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.社会  投稿日:2014/2/17

[木村映里]母性は本能という妄想:年間6万件の児童虐待の加害者1位は“実母”〜「電車の中でぐずる赤ちゃんと慌ててあやす母親」を見て、あなたはどう思いますか?


木村映里(一般社団法人GrowAsPeole広報)

執筆記事プロフィール

 

先日、電車の中でぐずる赤ちゃんと慌ててあやす母親、という風景を目にしました。そしてそれに対して「うっせーな」と、母子に聞こえる声で呟くサラリーマンがいるという、まあよくある風景(住んでいるところの治安があまりよろしくないので)を見ました。

子どもは泣きます。お腹が空けば泣くし眠ければ泣くし、特に理由が無くても泣きます。もちろん泣き声がうるさいのは分かりますよ。いつでも「よく泣いてるなあ…かわいい声だなあ…。」なんて思えるわけがありません。以前、堀江某氏が「電車で泣く子どもに睡眠薬を」とTwitterで発言した気持ちも理解できます。

え? お前が何を言いたいのかよく分からないって?

もしあなたが、子どもがうるさい、子どもは迷惑だと親に向かって表明したら、あなたは間違いなく児童虐待の片棒を担ぐことになります。子連れに「迷惑だ」と言いたいなら、子どもを死なせる覚悟で言ってください、ということです。

厚労省の統計によれば児童虐待の加害者で1番多いのは実母であり、児童虐待の相談件数は年々増加し、現在は年間6万件の児童虐待が起きています。

「母性は本能だ!虐待は母性(もしくは養育意欲)が足りない親がやるものだ!」と主張する人がよくいますが、妊娠から分娩、産後まで母子に寄り添う医療の世界では「母性は母子相互作用によって形成される」と言われています。母性が自然発生的に生まれる本能なんて誰も言っていません。

この数十年の核家族化に伴い、子どもを持つ母親の状況は昔とは大きく変わりました。3世代世帯では子どもの養育者は母親だけではなかったのに、核家族化が進んだ今は(特に乳児期には)母親が1人で24時間子どもと向き合わなくてはいけません。

「地域」という単位が崩壊したために、子どもを暖かく見守ってくれるご近所さんはいません。昔は子どもを4人、5人産むのが当たり前だったので1人1人の子供にかかる親のプレッシャーは大きくなかった上、上の子が下の子の世話を手伝ってくれたけれど今は、親は1人の子どもに強い期待をかけ、「子育てに失敗は許されない」と強い使命感にかられる現状があります。

大学で看護を勉強していると、世間に思われている以上に母親が身体的にも精神的にも過酷な状況に置かれていることを知り、驚きます。

そんな時に子育て中の親に心無い言葉をぶつける人を見れば、ただでさえ張りつめた母親の精神が切れてしまうのではないかと心配になります。正直、子どもにマイナスな感情をぶつけてしまう親の気持ちも理解できるような気までするのです。

そりゃあ、泣いている子どもを放置している親を見て疑問を感じることもあるし、子どもなんだから泣いて当然でしょ?みたいな態度でふんぞり返っている母親に舌打ちしたくなることもあります。

でも、もしかしたらその母親は泣き続ける子どもと向き合うのが限界の状況なのかもしれないし、周りの視線が怖くて不安で、反発して周りに攻撃的になっているのかもしれない。親の内面が、こちらが勝手に思う「無責任さ」と一致しているかどうかなんて分かるはずがありません。そして、社会で1番被害を受けやすいのは間違いなく子どもなのです。

自分が不愉快だから、と他人を攻撃するのは簡単です。だからこそ、自分が他人に対して攻撃的な感情を抱いた時には、相手の内面を考えてみる想像力を持って欲しい。それができないくらい余裕が無い時なら、なぜ自分に余裕が無いのかを考えて欲しい。そうやって少しでも優しい社会になればと、近い将来子どもを(多分)産む世代として、願います。

※本文中では便宜上「母親」という用語を使っていますが、父親、義父母、里親等を含む全ての養育者のことを指しますのでご了承ください。

 

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