東京五輪の目的を明確化する!【菅政権に問う】

西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
【まとめ】
・東京五輪賛成派・反対派ともそもそもの開催目的を明確に認識すべき。
・人々がスポーツの素晴らしさの実感し、親しみ・やってみたいと思えることが目的。
・政府が五輪の社会的意義を明確にし、反対派の納得を得ることが必要。
「今の感染状況での開催は普通はない」
「今のパンデミックの状況で開催するのは普通はない」
尾身茂会長は衆議院厚生労働委員会で発言した。今後、提言を出すそうなのでその中身がどういった記述なのか、を待ちたいところである。
しかし、そもそもパンデミックなのか?
インフォデミック(メディア情報が氾濫して、現実社会に影響を及ぼす現象)ではないのか?
など個人的には疑問を感じている。
□反対する理由
とはいえ、今の時点でも東京五輪に反対する人たちもかなりいる。前回提示したように35%もの人が中止という世論調査結果であり、その後、若干反対派が減少している。感染者数がこれだけ減り、ワクチン接種が急速に進んでいる中でも、反対者は数多い。
推察すると、
・コロナの認識
・こんな時になぜ五輪?
という感情的なもの
・そもそも五輪に興味関心がない
・必要性を感じていない
という疑問とが複合的に合体して大きな反対勢力になっていると思われる。
五輪を行う人たちの方も、抽象的な理念を繰り返すのみ。対話はない。この悲しい状況。菅総理も「安全安心な大会を実現することにより、希望と勇気を世界中にお届けできる」というあいまいなもの。そこで、五輪の目的を明確化してあげようと思う。
□五輪の目的
「すべての人が自己ベストを目指し(全員が自己ベスト)」
「一人ひとりが互いを認め合い(多様性と調和)」
「そして、未来につなげよう(未来への継承)」
の3つの基本コンセプトが東京五輪のビジョン。理念的なものなので、事業自体の目的に落としこもう。
【上位目的】
スポーツを通した人間育成と世界平和
【目的】
・スポーツの素晴らしさを実感する
・スポーツに触れるきっかけづくり、スポーツをやってみたいと思う
・スポーツによる感動を共有し、共感を深める
・平和に貢献する
・311からの復興した日本の姿を見せる
・日本社会の「速く、高く、強く」(前回五輪の理念)から、むしろ
「愉しく、しなやかに、末永く」への価値観の転換
というものだ、前後比較のフレームでより具体的なレベルまで落とし込もう。
□目的の明確化・具体化
五輪を通してどういった体験・経験をするのか。
参加者ではない、国民が、だ。
より目的を明確化してみよう。
【出典】筆者作成
五輪の後に、
・スポーツの素晴らしさを実感する
・スポーツに親しむ、やってみたいと思う
人が国内・世界ともに多くなってくれればいいのだ。
写真)東京五輪の聖火ランナー(広島 2021年5月17日)
出典)Carl Court/Getty Images
より具体的に、個人レベルに落とすと・・・
・超一流のスポーツ選手がいかに凄いかを知ることができる、体感し、 人生における刺激を受ける
・多様なスポーツを知り、スポーツを好きになる、スポーツを楽しんでもよいかな?と思う
・スポーツをやることを決意し、健康に心がけようと思う
・国際社会との出会いを通じて、プレーヤーの背景にある国への関心・興味を持つ
・(一部の人)競技スポーツに人生や自分の成長をかけようと思う
・素晴らしい記憶や思い出を得る
・平和の良さ、311からの復興に思いをはせる
・周りとの交流を通して、コミュニケーションを深める
・(地域や少しでも関係する人を応援することを通じて)、五輪選手や関係者、その方々と出会ってきた人はなんだかうれしくなる
といったところだ。
なんと素晴らしい体験ができるのだろうか?
こうした社会的意義をよりもっと明確にして、反対にも納得してもらえるとよいのだが。菅政権に期待したい。
トップ画像
写真)都庁付近にて東京五輪反対などを訴える人々(東京2021年6月6日)
出典)Yuichi Yamazaki/Getty Images