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.国際  投稿日:2021/4/5

仏で若年層に「コロナうつ」


 Ulala(著述家)
「フランスUlala の視点」

【まとめ】

・仏で15歳未満の「コロナうつ」増、「自殺」が深刻化。

・度重なる外出禁止によるストレスや不規則な生活が原因か。

・予防のため、就寝・起床・食事など規則正しい生活と社会との関わり重要。

現在フランスでは、15歳未満の子供の「コロナうつ」の増加が問題となっている。新型コロナウイルスの流行が始まって以来、メンタルヘルスの悪化によって入院した15歳未満の子供は80%増加した。さらに、今年に入ってから自殺未遂の数は、他の年齢層には見られないほどの急激な上昇となったのだ。度重なる外出制限によるストレスや、不規則な生活などが原因とみられている。

レンヌ第1大学の小児精神医学科の教授で小児青年精神医学センターの責任者であるシルヴィ・トージマン氏によれば、10月31日以来、対応した自殺未遂者は2.5倍に増加したという。トージマン氏は小児科の緊急時に対応するチームを運営しているが、そこでも自殺願望がある若者が以前は週5人程度だったが、現在は週10人以上に増加している。

これはレンヌだけの話ではなく、フランス全体を見ても同様の現象がおきているのだ。3月30日に出されたフランス公衆衛生局の報告によれば、全国的でも15歳未満の自殺未遂件数が顕著に増加していることが見て取れる。他の年齢層は、前年度、前々年度と比べても自殺者の人数はそこまで変化がないのとは対照的だ。

図)「メンタルヘルス・シンドロミック・サーベイランス速報(2021年3月30日付)」より
― 緑線:2018/2019年度
― 青線:2019/2020年度
― 赤線:2020/2021年度
出典)フランス公衆衛生局

■子供が「コロナうつ」になる2つのポイント

トージマン氏によれば、このような若者の「コロナうつ」になるポイントは2つあるという。

1つ目は、10月31日以降の外出制限により社会活動が減少したことだ。マスク着用は、社会活動を増やす助けにもなっていない。その上、学校外でのアクティビティも次々と中止になったため、スポーツ活動も減少している。それらは若者にとっての「幸福感」と「不幸感」に大きく関係してくる問題なのである。そして、繰り返される外出制限による慢性的な見通しが立たない不安と社会的孤立のストレス。これらは、全てをスポンジのように吸収する若者たちを不安定にさせるのだ。

2つ目は、昨年3月の学校閉鎖を伴う外出制限に関係するという。現在、私たちはそのつけを払っているともいえる。春の外出制限で学校が閉鎖されたときに、テレビや携帯のゲームに依存する子供たちが増加した。また、その時、5月に学校が再開したにもかかわらず、学校に戻ることがなくそのまま家庭に閉じこもってしまった子供もいたのだ。

また重要な問題の一つとして、在宅でテレワークをしている両親が多くいることも挙げられる。両親が家にいることは、生活時間に大きな変化を与えた。会社に出勤しなくなることで睡眠時間と起きている時間のリズムが変わってしまったのだ。その結果、子供の生活リズムも変わってしまった。両親が就寝時間と起床時間を守り規則正しい生活をすることは、子供にとっても大切なことなのだ。

写真)新型コロナウイルスの拡大でテレワークする母親と、学校休校となった娘(2020年3月16日 パリ)
出典)Chesnot/Getty Images

■規則正し生活を送ることが一番の予防策                               

コロナの感染が拡大する中、マクロン大統領は3月31日、新型コロナウイルス対策についてテレビ演説し、4月3日から全土で外出を制限し、5日から学校を休校にすると発表した。またしても、外出制限と学校閉鎖である。これから約4週間、また、子供たちが学校に通えない生活が始まるのだ。外出制限生活は、大人にとっても精神的にも大変ではあるが、そういった時期に大人以上にダメージを受けるのはやはり子供たちなのである。

現在のような非常時は、子供の「コロナうつ」を予防するためにも親が率先して規則正しい生活を促したり、社会とのかかわりを絶やさない努力をすることが重要となる。特に、就寝時間、起床時間、食事時間、社会活動、学校活動、身体活動の時間にも気をつけたいところだ。そして、何か問題があれば積極的に専門家に相談できることも心にとどめておきたい。フランスでは、匿名で相談できる自殺リスニングライン(01 45 39 40 00)がすでに設置されており、24時間年中無休で対応してくれる。子供が感じている不安を緩和するケアの手助けをしてくれるのだ。

フランスで現在問題になっている子供の「コロナうつ」だが、実際はフランスに限らず、多くのことで制限が続いている日本でも同じことが言えるのではないだろうか。コロナの感染が広がる現在、より一層子供のメンタルヘルスに気をかけていきたいところである。

<参考リンク>
Covid-19 : depuis le 31 octobre, les crises suicidaires chez les jeunes multipliées par deux fois et demi
「Covid-19:10月31日以降、若年層の自殺危機が2.5倍に増加」

トップ画像)エッフェル塔をバックにセーヌ川を渡る若い女性。この日仏政府はパリなどへの新たな4週間のロックダウン実施を表明した(2021年3月18日 パリ)
出典)Kiran Ridley/Getty Images




この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

Ulala

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