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.社会  投稿日:2014/12/19

[木村映里]【性風俗を一括りに語る危険性】~「どのような状態」で働いているかを知ることの大切さ~


木村映里(一般社団法人GrowAsPeole広報)

執筆記事プロフィール

 

一般的に、性風俗産業に関するイメージは2分化されています。ひとつは「風俗嬢はだらしなくて目先の金が欲しい女がやる仕事だ」「風俗なんて汚らしい」というネガティブなイメージを持つ“自己責任派”。もうひとつは、「性風俗は人身売買だ」「日本の風俗は世界から批判を浴びている」と、風俗嬢を被害者と捉える、“悲劇のヒロイン派”。いずれも、「性風俗はあってはならない」という価値観が前提となるイメージや主張です。

一方、性風俗産業で働いた女性が一旦昼の仕事をした後に、給料の違いや労働時間の違いから再度、性風俗産業で働くケースも少なくなく、また性風俗産業で働く女性が安全に働けることを目的としている当事者団体は「偏見をなくしたい」と活動していることからも、「性風俗なんてあってはならない」という考え方だけでは、性風俗に従事する当事者全てを見渡すことは不可能なようです。

国内には推計上約30万人の風俗嬢がおり、性風俗での収入を経済的な軸とできる期間は20~35歳であるため、性風俗産業に従事する経験を持つ成人女性は日本人の20人に1人と計算できます(注1)。未成年や外国人女性を含めると、さらに多くの女性が性風俗の仕事をしていることになります。

性風俗産業で働く女性の中には様々な支援を必要とする女性も少なくありませんが、これだけの規模があるため、単なるイメージで性風俗産業を捉え、対象を曖昧にしてしまうことは、結果的にNPOなどの介入余地を少なくし、個々人に合った適切な支援を届ける上での障害になります。

性風俗産業に従事する女性のセカンドキャリアの支援を行っている一般社団法人GrowAsPeopleでは、性風俗産業で働く女性の立場を以下の3つの型に分類しています。

 

1.管理型

働く時間を自分で選択できる、きちんと給料がもらえる、辞めたい時に辞められる等、性風俗産業に従事することを自己管理できる立場。

 

2.搾取型

監禁状態で働かされていることや、「辞めたら周りにバラす」と言って辞めさせてもらえない等、性風俗産業に従事して得られた対価を搾取されている立場。

 

3.個人型

出会い系サイトや出会いカフェなどを利用して、値段交渉から行う行為まで、自分ひとりで決めている状態。風俗店の面接に受かることのできなかった女性や、店に在籍することでの給料の減少や出勤管理の手間を避けた結果によるところが大きい。

 

日本の性風俗産業には、成人の日本人女性、韓国・中国をはじめとする外国人女性・“JKビジネス”と呼ばれる業種で働く未成年といった様々な女性が関わっていますが、全て上記の3つの型の中のいずれかの働き方の中にいます。

そして性風俗について本やインターネットの中で語る人々はこの分類をおろそかにし、自分達の関わる型を「これが性風俗の全てだ」と言いがち。「性風俗」で一括りとし、対象がぼやけたまま語ったり、介入したりしてしまうと、結果的に介入した側の価値観を押し付ける展開になることもあります。

「性風俗は人身売買だ」と性風俗を搾取型に限定し、風俗嬢をあくまで被害者の中に閉じ込めることは管理型の働き方をしている女性の肩身を狭くし、「風俗嬢はみんなプライドを持って楽しく働いているんだ」と、性風俗産業を過剰に美化する主張は搾取型の女性の首を絞めます。

「風俗」で働いていることばかりが問題になりがちな業界ですが、性風俗産業が無視のできない大きな規模になっている今、性風俗全体を固定化されたイメージで捉えるのではなく「どのような状態」で働いているかを知ることが重要。

性風俗産業を是非論に留めない正しい理解が当事者以外にも広まっていくことは、自らの意思で働く女性がより良い環境で働くためにも、労働を不当に搾取され苦しんでいる女性が救われるためにも大切なことだと考えています。

(注1) 飯田泰之・荻上チキ(2013),夜の経済学,扶桑社.

 

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