"Japan In-depth"[ジャパン・インデプス]

東京都はゴミ対策と捕獲でカラス退治成功 「高岡発ニッポン再興」その77

出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・東京都はゴミ対策と捕獲、巣落としを徹底し、カラス退治に成功。高岡市もカラス対策を強化。

・生息数の調査継続も重要。カラス減少数など政策効果が分かる。

・農作物被害だけでなく糞被害も。カラス退治で、美しく品格のある高岡を。

 

高岡市では、「高岡の陣」と名付けて、カラス対策を強化しています。今の時期は「春の陣」として巣作り防止作戦を行っています。今のところ目に見える効果は上がっていません。カラス対策で成功を収めた自治体と言えば、東京都です。私は先日、都庁を訪れ、話を聞きました。

お会いしたのは、東京都環境局自然環境部の佐藤基以課長さん。

「ネットを使ったりして生ゴミの収集方法が改善したことと、カラスの捕獲作業を続けたこと。この2つが、大きな要因だと思っています」と説明します。

東京都では公園など40か所で夕方、生息数の調査を行っています。平成13年度には、3万6416羽でしたが、令和4年度は8699羽にまで減っています。実に70%減です。

佐藤さんはこう続けます。「カラスをゼロにしようとは思っていません。カラスは、童謡にもあるように昔から、日本人と共存してきました。外来の鳥でもありません。7000羽ぐらいが妥当だと思っています」。

生息数の目安を明確にしているのは、分かりやすいですね。毎年同じ40か所で調査しているのも重要です。政策効果がはっきりわかるからです。

カラスをどうやって減らすのか。まずは、ゴミの出し方の適正化です。東京都は、区市町村に生ゴミ収集方法の改善を促してきました。カラスの食を絶つのが狙いです。

また、捕獲トラップを設置しました。捕獲用のトラップは、生肉などのエサを入れた、かごのようなものです。幅4メートル×3メートル、高さ3メートル。入り口から入ると出られない仕組みとなっています。ピーク時には108基ありましたが、今では75基です。

業者は4日に1回見回りをして、エサを補充しています。ポイントとなるのは、おとり1羽を必ず残しておくことです。エサとおとりで、カラスがトラップに入り込むのです。捕獲数は、ピーク時には1万8000羽を超えましたが、ここ数年は5000羽ほどで推移しています。都庁によせられた苦情・相談件数が、平成13年度に比べ91%減少しています。

また、東京都では、令和3年度まで巣落とし」を実施していました。ねぐらとなっている公園などで、巣をくまなく撤去していったのです。巣にヒナや卵があると、捕獲できないことになっていますが、今後被害が出る恐れがあるという「予察捕獲」という考え方に基づいた許可のもと巣落としをしていました。

カラス対策をぶち上げたのは、石原慎太郎知事(当時)です。2001年、「カラス対策プロジェクトチーム」を発足。カラス退治のため、ゴミ対策と捕獲、巣落としを徹底しました。シンプルな政策ですが、それが大きな効果を上げているのです。カラスは追い払っても、別の場所で被害を出すだけなのです。

写真)石原慎太郎都知事(当時)(2007年4月8日 東京

出典)Photo by Koichi Kamoshida/Getty Images

私は東京都の例を見ても、シンプルな政策を訴え続けたいですね。捕獲用のトラップを増やすのは大切です。檻でカラスをより多く捕獲するためには、エサの工夫も必要ですね。専門家によれば、病死した豚の生肉を与えるのが最も効果的だそうです。

それに、生息数の調査です。高岡では実施されていませんが、私はやるべきだと思います。調査しないと、どれだけ減っているのかわかりません。

高岡市では、農作物被害だけでなく、中心部の古城公園などでは、糞の被害も見られます。コロナが落ち着きを見せ始め、高岡市にも外国人含めた旅行者が増えています。カラスの糞をかけられたら、高岡に対するイメージは大幅に低下するでしょう。カラス退治で、美しく品格のある高岡を目指したいですね。

トップ写真:高岡市のごみネットの上のカラス)筆者提供