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.社会  投稿日:2021/1/27

定年と限界と「老害」 「引き際」について その3


林信吾(作家・ジャーナリスト)

「林信吾の西方見聞録」

【まとめ】

・ジャニーズ事務所が定年制を導入

・スポーツ界では年齢に囚われず活躍する選手も

・「定年」や「限界」は本来自分で決めてよいはずだ

ジャニーズ事務所が、定年制を導入するという。

40歳以上のポップスターなど要らないから……という話ではなくて、下部組織と言うのか養成機関と言うのか、ジャニーズJrについて、「22歳までにデビューできなかった場合、翌年は契約を更新しない」という制度なのとか。

SMAPは解散、嵐は活動休止という状況下、今やあの会社も生き残りのためにリストラを……という話でもなくて、やはりどこかで将来性の有無を見極めないと、だらだらとしがみついてしまう人もいる(かつて40 代のジュニアもいたらしい)というのが理由で、22歳というのは大学新卒で社会人になる人も多い年齢であり、第二の人生を考えるのに遅すぎはしない、という「親心」なのだとか。

このところ所属タレントの不祥事が続いたので、タガをはめる効果を狙ったもの、と見る向きもあるようだが、芸能界には賛意を示す声が多いと聞く。

もともと芸能界には、若さこそが武器だと考える傾向があり、年齢を詐称するケースも後を絶たなかった。今ではあまり聞かなくなったが、これは本名や年齢など、すぐにネットで露見するから、ということであろうか。いずれにしても、22歳で定年などと言われると、さすがに若すぎないか、と思えてしまう。自分がトシだから、ということなのだろうが。

スポーツの世界に目を転じると、サッカー元日本代表の三浦知良選手など。今年54歳になるというのに、現役のJリーガーとして選手生活を続けている。15歳でブラジルに渡り、1993年にJリーグの旗が上がった時には、押しも押されもしないスター選手であった。それが世紀を超えて今も現役とは、すごいとか立派などという表現では収まりきらない。ただただ畏敬の念しかない。

当時、幼稚園に通っていて、キング・カズと呼ばれた三浦選手に憧れてサッカーを始めたという内田篤人が、一足先に現役引退を発表したことを想えば、一段と感慨深くなる。

さらにサッカーの話を続ければ、カズの盟友だった中山雅史が、古巣であるジュビロ磐田のコーチに就任した。彼はJ3のアスルクラロ沼津に在籍していたのだが、コーチ就任を発表した際、「現役のトレーニングをしばらく休む」と語った。2012年に一度は現役引退を表明したが(当時はコンサドーレ札幌に所属)、その時も「現役には未練たらたら」だと明言していた。今次も事実上の現役引退ではあるのだが、決して退くとは口にしないところが彼らしい。

写真) 中山雅史氏 
出典)Getty Images/Kaz Photography

ただ、彼が35~6歳の頃だったと記憶しているが、「試合中ふと気づけば、自分が頭の中のイメージより1メートル後ろを走っていて、愕然となったことがある」などと語っていたことにも強く印象づけられた。日本を代表するスピードスターにして、骨折したのにも気づかず90分間走り続けたことがあるタフガイも、やはり寄る年波には勝てないのか、などと思わされたのだ。

まあ、個人的には彼がジュビロの監督に就任して日本一を奪還し、

ーー 優勝の原動力はなんでしょうか?

「もちろん監督の力です」というインタビューを聞くのが夢なので、これで夢に一歩近づいたとも言えるのだが笑。

内田は内田で、国際経験豊富なディフェンダーで人望もあるし、戦術眼もたしかなものを持っている。2014年のワールドカップ・ブラジル大会に際して、「自分たちの(攻撃的な)サッカーで世界一になろう」などと言い張った本田圭佑らの「タカ派」に対し、もう少し現実的な考え方をしろ、と諫めたのは有名な話だ。結果はご案内の通りであったが、その経験も活かすという意味で、彼には将来、是非とも日本代表監督になってもらいたい。

サッカー以外のスポーツに目を向けると、1月21日には、大相撲で116年ぶりの記録が出た。

華吹(はなかぜ)という力士が序の口で4勝目を挙げ、勝ち越しを決めた(幕下以下は1場所7日制)のだが、彼は1970年生まれ。つまり、今年1月の時点で50歳。5月28日が誕生日なので、51歳になる。今の角界ではただ一人、昭和の土俵を知る力士なのだとか。

116年ぶりの記録と述べたが、彼以前に50代で勝ち越したのは1905年(明治38年。ちなみに日露戦争中!)の若木野ただ一人、ということであるらしい。初土俵は1986(昭和61)年。米国のレーガン大統領と日本の中曽根首相が「ロン・ヤス」と呼びあい、バブル景気が始まって、日本がまだまだ元気だった頃の話である。

所属は立浪部屋。親方である元小結の旭豊より2歳年下だが、親方は高卒、彼は中卒で入門しているので、親方の兄弟子と言うビミョーな立場なのだとか。大半の「ライバル」とは親子ほどの年齢差があるわけだが、みんな口を揃えて、稽古ぶりなど年齢を感じさせない、と語っている。序の口というのは、言うまでもなく相撲取りとしては一番下のランクで、月給も出ない(十両以上が関取と呼ばれ、結構なお金をもらえる)。序二段、三段目とあるわけだが、彼は三段目が最高位だとか。

50歳の序の口は「あり」で、40代のジャニーズJrはダメなのかなあ、などと考えさせられたことで、今回の記事のテーマが決まったようなわけだが、一民間企業の経営権に外野から口を出すつもりもない。

ひとつだけ言っておきたいのは。定年とか限界とか、本来、決めるのは自分だけでよいはずだ、ということである。とりわけ芸能人やアスリートという職業は、「自分はまだまだやれる」「他に生きる道などない」と言ってみたところで、需要がなければ居場所もなくなるのである。

政治家は、どうだろう。

昨今、財務大臣・麻生太郎(80)と自民党幹事長・二階俊博(81)の両氏が、令和日本の「二大老害」などと呼ばれている。自民党には「議員の73歳定年制」があるのだが、一般企業のそれと違って拘束力はなく、なし崩し的に70代の議員が増え続けているのが現状でもある。

ただ、本当にそこが論点なのだろうか。

新型コロナ禍対策、とりわけ給付金をめぐっての麻生・二階両氏の言動には、まったく賛成できないのだが、しかしそれは年齢的な問題ではなく。したがって「老害」だとの非難は当を得たものではないと、私は考える。

次回は、その話を。

(続く。その1その2

トップ写真)横浜FC 三浦知良選手 出典)Getty Images/Koji Watanabe




この記事を書いた人
林信吾作家・ジャーナリスト

1958年東京生まれ。神奈川大学中退。1983年より10年間、英国ロンドン在住。現地発行週刊日本語新聞の編集・発行に携わる。また『地球の歩き方・ロンドン編』の企画・執筆の中心となる。帰国後はフリーで活躍を続け、著書50冊以上。ヨーロッパ事情から政治・軍事・歴史・サッカーまで、引き出しの多さで知られる。少林寺拳法5段。

林信吾

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