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.社会  投稿日:2014/12/12

[Ulala]【日本の高い教育費が少子化の原因】~仏・大学の学費、数万円!~


Ulala(ライター・ブロガー)「フランスUlalaの視点」

執筆記事Twitter | Website

 

フランス人に日本のことを聞かれて説明するとき、「日本では、子供は持てても2人かな・・」と言う話をすると「一人っ子政策だから?」と言われる。いやいやいや、それは中国の話で、日本は経済的に無理なのだと金額付で説明すると、その費用の高さを聞いてびっくりされるのだ。

というのも、ヨーロッパでは子供の教育に、日本ほどお金がかからない。基本的に、大学も含め教育を受けることを「人間の権利」ととらえており、教育によって利益を得るのは教育を受けた個人ではなく「社会全体」だと考えられている。

そのため

「教育の機会を均等にするため学費はできるだけ無償」

「社会が税金で教育費を負担するのは当たり前」

と言う考えが浸透しているのだ。

内閣府の調べによると、日本で理想の子供数を持てない理由としては「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が60.4%と最も多い。このことは、少子化の問題の一つが、子供にかかる教育費であることは明白だ。

フランスでは、幼稚園から大学まで低額な費用で行ける。もちろんその代り税金は日本より高いのも事実ではあるが、教育費が少なくてすむことは子供を産むハードルを大きく下げているのは間違いない。

教育費の負担が多いため、希望の子供数をあきらめざるおえない日本。特に中でも一番多い支出は「大学や短大を含む高等教育」だそうだ。その次に多いのが「塾などの学校以外の教育費」。

一昔前「国民総中流」だった日本では、こういった高額な教育費も払える家庭が多かった。しかし、最近の非正規も増え格差社会になりつつある状況では、子供一人あたりに必要な費用がマンション1軒分、その負担が子供の人数に比例する教育費はかなり家計に圧迫を与えている。給料と見比べて負担可能な教育費を考えれば、育てられる子供の人数を制限せざるをえないのは当然のことだろう。

最近は、高校の授業料を無料にする制度もできたため、高校まではヨーロッパのようにほぼ無償になりつつあるが、大学などの高等教育についてはまだまだ授業料に悩まされている。

国立でも授業料年間 535,800円。初年度はそれプラス入学金282、000円だ。(注1)国立の授業料は、フランスで高額なため裕福な家庭が行くと言われているグランドゼコール(注2)や、私立大学、ビジネススクールの費用と同等であることに驚かされる。

では、フランスの国立はどうなのかと言うと、国立の学校には学費(学生一人当たり年間10,000~14,000ユーロ=147~206万円:2014年12月11日時レート)の大部分を国家が負担しており、個人の負担は年間数百ユーロ(数万円)の登録料のみなのだ。ちなみにその恩恵を受けている学生の割合は、高等教育を受けている学生の約60%にあたる。

このことによって、フランスは経済的不安がある家庭にも、実力や努力を惜しまない学生に対してチャンスを与えることができているとも言える。日本では、奨学金という制度で高等教育に進む道もあるが、これらは結局、返済しなくてはいけない借金であり、世帯収入による不公平感が拭えない。

教育体系や財政がまったく違う日本が、フランスを始めとするヨーロッパの国と同じことをする必要はないが、それでも、少子化問題に真剣に取り組むなら子供を産めない理由を取り除くことが必要となってくる。

特に高等教育の費用などは、負担にならないよう子供の人数も考慮にいれて補助金を増やしたり、授業料免除になる支援の対象を広げるなど、なんらかの手を打つ必要があるのは確かだ。

ちなみに、教育支出の公財政負担の割合は、高等教育段階に置いてOECD平均が69,2%のところ、日本は34.5%。いかに世界に比べて日本は家計からの教育費負担が多いかがうかがえる。

教育費の経済負担が軽くなる方向に進むことができるか?道は厳しいだろうが、そういった社会にならなければ、希望の人数の子供を産み育てるのは容易ではないのだ。

 

(注1) 文部科学省令による標準額。ただし国立大間で差もある。

(注2)グランドゼコール Grandes Écoles :フランス独自の高等専門教育機関

 

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