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.経済,ビジネス  投稿日:2015/6/11

[遠藤功治]【今年3月期、6年ぶりの減益】~大手自動車会社の決算と今後の課題 スズキ 1~


遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)

「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」

執筆記事プロフィール

今回は第3社目として、スズキを取り上げます。

2015年3月期の営業利益は、前年度比4.4%減少の1,794億円となり、スズキとしては6年振りの減益決算となりました。リーマンショック以来ということになります。要因は大きく3つ。第1には国内軽自動車市場でのダイハツとの消耗戦、第2にはスズキ創業始まって以来となる199万台のリコール、第3には二輪車事業の赤字転落です。

第1の軽自動車市場での激烈な戦いについて、昨年11月にここでも取り上げました。所謂新古車を使った販売台数上積み競争で、スズキが新型車ハスラ―の好調な販売を利用して、8年振りにダイハツから軽自動車首位の座を奪還しようとした訳です。これに対しダイハツも首位死守ということで反撃、特に昨年の12月は異常で、スズキもダイハツも40-50%増というけたたましい販売を強行、このうちの半数近くが新古車であったとも言われています。

結局2014年暦年では、スズキが8年振りの首位となった訳ですが、2015年3月期の年度では、ダイハツが首位を守りました。ただ、この販促費用たるやすさまじく、スズキの日本事業は、第4四半期に赤字に転落した模様です。

鈴木会長兼社長は、シェアと利益の二兎を追う、との見解を何度か口にしました。軽自動車市場の競争激化、かつ税制変更などでこれ以上、市場は拡大しにくい、その中で7年間も2位に甘んじていた、利益は勿論重要だが、国内営業にある意味喝を入れた、ということのようです。

今年に入って軽自動車市場は大幅な落ち込みを見せています。スズキの1-3月販売台数は、前年同期に消費税引き上げ前の駆け込み需要があったこともあり約15%減少、新年度に入り軽自動車税が引き上げられたことも加わり、4月が16%減、5月が12%減です。勿論、昨年の新古車騒動で在庫がいまだに溢れ、これが輪をかけて今年の販売台数を押し下げています。時に“ガラ軽”とも言われる日本市場固有の軽自動車ですが、EUなどから時に非関税障壁などと指摘され、また国内ではその低い税率の更なる引き上げなどを求める声が折につけ聞こえてきます。

地方に行きますと、軽自動車が住民の足であり、東北・北陸・中国・九州などの多くの県では、自動車販売の半分以上が軽自動車となっています。すると今後人口減少や高齢化地域での販売が主体となり、軽自動車市場の先行きには懸念大です。スズキなどは、東南アジアなどに、660ccエンジンそのままでの輸出も視野に入れているようですが、次の消費増税と合わせ、当面気の抜けない市場となります。

【連結営利の6割がインド市場】~大手自動車会社の決算と今後の課題 スズキ 2~ に続く。このシリーズ全3回。文中に貼られたリンクは http://japan-indepth.jp で記事をお読みください)

タグ遠藤功治

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