宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(2016年8月15日-21日)」
今週の国際政治は「凪」のようだ。日本もお盆で開店休業である。新防衛大臣はジブチ出張とかで、靖国神社参拝の問題も消えた。欧州で最も働くべき人々は現在恐らく休暇中であり、働いているのはバルカンを訪問するバイデン米副大統領と、次回EU首脳会議の準備で欧州委員会首脳と協議するメルケル首相ぐらいである。
ちなみに、次回のEU首脳会議はスロバキヤのBlatislavaで開かれる。同国は2016年のEU議長国だ。英国の脱退、中東などからの難民、欧州で続発するテロ問題など、EUが直面する課題は尽きないが、大国ドイツのメルケルが動かなければ、欧州は少しも動かない。これが2016年のEUの実態なのだろう。
今週日本の最大ニュースはリオ・オリンピックとSMAP解散だ。水曜日朝のテレビ朝日「グッドモーニング」に毎週出るようになって痛感することは、世の中の最大関心は「外交安保」ではなく、良い意味で、「スポーツとエンタメ」が殆どということだ。五輪とSMAPの今週は象徴ということか。世界で大きなテロ事件が起きないことを祈りたい。
〇欧州・ロシア
15-17日に米副大統領がセルビアとコソボを訪問する。バイデンも、ヒラリーがEメール問題などで失速すれば、大統領候補の目があったかもしれない。個人的に、バイデンは大統領の「器」でないと思っているが、副大統領としての最後の一連の仕事は粛々とやってもらいたいものだ。
〇東アジア・大洋州
17日から21日までミャンマーのアウンサン・スーチーが訪中する。彼女の中国観は如何なるものなのか、非常に関心がある。最近外交面で失点が続く中国は彼女を大歓迎するだろう。最近のミャンマーと中国の関係は微妙だ。スーチーの中国での発言に注目したい。
〇中東・アフリカ
今週の中東は夏休み。例外はイラン外相が例のP5+1との核合意についてイラン議会で説明を行うことぐらいだ。イラン核合意の結果、イラン国内では経済制裁の解除に向けた期待値が異常に高まったが、多くのイラン国民にとっては「期待外れ」だったのではないか。ザリーフ外相にどの程度批判が集まるかに関心がある。
〇アメリカ両大陸
トランプ候補は相変わらず暴言失言を繰り返しており、そろそろ「化けの皮」が剥がれつつあるようだ。それでも、この程度は今や「想定内」であり、今週も米大統領選挙をめぐる情勢に大きな変化があるとは思えない。
〇インド亜大陸
特記事項なし。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。