されたということです。
これを受けて、VASANOC(バヌアツオリンピック協会)はすぐさま、IOC(国際オリンピック委員会)とFIVB(世界バレーボール団体)にバヌアツの繰り上がり出場を要請しました。バヌアツの主張は、ビーチバレーはチームスポーツ。これまで、ポイントが加算される12試合も、ドーピングの影響がないとは言い切れない。スポーツはフェアーでクリーンでなければならないと。
しかし、IOCは、代替選手とのコンビでイタリアチーム続投という結果を下しました。理由は、「特別な場合と健康上の理由で選手を交換しても良い。」とのこと。しかし、ドーピングは、特例または、健康上の理由なのでしょうか。
VASANOCはすぐさま、CAS(スポーツ仲裁裁判所)にこの事案を提出しました。しかし、CASは「オリンピックはすでに始まっているので、バヌアツチームはもう戦えない。IOCとFIVBには後日文書を書く」とこれを却下しました。
リンリン選手・ミラー選手だけでなく、バヌアツは、この結果に大変失望しています。ビーチバレーが、お金のある国のもののように感じると。
今回のオリンピックでは、ロシアの国ぐるみでのドーピング問題もありました。ICOは、判断を各競技の国際連盟にゆだね、結果200人以上が出場しています。これがバヌアツだったら、同じような結果になるとは到底思えません。それは、国が小さいからでしょうか?お金がないからでしょうか?
スポーツは、クリーンでフェアーであるべき。バヌアツチームは、確かにお金がなく、ここまでの道のりは奇跡のようなものでした。そして、リンリン・ミラーのオリンピック出場はバヌアツの夢でもありました。それが、納得できない形で砕かれてしまったことがとても残念です。小国のバヌアツは、この決断を受け入れるしかありません。
強くなるしかないのです。しかし、彼らは、ここで泣き寝入りはしません。クリーンでフェアーなスポーツを訴え続け、今後、1回りも2回りも強くなることを期待します。
トップ画像:リンリン・マタウアツ(Linline Matauatu)右:ミラー・パタ(Miller Pata) ©FIVB
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この記事を書いた人
相川梨絵フリーアナウンサー・バヌアツ親善大使
1977年6月10日生まれ。茨城県出身。2000年、共同テレビに入社し、フジテレビアナウンス室へ出向。フジテレビアナウンサーとして、主に情報番組、バラエティ番組などで活躍。2006年、フリーに。2012年、結婚を機にバヌアツへ移住、バヌアツ親善大使に任命される。