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.国際  投稿日:2014/11/9

[古森義久]【中国、対日威嚇外交の挫折】〜日本側の強硬姿勢で日中首脳会談実現へ〜


古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授) 「古森義久の内外透視」

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中国の対日威嚇外交は当面、挫折したようだ。日本側にとっては、安易な譲歩をしなかったことがやはり正しかったという教訓が大きいだろう。対中外交の秘訣はこのへんにあるのかもしれない。

中国側が対日関係では弱点もあり、首脳会談には譲歩をしてでも応じてくるという見通しはこのコラムの10月6日分「日中首脳会談のトリコになるな」でも報じたとおりである。

中国政府は習近平国家主席が安倍晋三首相と会談することに同意した。11月6、7両日の北京での谷内正太郎国家安全保障局長と楊潔篪国務委員との協議の結果だった。この協議で日中両国は「歴史を直視し未来に向う精神に従う」ことや「尖閣諸島などでの緊張状態に異なる見解を有する」ことで見解を一致させた。

中国政府は日本との首脳会談開催の前提条件として(1)日本側が尖閣諸島に領有権紛争があることを認める(2)安倍首相が靖国参拝をしないことを明確にする―ことを求めていた。今回の谷内氏が訪中しての合意はそうした具体的な点には触れていない。だが中国側は首脳会談開催に応じた。中国側のこれまでの強硬なスタンスからの後退だといえよう。

そもそも他国との首脳会談の開催に先立ち相手側に要求を突きつけ、相手が容れなければ、会談に応じないという中国の態度は恫喝外交だった。国際的にも珍しい威嚇外交である。

日本側にすれば、自国の固有の領土である尖閣への中国の領有権主張を公式に認めることなどできるはずがない。首相の靖国参拝も日本内部の問題である。政治指導者が自国の戦死者を追悼することは外国政府の指示に左右されることではない。日本内部でその賛否を論じても、外国から命令されて、追悼方式を選ぶ自由を奪われることは論外である。

安倍政権は首脳会談の前提条件には応じないという姿勢を貫いたといえる。だからこそ中国側がその前提要求を当面、引っ込めるという折れた形で会談開催になったのだ。この間、日本国内ではもう2年半、開かれていない日中首脳会談には無理をしてでも応じるべきだという声も聞かれた。中国側も福田康男元首相らを北京に招き、日本側の背後からの撹乱をも図った。だが功を奏さなかったわけである。

中国側は谷内・楊協議の合意文書を拡大解釈して、日本側こそ譲歩したのだという主張を打ち出してくるだろう。だがその解釈には無理がある。日本側が一見、柔軟にみえて核心部分では強固な姿勢を貫いたことが今回の展開の主因だろう。対中新外交の始まりを期待したい。

 

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