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.国際  投稿日:2014/9/21

[朴斗鎮]【拉致問題、日朝の同床異夢】~これまで通りの「もぎ取り作戦」が露呈~  


朴斗鎮(コリア国際研究所所長)|執筆記事

北朝鮮は9月18日、日本人拉致被害者の調査について「調査は全体で1年程度を目標としており現在はまだ初期段階にある」と伝達してきたという。7月の日朝政府間協議で、初回報告の時期は「夏の終わりから秋の初め」との認識で一致していたはずだが、第1回報告がいつになるかも明示されなかった。たびたび指摘してきたが、2005年9月の「6カ国協議合意」後の米朝のやり取りが思い出される。

安倍晋三首相は18日夜、北朝鮮の拉致被害者らに対する再調査の報告時期について「北朝鮮は日本に何も言ってきていない状況だ」と述べ、「北朝鮮側がしっかりと誠実にこの問題と向き合い、すべてを正直に伝えてくるように、対話と圧力の姿勢で見極めていきたい」と強調した。

「特別調査員会」の「立ち上げ」だけで、日本側から3つの制裁解除を勝ち取った北朝鮮は、日朝合意の履行で「誠意」を示すのではなく、やはりというか、これまでどおり「人質」を利用した「もぎ取り作戦」に出てきたようだ。

日本が最重要視する拉致被害者問題の解決を優先させるのではなく、いわゆる包括的日本人問題の解決という口実で拉致被害者問題を後回しにし、調査結果を小出しにして対価を得ようとしている。拉致問題とその他の日本人問題をごちゃまぜにしたストックホルム合意の弱点をさらけ出した形だ。

北朝鮮の宋日昊(ソン・イルホ)・朝日国交正常化交渉担当大使は今月、訪朝した金丸信元自民党副総裁の長男、康信氏らと会談し、「拉致被害者の安否情報ばかり求めている」と日本側の姿勢を批判したという(中日新聞電子版 2014年9月13日 19時11分 )。

それだけではない「本来は制裁事態があってはならない。日本が朝鮮を植民地にしたのだから私たちが制裁をするのであって、日本が朝鮮に制裁をするのは話にならない」(テレビ朝日系列 ワイドスクランブル9月16日 録画内での宋日昊発言)

とわけのわからない発言で日本側に対して制裁解除を求めた。

そればかりか、北朝鮮は9月13日発表した国内の「人権状況の報告書」の中で、拉致問題について、「日本の一部勢力は拉致問題を悪用して、人権侵害国家だと責めたてている」と言及した(NHKオンラインニュース 9月13日 18時58分)

今回の推移は、「本気度」を示したとして騒がれた「特別調査委員会」が、はからずも拉致問題の早期解決のためのものではなく、日本からより多くの見返りを得るための「調査委員会」であったことを暴露した。

5月のストックホルム合意時、日本の一部「学者・評論家」はテレビや新聞などで「北朝鮮は態度を改めた。日本の外交的勝利だ」「6カ月で解決する」と囃したて、特別調査委員会設置時には、「北朝鮮は本気だ」、「特別調査委員会は満額回答だ」などと根拠のない楽観論を並べ立てて日本国民を惑わした。しかし事態はその反対の方向に進もうとしている。

 

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