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.国際  投稿日:2021/2/16

トランプ弾劾裁判、造反僅か


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2021#7」

2021年2月15-21日

【まとめ】

・トランプ前大統領弾劾裁判、上院共和党の内「造反した」のは僅か7人だった

・米国内政治は「ポスト・トランプ」時代に入った。

・弾劾裁判の勝者は、恐らく中国とロシアとイランではないか。

 

 

先週、筆者にとって最大のニュースはチック・コリアが亡くなったことだ。「チック・コリア氏、がんで死去 ジャズ界の巨匠」 AFP=時事は「米国のジャズ作曲家で、エレクトリックキーボード奏者の草分けであるチック・コリア(Chick Corea)氏が今月9日にがんで死去していたことが、彼の公式ページで発表された。79歳だった。」と報じた。

「外交安保」と全然関係ないじゃないか、というお叱りは御尤もだ。が、筆者にとってチック・コリアは単なる「エレクトリックキーボード奏者の草分け」などではなく、過去50年間近い音楽生活の中で聞いたミュージシャンの中でも、最も洗練され、多才で、かつ独特の音楽空間を創造できる異才だった。心からご冥福を祈りたい。

写真)Officine GrandiRiparazioniでライブ演奏するチックコリア氏(イタリアトリノ 2018年11月9日)
出典)Getty Images Europe / Giorgio Perottino


その次に、と言っては失礼だが、気になったのがトランプ前大統領の弾劾裁判の行方だった。「無罪」は想定内だが、正確に言えば、「有罪にならなかった」ということ。評決は有罪57票、無罪43票だったが、実質的には7票対43票、すなわち、上院共和党のうち「造反した」のは僅か7人だったということである。

詳細は今週の産経新聞のコラムに書いたのでご一読願いたい。裁判終了で米国内政治は「ポスト・トランプ」時代に入ったが、それでも「トランプ現象」は残る。要するに、このトランプ氏にとっては二度目となる弾劾裁判の勝者は、トランプでも、共和党でも、民主党でもなく、恐らく中国とロシアとイランではないかという話だ。

ミャンマーでのクーデターから2週間経ったが、混乱は今も続いている。日本と欧米の報道を読み比べて、最も驚いたのはアンサンスーチー前国家顧問に対する評価の違いだ。一番辛辣だったのはファリード・ザカリアの発言。要するに、スーチーは、同じノーベル平和賞を受賞した南アフリカのネルソン・マンデラとは大違いだという。

マンデラは、同じ非暴力主義でも、政治的資質があり、国内の様々な勢力・民族間の和解・協調を進めて、遂に政治的統合を実現した。これに対し、国内各種民主勢力を糾合する政治的資質を欠くスーチーは最後までNLD中心主義、というかスーチー中心主義を変えず、後継者も育てなかった、と実に手厳しい。

しかし、考えてみれば、スーチー女史自身も、国軍と同様、ビルマ民族主義者エリートの一人に過ぎなかったことは、以前から西側識者も分かっていた筈だ。今更そんなことを言われてもね、というのがスーチーさんの本音ではなかろうか。もしザカリア説が正しければ、ミャンマー民主化はポスト・スー・チー時代になるのかも・・・。

写真)軍による戒厳令下、続く抗議活動 2021年2月12日
出典)Getty Images AsiaPac / Hkun Lat


〇アジア
WHOのコロナ調査団について、米NSC担当補佐官が声明を発表し、中国は初期感染例の生データを提供すべきだと指摘、調査結果の発表方法を「深く懸念する」と批判したそうだ。バイデン政権は中国のやることなすこと、何でも一言文句を言いたいらしい。でもこれは単なるジャブだろう、本当のパンチは炸裂するのかね?

〇欧州・ロシア
スペインカタルーニャ自治州の州議会選挙で分離独立派が過半数議席を獲得、国政では与党の社会労働党は得票率では首位となる見通しだという。この分離独立派はスペインでは左派なのだが、こうなると何が右で何が左か、訳が分からなくなる。要するに極端な連中なのか・・・・。欧州混乱の予兆でないことを祈るしかない。

〇中東
UAE(アラブ首長国連邦)が、火星探査機が撮影した巨大火山の写真を初めて公開、宇宙開発を加速させるUAEは2024年までに月探査を行うそうだ。ふーん、何か、ピンと来ないね。UAEの科学者も参加しているのだろうけど、結局はお金かな。スポンサーというのなら、納得するけど。失礼、これって、「やっかみ」なのかもしれない。

〇南北アメリカ
二回目の弾劾裁判評決直前、あのニッキー・ヘイリー元国連大使が、強烈なトランプ批判を公然と行ったそうだ。なるほど、彼女も次期大統領選を狙っているのね。前政権時代、彼女はトランプ氏と話せる数少ない閣僚の一人だと思ったが、やっぱり内心はトランプを馬鹿にしていたのか。この女性政治家も、別の意味で怖い人だと思う。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは来週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

トップ写真)トランプ米前大統領(オハイオ州クリーブランド2016年7月21日)
出典) Chip Somodevilla/Getty Images





この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表

1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。

2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。

2006年立命館大学客員教授。

2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。

2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)

言語:英語、中国語、アラビア語。

特技:サックス、ベースギター。

趣味:バンド活動。

各種メディアで評論活動。

宮家邦彦

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