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.国際  投稿日:2022/1/14

巣ごもり金正恩、ミサイル発射で「終戦宣言」突き放す


朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

【まとめ】

・朝鮮労働党中央委員会総会が昨年末閉会、「巣ごもり政策」を国政方針と決め、対外メッセージ出さず。

・韓国は、南北対話再開や終戦宣言に対する金総書記の前向きの立場を期待していたが、金総書記は反応せず。

・新年の2発のミサイル発射で、北朝鮮が文在寅の「終戦宣言」に興味を示していないことが確定的に。

 

 北朝鮮の労働新聞は1月1日、朝鮮労働党中央委員会第8期第4回総会(2021・12・27~31)が前日閉会したと報じた。この総会で北朝鮮は、新年(2022年)にも引き続き「巣ごもり政策」を国政方針と決め、対外メッセージを出さなかった。そして昨年一昨年に続き肉声での2022年の新年辞も省略した。1月8日の金正恩誕生日もこれまでに見られないほど静かだった。予想通り北朝鮮は金正恩執権後最大の危機を迎えているようだ。

 

■ 党中央委員会総会で提示された2022年の課題

 昨年末の党第8期第4回中央委員会総会で、金正恩総書記は2021年を「厳しい難関の中で全面的発展への変化の序幕を開いた偉大な勝利の年である」との評価を下したが、具体的数字は何も示さなかった。

その上で、2022年の基本課題を「5カ年計画遂行の確固たる保証を構築し、国家の発展と人民生活ではっきりとした改変を成し遂げ、祖国の歴史に栄光に輝く一ページを記すことである」と語り、各分野の課題を数字抜きで提示した。

特には食衣住問題の解決で画期的な前進を遂げなければならないとし、農業に力を集中して小麦と大麦の栽培面積を増やして機械手段を積極的に導入しなければならないと強調した。そして食糧増産に向けた「農村発展10カ年計画」を提示したという(具体的内容は発表せず)。この報告で金総書記は農業と農村という言葉を143回言及した。

また引き続き「非常防疫は国家第1順位」と改めて強調し、今年の政策遂行を「コロナ防疫」と「食糧難解決」に集中するとの意向を明確にした。

一方で思想的引き締めのために、引き続き反社会主義、非社会主義との闘争をより積極的に展開することと、社会秩序の確立をいっそう強化する課題にも言及した。

その一方で、朝鮮半島の軍事的環境と国際情勢の流れは日ごとに不安定になっているとの認識を示し、国家防衛力の強化をいっそう力強く推し進めることを求めた。

金総書記は2022年も巣ごもりに徹することにしたようだ。

 

■ 文在寅の「終戦宣言」には反応なし

北朝鮮メディアによると、会議2日目から3日間分科委員会会議を開いて懸案について協議したが、会議の結果報道では「多事多変の国際政治情勢と周辺環境に対処して北南(南北)関係と対外事業部門で堅持すべき原則と戦術の方向性を示した」という一行が全てだった。別途の対南・対米メッセージはなかった。

韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官は、昨年12月29日に「米国と終戦宣言文案協議が終わった」などとの情報を流し、南北対話再開や終戦宣言に対する金総書記の前向きの立場を期待していたが、金総書記は反応しなかった。

1月7日には北京冬季五輪の不参加も決めた。これは北朝鮮が今年も対南および対米接触に乗り出す準備ができていないことを意味する。北京冬季五輪を機に終戦宣言を推進しようとした韓国政府の構想は事実上流れたといえる。

写真)豪州訪問時の文在寅韓国大統領夫妻 ニューサウスウェールズ州のマーガレット・ビーズリー総督夫妻(中央)、同州ドミニク・ペロッテット首相夫妻(右)らと 2021年12月14日 オ-ストラリア・シドニー
出典) Photo by Nikki Short – Pool/Getty Images

 

 新年早々のミサイル2発発射で文在寅を突き放す

対南・対米メッセージがなかったことから、3月に予定されている韓米合同軍事演習前後に関心が寄せられていたが、金正恩は、文在寅政権の「ストーカー的擦り寄り」を振り切るように、新年早々の1月5日午前8時10分、上下左右軌道で滑空する新型と見られる極超音速弾道ミサイル1発を発射した。

慈江道の内陸部から発射されたと見られるこのミサイルは飛距離700Km(日本政府は500Kmとしている)で速度はマッハ5とされている。この発射に続き11日午前7時27分ごろにも弾道ミサイル1発が発射された。

これらのミサイルの発射は、対米アプローチというよりは、武力強化方針に基づく技術力と精度の向上を目的として行われたと見られるが、12月からの冬季訓練に合わせて新年早々発射されたところに注目が集まっている。北朝鮮軍は通常2〜3月頃に陸・海・空軍合同の打撃訓練の一環としてミサイルを発射することが多いので新年早々の発射は珍しい。

これで北朝鮮が文在寅の「終戦宣言」に興味を示していないことが確定的となった。

 

写真)北朝鮮のミサイル発射のニュースを見るソウル市民 2022年1月5日 韓国・ソウル駅にて
出典)Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images




この記事を書いた人
朴斗鎮コリア国際研究所 所長

1941年大阪市生まれ。1966年朝鮮大学校政治経済学部卒業。朝鮮問題研究所所員を経て1968年より1975年まで朝鮮大学校政治経済学部教員。その後(株)ソフトバンクを経て、経営コンサルタントとなり、2006年から現職。デイリーNK顧問。朝鮮半島問題、在日朝鮮人問題を研究。テレビ、新聞、雑誌で言論活動。著書に『揺れる北朝鮮 金正恩のゆくえ』(花伝社)、「金正恩ー恐怖と不条理の統治構造ー」(新潮社)など。

朴斗鎮

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