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IT/メディア  投稿日:2014/7/11

[安倍宏行]<ASKA裁判傍聴インタビューはヤラセではない?>テレビはネットの「根拠なき誹謗中傷」に毅然とした態度を


安倍宏行(ジャーナリスト)

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テレビのやらせ問題がネット上で話題となっている。「TBSのASKA裁判傍聴街頭インタビューでヤラセ・サクラ疑惑」などといったタイトルで、SNSで拡散されている。

いわく、過去の芸能人の覚せい剤事件の裁判傍聴インタビューでも同じ女性が登場しており、この女性はテレビ局によって仕込まれていたのではないか、というのだ。この女性はネット上で名前も特定されており、数年前から実は有名人である。

結論から言うと、テレビ局のニュース番組が街頭インタビューに答えてくれる人を仕込む可能性は限りなく低い。まず、そんな予算は通常下りない。また、ニュースの信頼性が落ちるので、そんなリスクのあることをする理由がそもそもない。

では、なぜこの女性がインタビューされたのか。既にネット上で紹介されているようにこの女性は裁判傍聴に頻繁に訪れている人のようだ。たまたま取材に行っているテレビ局のクルーにしてみれば、インタビューを積極的に受けてくれたので撮った、というのが実情ではないか。

街頭インタビューは断られることが多く、まとまった数の人の声を拾うのには結構時間がかかる。積極的に受けてくれ、かつまともなコメントを言ってくれる人は、現場のクルーにとってありがたい存在なのだ。

おそらく、件の女性は番組側が気に入りそうなコメントを事前に用意しておき、コメントをしても構わないという雰囲気を醸し出すことで、インタビューを受けることを計画的にもくろんでいたのではなかろうか。それに番組スタッフがまんまと乗せられた、といったところだろう。

そんなばかな、と思う人がいるかもしれないが、街録(街頭でインタビューを録画すること)は、記者が同行せずカメラクルーだけで行うことが多い。毎回同じクルーが行くわけでもない。まして、その女性がこれまで他の番組に出ていたかどうかなど分からないので、普通にその女性のインタビューを撮ってもおかしくはない。

そうした事情はともかく、私が気になるのは、テレビ局側の反応の鈍さである。これだけネット上で拡散されているのに、テレビ局から何の情報発信もない。筆者がTBSの報道局の人間2人に確認したところ、2人ともこの件は全く知らなかった。さらに聞いてもらったら、知っていた人もいることにはいたが、知らない人も結構いたとのことだった。

実際にヤラセがなければ特に発表することはない、というスタンスを取っているようだ。フジテレビが韓流押しでバッシングを受けた時も、局内の反応は鈍かった。このように、テレビ局の人間は意外とネット上の話題については疎いし、自分の会社に対するネガティブ・キャンペーンについて無視することが多い。

しかし、テレビ局はこうした問題を軽々に考えないほうがいい。信頼性を疑問視する論調を放置しておくと、じわじわと影響が出てくる。事実無根なら、ネット上の情報を毅然とした態度で否定すべきだ。さもないと、後ろめたいからだんまりを決め込んでいるのだろう、と邪推されてしまう。

所詮ネット上の根拠のない噂話だ、と高を括って甘く見ていると、しっぺ返しにあう。テレビ局はネット上の根拠のない誹謗中傷に対しては毅然とした態度で臨むべきだ。普通の企業なら危機管理上、当然やるべきことだろう。ニュースの信頼性を揺るがすようないわれない批判に対しては、きちんと反論してもらいたい。

 

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