[為末大]サンタがお父さんであることは、知らない振りをすべきなんだろうと子供心ながらに感じていた
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
食品偽装問題を眺めていると、最初は誤表示だという言い分であったけれど、段々と意図的だったという事が判明してきて、偽装であった言われ始めた。意図的であったかどうかの境目と、更に本当はそうではない事をみんな薄々気づいていたかが僕には興味深い。
昔、相撲で八百長問題で揺れていた時、詳しい方が「あんなの本気で毎回やったら、すぐ力士が壊れてしまって人気がなくなるよ」と言っていた。案外と相撲ファンの中では多少の星の貸し借りは怒りを買っていないという趣旨の事も話していた。
ガチンコは突き詰めれば、その場でお互いが利益を食い合うというゼロサムのイメージが浮かぶ。そういう点で 考えれば日本の会議はほとんど現場ではガチンコが無い印象がある。そもそも予定調和と根回しの文化の国では 、その場でのガチンコがあまりない。
そもそも日本の法律や憲法は決まっているものが現実に合わなくなってくると、解釈を変えるという手法でやりくりしてきたように思う。建前は美しく、現実とのずれは解釈でなんとかごまかす。少しずつそれが加速し、一線を越えた時許されなくなる。
「おままごと」はガチンコではなく、そういう事にして進める遊びだと思う。偽装問題や、誤表示というものを突き詰めると、僕はこの社会自体が「そう言う事にしておきましょう」という前提でできているような気がしてなんとも不思議な感じがする。
子供の頃、お母さんは「お母さんの役」をしているんだと思ったとき、世界が変わって見えたのを覚えている。サンタがお父さんなのを僕は知っていて、それを知らない振りをするべきなんだろうなと何となく子供心ながらに感じていた。
【あわせて読みたい】
- 「成功には苦しさが伴う事がある」と「成功する為には苦しまなければならない」は違う(為末大・スポーツコメンテーター/(株)R.project取締役)
- <Twitterの炎上>ジョークをジョークで楽しめない日本にもはや言論の自由はない(熊坂仁美・ソーシャルメディアプロデューサー)
- <情報番組で起こっている極端なキャスター不足>情報番組のキャスティングは番組の消長を決める命綱(高橋秀樹・放送作家/株式会社クリア・代表取締役)
- <キングコング西野亮廣が東洋大で講師>新しいメディアと表現活動のありかたを講義(藤本貴之・東洋大学 准教授/Japan In-Depth副編集長)
- <女性差別の国・日本というイメージは誤解>欧米と比較しても日本は女性差別の国ではない(ulala・ライター/ブロガー)