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.政治  投稿日:2017/1/1

朝日新聞と久米宏の天皇発言政治利用 その1

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古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

■奇異だったNHK報道

天皇陛下の「生前退位」をめぐる議論がますます輪を広げ始めた。

いうまでもなく契機は天皇陛下ご自身による2016年8月8日のNHKテレビでの発言である。ごく簡単にまとめれば、その趣旨は、ご自分はもう高齢なので退位、ただし摂政は設けてほしくない、ということだろう。国民の側からすれば、その内容への共感はともかく、まったく唐突なご発言だった。

天皇陛下への最大限の敬意を強調したうえで、あえて申せば一般国民の視点からみて、この突然のテレビ放映でのご発言には奇異な点が多々ある。

天皇陛下の地位は周知のように、憲法第一章の第一条【天皇の地位・国民主権】で以下のように定義づけられている。

「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」

この定義に従えば、当然ながら天皇は公人中の公人として、「象徴」という特別な立場にある一方、日本国民の「総意」や「主権」の範囲内に存在する。一個人、一私人からはおよそほど遠い公的な制度の頂点に立つ存在ともいえよう。あくまで日本という国家、そして日本国民、その国民を代表する日本政府という枠があっての天皇なのである。

その天皇陛下がご本人の意思でテレビに登場されて、自分自身のお言葉で見解を表明される。その表面の動きだけをみれば、一般の日本国民がテレビに出て、述べたいことを述べるという言動と変わりはない。陛下ご自身が「私が個人としてこれまでに考えてきたことを話したい」と述べられているのだ。

だが天皇陛下の場合、公人中の公人として、どのような手続きを踏んで、この前例のないテレビでの出演にのぞまれたのだろうか。天皇陛下が「私が個人として」と語られる場合、そのお言葉は「個人」のものなのか、「公人」なのか。いまの憲法で規定された天皇に「個人で考えたことを話す」という自由があるのだろうか。

もし今回のような事態が頻繁に続く場合はどうなるのか。国民や政府という枠組みがあってこそ存在する天皇陛下がご自分の意思だけで国民全体への重要事項の伝達をテレビという特殊な手段を通して随時、されるようになった場合、その結果はどうなるのか。このような一連の疑問が自然と提起されてしまうところが奇異なのである。

さらに奇異なのは「生前退位」という言葉だった。陛下ご自身はこんな言葉は使われていない。だとすれば、その報道にあたった側、つまりまずはNHKが最初に考えついた用語とみるのが妥当だろう。他のメディアがそれに追随したのであろう。今回の天皇陛下のビデオメッセージの以前は出てこなかった用語でもある。

しかしこの「生前退位」という言葉は皇后陛下が指摘されたように、一種の不快感を招く奇妙な表現である。そもそも天皇が退位されるのは「生前」だからこそできることだ。 

だから「生前退位」というのは「馬から落ちて落馬する」というに等しい重複の表現である。単に「退位」とすれば、十分に意味が通じるではないか。NHKの軽率な造語なのではないか。皇后陛下が「生前退位」という言葉をはっきりと忌避されたのも当然だろう。

実際には「譲位」という言葉が最も適切に思える。天皇の座を譲られること、そしてもちろん生前でなければできない手続きを指すわけである。だが本稿では便宜上、いまのメディアの多くが使っている「生前退位」という用語もそのままの引用として使用することとする。

(その2に続く。毎日18時配信。全4回。この記事は月刊雑誌「WILL」 「久米宏の『妄言』ダシに 朝日の姑息な『天皇利用』」2017年1月号掲載からの転載です)

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この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト・麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「アメリカがいつまでも守ってくれると思うなよ」「危うし!日本の命運」「中・韓『反日ロビー』の実像」など多数。

古森義久

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