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.国際,.政治  投稿日:2015/12/31

「慰安婦像」を「少女像」と呼び始めた一部メディア~問題の本質を薄めようという作為~


古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

執筆記事プロフィールBlog

慰安婦問題に関する日韓両国政府の合意をめぐっては日本側のメディアの報道になんとも奇妙な現象がある。ソウルの日本大使館前に設置された慰安婦像をNHK、朝日新聞から読売新聞までが唐突に「少女像」と呼び始めたことである。この慰安婦像の扱いは今後、今回の合意の韓国側の順守を判定するカギとなるから、この呼称のあり方は重要である。

日本のメディアはNHKも朝日新聞も長年、このソウルの日本大使館前の像は「慰安婦像」と呼んできた。事実としてもそのとおりなのだろう。日本を糾弾する側では「慰安婦は14歳から20歳までの女性」と断じているから、この像もいかにも若く幼い少女にみえても、その描くところは慰安婦そのものだろう。

だがNHKも朝日新聞もいまではこの像を「慰安婦を象徴する少女像」と表現する。慰安婦を象徴するというならば、その産物は慰安婦そのものだという意味だろう。だがあえて「慰安婦」とは呼ばず、「少女」と表記するというのだ、一体なぜなのだろう。

この新しい呼称はアメリカ国内の各地に建てられた慰安婦像にも適用されそうな気配がある。アメリカでの慰安婦像問題は私も当初から注意を向け、その動きを取材し、報道してきたが、その像は最初から最後まで「慰安婦像」である。建てる側も、建てられて、不快感や侮辱感を味あわされる側も、一様にその像を「慰安婦像」と呼んできたのだ。

慰安婦像を少女像という表記に変えることは、慰安婦問題の本質を薄めようという作為を感じさせる。少女像ならそれ自体はなんの問題もないだろうというニュアンスが広がる。韓国側の言動を有利にする意味あいがこもる。単に少女の像を建てることは、ギラギラとした政治意図を感じさせないからだ。

ところがいかにも若く幼くみえる少女のイメージを利用して慰安婦像を建てることは、まさにこの問題の中心の虚構や誇大をアピールするプロパガンダ性をずばり実感させる。まさにギラギラした政治意図そのものなのである。

なぜ「慰安婦像」ではなく「少女像」なのか。「慰安婦を象徴する少女像」とは正確にはなにを意味するのか。この点をNHKも朝日新聞も明確に説明してほしい。

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