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.国際  投稿日:2014/1/3

[藤田正美]2014年、どうなる日本〜追い風任せの日本。自分で航行できるエンジンを持てるか?アメリカ、ユーロ圏、中国各国の風向き


 

Japan In-Depth副編集長(国際・外交担当)

藤田正美(ジャーナリスト)

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東証大納会は最高値1万6291円で引けた。

1年間で5000円以上の上昇である。総理大臣として初めて大納会に出席した安倍総理が、「来年もアベノミクスは買いだ」と言ったのも無理はない。もっともこれはいわば「円安バブル」相場。その上、金融超緩和でカネをジャブジャブ、市場に流し込んだ結果の高値である。もしも為替の基調が反転したり、もしも国債が売り込まれて長期金利が急上昇したりすれば、たちまちカネの流れが変わり、株価も急落するだろう。

追い風任せの日本という船が自分で航行できるエンジンを持てるかどうか。それが安倍総理の第3の矢ということだろうが、やはり「風向き」も依然として重要だ。エンジンがたとえ手に入っても、すぐにフル回転できるわけではないからである。

アメリカから吹いてくる風はよさそうだ。成長率も徐々に回復しつつあるし、労働市場も改善している。物価の上昇率2%をめざしているが、そこにはまだ届かず、一抹の不安は残っている。昨年12月、中央銀行にあたる米FRB(連邦準備理事会)は、今年1月から証券などの買い取り額を100億ドル減らして毎月750億ドルとした。いわゆる「出口」に向かって一歩踏み出したということだ。

FRBはバーナンキ議長からイエレン議長に交代する。FRB初の女性議長である。中央銀行が金利ではなく量的緩和という非伝統的金融手段に頼ることに関して、ハト派(容認派)、タカ派(非容認派)に分けると、イエレン氏はハト派に属する(イエレン氏と議長の座を争うと見られていたラリー・サマーズ元ハーバード大学学長は、タカ派とされていた。その意味ではFRBが「正常化」への道を急ぐことはないという安心感がある。円の対ドル相場も、急激に円高に振れることはあるまい。

気になるのはユーロ圏と中国だ。ユーロ圏は今年、銀行同盟が実質的にスタートし、ECB(欧州中央銀行)が加盟各国の銀行を検査する。不良債権の額を精査し、自己資本が不足していないかどうかをチェックするわけだ。以前にも書いたが、このときに誰が資本注入をするのか、その金額はいくらか、どこかの大手銀行に吸収される銀行はあるのか、場合によって潰れる銀行も出るのか、といったことが問題になる。

ユーロ圏とはいえ、それぞれの国の銀行が潰れたり、吸収されたりして、消えることになれば、これは政治的に大問題だ。そのショックを政治が受け止めることができればいいが、国内的に反発が出て、政治が不安定になれば、一時の「ソブリンショック」のようになる可能性がある。

中国は「理財商品」の行方が問題だ。その残高は当局の発表でも160兆円とか言われているのだから、実際にはもっと多いのかもしれない。何せ、通常の銀行ルートではない資金なので、その実態がよく分からないのである。高金利を目当てにこの理財商品を購入したのは、企業や個人。その集めた資金を使ったのは主に地方政府。ところが日本のいわゆる「三セク」などのように、地方政府によるインフラ整備や運営はだいたいがうまくいかない。日本でも工業団地が大量に売れ残って、そのツケは結局、税金で賄われた。鉄道などもほとんどが赤字だ。

そうなると、高い利息を約束したこの理財商品の償還はどうなるのか。そこが大問題だ。そして銀行の裏ルートになっているこの商品が焦げ付いたとき、銀行もまったく関係がないわけではない。そうするとお決まりの短期資金市場の縮小、金融危機という流れになる可能性もある。短期資金市場の金詰まりはすでに顕在化していて、中央銀行である中国人民銀行がなんとか手を打っている状況だ。あまりに資金を緩めればバブルの火に油を注ぐようなことになるし、締めすぎれば取り付け騒ぎまで発展する可能性もある。

このEUと中国の嵐で早いうちに海が荒れれば、日本丸も翻弄されるだろう。まだ風任せで航行せざるをえないからである。今年1年何とかもってくれれば、エンジンの調整も終わり、自力航行が可能になるかもしれない。その可能性が大きいというほど楽観的にはなれない。それでも、何とかデフレでアップアップしているような状況から、自力で荒波を乗り切れるような体質になってほしいと考えている。

 

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