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.社会  投稿日:2014/5/16

[為末大]サンタがお父さんであることは、知らない振りをすべきなんだろうと子供心ながらに感じていた


為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)

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食品偽装問題を眺めていると、最初は誤表示だという言い分であったけれど、段々と意図的だったという事が判明してきて、偽装であった言われ始めた。意図的であったかどうかの境目と、更に本当はそうではない事をみんな薄々気づいていたかが僕には興味深い。

昔、相撲で八百長問題で揺れていた時、詳しい方が「あんなの本気で毎回やったら、すぐ力士が壊れてしまって人気がなくなるよ」と言っていた。案外と相撲ファンの中では多少の星の貸し借りは怒りを買っていないという趣旨の事も話していた。

ガチンコは突き詰めれば、その場でお互いが利益を食い合うというゼロサムのイメージが浮かぶ。そういう点で 考えれば日本の会議はほとんど現場ではガチンコが無い印象がある。そもそも予定調和と根回しの文化の国では 、その場でのガチンコがあまりない。

そもそも日本の法律や憲法は決まっているものが現実に合わなくなってくると、解釈を変えるという手法でやりくりしてきたように思う。建前は美しく、現実とのずれは解釈でなんとかごまかす。少しずつそれが加速し、一線を越えた時許されなくなる。

「おままごと」はガチンコではなく、そういう事にして進める遊びだと思う。偽装問題や、誤表示というものを突き詰めると、僕はこの社会自体が「そう言う事にしておきましょう」という前提でできているような気がしてなんとも不思議な感じがする。

子供の頃、お母さんは「お母さんの役」をしているんだと思ったとき、世界が変わって見えたのを覚えている。サンタがお父さんなのを僕は知っていて、それを知らない振りをするべきなんだろうなと何となく子供心ながらに感じていた。

 

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