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.政治  投稿日:2021/2/12

国立病院「コロナ対策病院」に【菅政権に問う】



西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・新型コロナ改正特別措置法、改正感染症法、改正検疫法が成立。

・国の施策として国立病院を「コロナ対策病院」としてはどうか。

・国立病院がコロナ患者を、民間病院がその他患者を受け入れることで国一丸と
なって対応すべき。

改正特別措置法、改正感染症法、改正検疫法が成立し、2月13日から施行されることになった(新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律案の概要)。

主なポイントとしては、
改正特措法
・緊急事態宣言の対象区域で、知事が事業者に休業や時短営業を命令できる
・緊急事態宣言の前段階として「まん延防止等重点措置」を新設
・時短や休業命令に従わない事業者に罰則
・休業などの要請や命令に応じた事業者に効果的に支援を講じる

改正感染症法
・入院を拒否した感染者に行政罰である過料
・保健所調査への拒否に過料

改正検疫法
・国が感染者に自宅待機などを要請できる

ということになっている。

緊急事態宣言が延長されても、新型コロナウイルス感染症の病床確保はなかなか難しい模様だ。

図)新型コロナウイルス感染症患者の療養状況 病床使用率
出典) @taisukef 福野泰介

圧倒的に深刻な欧米と比較すると、なぜ医療崩壊になるのか?という疑問の理由は筆者のレポートで明らかになったものの、違った方策もあると思うのだ。そうした中、東京都は先月、都立広尾病院、公社荏原病院、公社豊島病院を専門病院とし、重点的に患者を受け入れると発表したが、それでも600床。

そこで国立病院を「コロナ対策病院」にできないのかと提案したい。

国立病院をコロナ病院に!

提案は、1都3県の国立病院のうち各1病院を「コロナ病院」にするというものだ。今、そこにいらっしゃる患者さんたちには大変申し訳ないが、他の病院に移ってもらうことにする。その時の患者の受け入れは民間病院に手伝ってもらうことにする。そうすれば、病床数は確保できる。

写真)独立行政法人国立病院機構
出典)Waka77/Wikimedia Commons

国立病院は独立行政法人(独法)である国立病院機構の下で運営されている。独立法人とはいえ、「公共性」の高い病院なのだから、採算関係なく国家的危機に対応すべきではないだろうか。儲からないけど必要な医療を担う、公共的使命を国立病院が負わずして誰が負うのだろうか。

まず確認しておくと、国立病院は全国の各地域で141病院あり、常勤職員6万人くらいだそうだ。目的は「公衆衛生の向上及び増進に寄与すること」である。結核、重症心身障害、筋ジストロフィーなどの民間では必ずしも実施されない医療を提供している。独立採算で経営されている。独立行政法人国立病院機構の事業報告によると、平成29年度の経常収支率は99.7%と2年連続の経常赤字となっていた。しかし、平成30年度では100.8%となっており、経常黒字は84億円であった。厚労省の中期目標を達成している。独法化以降、本当に頑張った。

実現は可能か?

日本の病院の8割は民間病院である。民間には経営の論理があるため、コロナ患者の受入要請もなかなか受け入れられない。今回、コロナ患者受け入れの民間病院への要請を各自治体は進めているが、受け入れが困難との回答も多いそうだ。そもそも民間病院は200床未満が8割で、限界がある。
しかし、コロナ患者以外の受け入れなら民間病院にもメリットはあり協力もできる可能性が高まる。重症化した患者の転院が難航するかもしれないが、コロナ患者受け入れよりは民間病院も協力しやすいだろう。

民間病院の経営も厳しくなっている。コロナが収束しないと医療業界の問題は続く。政策的には、そもそもこれまで病床を抑制する方向に来ていたが、やはりバッファがない状態はよくなかったのであろう。

中国はスピーディーにできた! 

中国では、コロナ対策でスピーディーな対応ができた。14日間で、武漢市「雷神山医院」は建設された。延べ床面積3万3900m2、ベッド数1000床の巨大施設が瞬く間に出来上がった。大阪府知事の吉村知事はかなり早い段階で、大阪市立十三市民病院をコロナ専門病院にし、260床を確保した。

国立病院は国の政策のための病院。繰りかえすがミッションは「公衆衛生の向上及び増進に寄与すること」である。首都圏の国立病院のいくつかを「コロナ病院」にすることは当然選択肢としてあっていいはず。民間病院も協力しやすい形であり、国家的な危機においてオールジャパンで対応できる素晴らしい機会にもなる。菅政権に期待したい。

トップ写真)感染対策の上治療にあたる医療従事者
出典) Carl Court/Getty Images




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、ターンアラウンド研究所共同代表・人財育成コンサルタント、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員・ディレクターなど。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、組織改革、人材育成コンサルティング、政策分析、メディア企画、ソーシャル・イノベーション活動を進めている。


専門は、公共政策と社会心理。近年は、中国の先端技術、世界のスマートシティ、人工知能などテクノロジーと社会への影響、個人情報保護と民主主義の在り方、企業の利益相反、健康医療・福祉政策などをテーマに研究や執筆を進めている。

西村健

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