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.国際  投稿日:2014/4/11

[現役女子大生・留学リポート]増田理紗の“ワシントンDC留学レポート”(3)アメリカと日本、小学校教育はココが違う!


留学_増田

増田理紗(慶應義塾大学・アメリカ留学中)| 執筆記事

 

1週間半の春休みも終わり、授業再開です!春休みにはカリフォルニア出身の友人を訪ねてサンフランシスコとロサンゼルスを旅しました。

帰りの飛行機の中、大学の課題をやろうとプリントを広げると、通路を挟んだ隣の席にいたおばさまにいきなり声をかけられました。

“Are you a teacher?”
“Um, no, I’m a student at Georgetown University. I’m studying there as an exchange student.”

飛行機や大学校内など、アメリカではあらゆる場所でよく見知らぬ人からフレンドリーに声をかけられます。小学生の頃住んでいたマンションでも、知らない住人から、「今日の学校はどうだったかい?」などと声をよくかけられたものでした。

おばさまはDCでの小学校教育の改革、改善の活動に携わっている方で、私が取り掛かろうとしていた大学の課題プリントを見て同業者かと思い、話しかけようと思ったのだそうです。会話をしていると、おばさまが混乱したような顔になりました。

「ねえ待って、あなた交換留学生って言ってたわよね。どこの出身なの?」
「日本です。」
「そうなの?でもじゃあどうしてアメリカンアクセントで話すの?」

小学生の時に3年ほどNYCの小学校に通っていた経験があることを話すと、

「じゃあ日本とアメリカの両方の小学校教育を受けているのね?日本と比べてアメリカの小学校教育はどう?アメリカの小学校には何が足りないのかしら?」

日本とアメリカ、小学校レベルであってもその教育方法に大きな違いがあると思う。(私はPrivate Schoolだったため、多少Public Schoolとは異なる場面があるかもしれないが)どちらがより優れている、というわけではない。ただアメリカの小学校教育の中で力になった、と今振り返ってみて思う経験がある。

一つは課題プロジェクト。小学生がそんなことをするの?と驚く方もいるかもしれない。もちろん大学のものとは全く異なる。一人一人が異なる題材を1つ与えられ、それについて小学生なりに本を探して読み、インターネットで検索し、まとめる。その後、調べた課題についてクラスの前で発表するのだ。

私に与えられた題材はジョン・カボット。イタリア人探検家で、北アメリカを発見した人といわれている。自分がその人物になりきって、調べた情報をもとに日記を書き、まとめる、というプロジェクトを長期間にわたって行った。

8年前に調べたこの人物について今でも多くのことを覚えている。先生に教わる、という一方通行な情報入手ではなく、自分で必要な情報を調べる、そしてその情報をクラスメイトに伝える、という情報を能動的に得、まとめ、理解し、それを発信する、というプロセスがあるからだと思う。

この他にも、アメリカ先住民についてのグループワークやNASAのスペースシャトルについて等、数多くのユニークなプロジェクトを作り上げた。それらの経験は、今でも鮮明に覚えている。自発的に調べたり、伝えるために理解を深めたことは、簡単には忘れないのです。

もう一つは夏休みの膨大な読書。アメリカの小学校は、9月の新学期までの間に2か月半から3か月、という長期の夏休みがある。サマーキャンプに通ったり、友達と遊んだり、とにかくのびのびと過ごすのだ。そんな中、必ず出ていた課題が読書。

学期中ももちろん毎日本を読むが、アメリカは小学生でも何かと宿題が多い。しかし夏休みの間は一切宿題がなく、その代わりにおすすめ図書の中から4、5冊本を選び自由に読み、感想文を書く。日本の小学校の夏休みも本を読んだが、それ以外の宿題も沢山出ていて、忙しかったような気がする。しかし、アメリカでは2-3か月という長期間、自由に本を読むことで活字への抵抗感が自然となくなり、読む力と共に想像力も高めることが出来たように思う。

だから「私は、個人的にはアメリカの小学校教育はすばらしいと考えているし、多くのことを私自身も学んだわ。」とおばさまに話した。「でも日本の小学校の方が算数のレベルは比べものにならないくらい高いのも事実ね。」と言うとおばさまは、やっぱり、といったような表情を浮かべ少し笑い、こう続けた。

以前携わっていた学校で、もう何年も前に暗記重視の教育を行っていたけれど、あなたの話を聞いて、私たちの教育方法には大きなメリットがあると再度知ることが出来た。暗記重視の時も優秀な人が多く出たけれど、考えたり意見を述べたりする小学校環境が多い。そうすることで社会に出たときにも通用する力がつくと思う。でも、算数がアジアの国等に比べるとレベルは下回っていることも事実だし、取り組む必要がある。そのためにはある程度、暗記を重視する教育も必要になってくる。まだまだ取り組むべき課題がある、と語ってくれた。

日本とアメリカ、両国の小学校教育を受けて育ち、アメリカの小学校の課題プロジェクト、グループワーク、読書などから得た、自分で考え発信する力、情報収集し、まとめ、相手に伝える力は今でも大きく活きていると思う。しかし、アメリカで受けた教育をそのまま日本でも導入するべきだ、とは私は考えない。

数多くある常用漢字の暗記、アメリカとは比べものにならない程多い日本の歴史の暗記など、暗記が必要な勉強が日本では多々ある。特に漢字の勉強は小学校低学年から始め、中学高校まで漢字テストが続く。全てを学ぶには時間がかかる。また、暗記を重視する教育方法だからこそ、小学生の算数の力が強いというメリットがある。日本の小学校教育において暗記は不可欠であると思う。

そうした中で、アメリカの小学校のようにグループワークをさらに積極的に行い、リサーチし発表する、という場が増えても面白いと思う。前回、パブリックスピーキングについて書いたが、人前に出て何かを発表することが苦手な人は、幼少期からこのような発表の場を与えられることにより、慣れることができると思う。

日本の教育に欠けているのはこのプレゼンテーション能力の養成であろう。グローバル時代に必要不可欠なこの能力の必要性は皆分かっているはずなのに、日本の教育システムの下で身につかないのは一体何故なのだろうか?その原因と対策を考える事が今求められていると感じる。

 

【リポーター学生紹介・増田理紗(ますだ・りさ)】

gazou4841993年東京都生まれ。

NYCの現地小学校The Caedmon Schoolを卒業。

私立東洋英和女学院高等部を卒業後、2012年、慶應義塾大学法学部政治学科に進学。

2013年8月から交換留学生として、アメリカGeorgetown Universityに留学中。現在、国際政治、アメリカ政治、外交等、日本を取り巻く国際環境を学んでいる。

 

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