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スポーツ  投稿日:2017/7/27

パッチワーク社会は持続可能か?

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為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)

【まとめ】

・人々の幸せは別の人の不幸せの上に成り立っている。

最適化された社会は多様性を受け入れず、都度現れる課題を局所的に解決しパッチワークを続けている。

・最適化されたシステムをどうしていくのか、考えてみたい。

 

障害を持った人がいろんなところに行こうとすると様々な問題が起きる。パラリンピアンと会食をした時に、車椅子で自由に入れて車が近くに駐車できるのがなかなかないというのを初めて知った。グーグルマップで出てくるルートも、車椅子ではなかなか登れない角度の坂もありそのままたどり着けるわけでもない。

昔、どこかのホテルで経済合理性から障害を持った人用の駐車場を省いてしまっていたことが問題になった。開き直ったような経営者の対応に対して世間は厳しく反応した。企業の社会的責任として、そのぐらいのコストは払うべきだと。

マイケル・サンデルさんが功利主義への思考実験の話をよくする。地球上の人々は全て幸せである。功利主義としては条件を満たしている。ただその幸せは人々の不幸せを一心に背負っているある一人の若者の不幸せによって成り立っている。人々はそのことをまるで知らないかのように触れはしない。最大多数の最大幸福は満たしているように感じられる。果たしてこの社会は望ましいのだろうか。

障害を持った人をないがしろにするなんてあそこは酷い場所だと叩かれる。障害を持った人や、妊婦さんや子供を連れた人など、スタンダードとは違う人がサービスを利用する”コスト”を企業は払うべきだという意見が世の中で広まる。

なるほど確かにと思う一方で、局所に負担をかける対応はいつまで続けることが可能なんだろうかと不安になる。ある平均的な日本人を標準として最適化された社会構造は、本当の意味で多様性を受け入れられるのだろうか。その都度現れる課題を局所的に解決しパッチワークを続けていけるのだろうか。

友人が子供を持った途端、働ける場所が減ったと言っていた。子供を育てながら(しかも一人で)働けるような条件の場所は少ない。最適化されたシステムは、標準とは違うものを入れるようにはなかなかできていないからだ。関わっている人に悪い人は少ない。ただシステムが悪いだけだということは多い。だから余計に問題の解決は難しい。一体誰が全体のシステムをもう一度一から作り直すのか。

息子の弁当を作る時、箱の中に仕分けをしてからおかずを考える。一度おかずを作ってから弁当箱に入れようとしたら大きすぎて入らなかったハンバーグがあった。仕方ないので角を落とし、本来とは違う形ではあるが四角にして弁当にはまる形にして押し込んだ。もう一つ大きな弁当箱を買わないと余白がないなと思った。

(この記事は2017年6月29日に為末大HPに掲載されたものです)

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この記事を書いた人
為末大スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役

1978年5月3日、広島県生まれ。『侍ハードラー』の異名で知られ、未だに破られていない男子400mハードルの日本 記録保持者2005年ヘルシンキ世界選手権で初めて日本人が世界大会トラック種目 で2度メダルを獲得するという快挙を達成。オリンピックはシドニー、アテネ、北京の3 大会に出場。2010年、アスリートの社会的自立を支援する「一般社団法人アスリート・ソサエティ」 を設立。現在、代表理事を務めている。さらに、2011年、地元広島で自身のランニン グクラブ「CHASKI(チャスキ)」を立ち上げ、子どもたちに運動と学習能力をアップす る陸上教室も開催している。また、東日本大震災発生直後、自身の公式サイトを通じ て「TEAM JAPAN」を立ち上げ、競技の枠を超えた多くのアスリートに参加を呼びか けるなど、幅広く活動している。 今後は「スポーツを通じて社会に貢献したい」と次なる目標に向かってスタートを切る。

為末大

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