[李受玟]【ユニクロと無印良品の韓国進出記~過去10年を振り返る~】
李受玟(イ・スミン)(韓国大手経済誌記者)
2004年12月、日本を代表する二つの企業が韓国に錨を下ろした。一つはファストファッションを掲げて海外進出を始めたユニクロ、もう一つはライフスタイル全般に関する商品を主に扱う無印良品(以下MUJI)である。
この二つの企業は韓国への進出方法として驚くほど類似した道を選んだ。またそれは韓国と日本で同時に活動しているロッテグループとの緊密な関係から出発した。当時、良品計画はロッテ商事と持ち分6対4の比率でMUJIの韓国法人ムジコリアを設立したし、ファーストリテイリングとロッテショッピングはそれぞれ51%、49%の資本を投資してユニクロの韓国法人であるFRLコリアをつくった。
ロッテグループは日本の流通企業の商品とマーケティングが韓国にも通じると判断し、相当な資金を投資すると同時に系列社のパワーを集めてユニクロとムジに力を入れた。ロッテは 明洞(ミョンドン)と蚕室(チャムシル)などグループが握っていた商圏にこれら両企業のショップをオープンするように支援した。また両企業は系列社だけ活用できるロッテメンバーズカードも マーケティング手段として活用できるようにした。
だが10年たった今、両企業の間には「売上高20倍」という莫大な差が出ている。FRLコリアは2012年9月から2013年8月まで売上高6,940億ウォン(約695億円)と営業利益687億ウォン(約68億円)をあげ、前期の売上高より約36%伸びた。
一方、ムジコリアは2013年(12月決算)に361億ウォン(約36億円)の売上高と7億ウォン(約7,000万円)の営業利益でしかなかった。2012年の営業損益は赤字だった。この企業らの勝ち負けを決したのは何か。流通業界の関係者らは「価格戦略」をひとつの原因とみなしている。
ムジコリアは進出の初期、日本の定価より1.5倍以上高い値段を韓国の顧客に提案した。それは在庫の問題などから中国で生産された商品を神戸にいったん輸入した後、また韓国に輸出する方法を選んだことから発した問題であった。
この高価政策は韓国の家具やインテリア産業をまったく考えなかった戦略だった。とりわけ、MUJIのターゲットといえる大学生や新婚夫婦にとっては、無理な夢に近かった。購買力が低い20~30代の潜在顧客たちは宅配サービスも含めているMUJIより、インターネットで販売される安っぽい中国産のニセIKEAを手に入れる方が、最も合理的な消費だと判断したためだ。
だが、ユニクロはZARAやH&Mなどグローバルなファストファッションのブランドが韓国に根を下ろす前にマーケットを先に占有した。デパートやアウトレットにだけ接していた韓国の消費者たちはユニクロの激安価格に熱狂的な反応を示した。ユニクロ側もシーズンにあわせたセールと人気商品を集めた限定商品にてユーザーへ恩返しした。その結果,FRLコリアはソウルやプサンのような大都市はもちろん地方の小都市にも影響力を拡大している。
強みが異なる両企業を売上高だけで比較するのは危険かもしれない。しかし今年4月、ムジコリアは商品の3分の1にあたる670品目に対し値段を下げる方針を明らかにした。価格戦略がムジコリアにとって悩ましい部分だったことが明確になった。
韓国への進出を目前に控えるIKEAや、類似した価格戦略を広げる他のSPAブランドの空襲の下、ユニクロとMUJIが作っていく今後の10年に期待したい。
李受玟(イ.スミン)
2008年11月~ 2009年8月 一般企業(商社)勤務
2009年2月 延世大学卒業
2010年~ 大手経済紙 記者
photo by: (c) Tomo.Yun (http://www.yunphoto.net)
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