「高岡発ニッポン再興」 その103 カラス捕獲「空白の3カ月」解消へ
出町譲(高岡市議会議員・作家)
【まとめ】
・カラス対策の強化に高岡市は来年度から本腰を入れる見通し。
・3月から5月の一番大事な繁殖期に檻に捕獲作業をしていなかった。
・愛鳥週間と予算の仕組みが理由で「空白の3カ月」が生じた。
私は高岡市議会議員になってカラス対策の強化を訴えてきましたが、高岡市はやっと来年度から本腰を入れる見通しになりました。カラス対策の肝は、個体数を減らせるかどうかです。そのため、檻を設置しているのですが、檻の運用方法が大きく変わる見通しになったのです。
10月18日の産業建設常任委員会で、古城公園に設置されているカラスの檻について、私が「24時間365日」カラスのおとりと餌を入れるべきだと訴えたところ、高岡市当局は「前向きに検討する」と答弁したのです。
この檻の捕獲作業には空白期間がありました。3月から5月までおとりや餌を入れず、捕獲作業を行っていなかったのです。それはカラスの繁殖期です。それなのに、「空白の3カ月」があったのです。カラス対策に関しては「高岡の陣」と銘打ってアピールしていますが、一番大事な時に、捕獲作業をやっていなかったのです。
私がこの衝撃の事実に気づいたのは、今年7月です。以前この連載でもお伝えしましたが、6月定例会の答弁書を改めて読みました。私はこう質問しました。去年設置されたカラスの檻の月別の捕獲数はどれくらいでしょうか。
それに対し、市側はこのように答弁しました。
「月別の捕獲数は、6月ゼロ、7月29羽、8月16羽、9月2羽、10月4羽、11月1羽、12月ゼロ、1月1羽、2月36羽、計89羽」。
6月時点で質問したのに、なぜ2月までしか数字を公表しないのか。私はふと不思議に思ったのです。そこで、遅ればせながら7月に入って当局に話を聞くと、2月末で捕獲作業を打ち切っていたことを明らかにしました。つまり、檻におとりや餌を入れたりしていないのです。
再開したのは6月です。カラスの繁殖期なのに、なぜ捕獲しないのでしょうか。
市当局が主張する2つの理由にも驚きました。高岡市では、愛鳥週間が5月後半にあるためだと説明しました。「カラスの個体数を減らし、美しい高岡を取り戻す」。その政策目標が、愛鳥週間でストップするというのは、私にはまったく理解できません。
そしてもう一つの理由については、予算の仕組みが影響しているというのです。予算というのは、3月末で当該年度が終わります。4月以降は、新年度の予算となります。そのため、新年度予算が3月定例会で成立し、その後、業者を入札する。そのため、時間がかかって6月以降になるというのです。
それでは役所のすべての事業が、年度をまたいで継続できなくなります。しかも、こうした事態を回避する仕組みがあります。債務負担行為と呼ばれるものです。
愛鳥週間と予算の仕組み。この2つの理由で「空白の3カ月」が生じていたのです。しかし、来年度からは解消されそうです。カラスを減らし、美しい高岡を取り戻す第一歩となるのです。
高岡市の職員の意識が民間企業と同じように変われば、私は高岡が大きく変化すると思っています。カラスを減らし、美しい高岡を目指す。その目的のために、何をすべきか。私は市議会議員として、提言し続けます。
トップ写真:古城公園に設置されているカラスの檻)執筆者提供
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この記事を書いた人
出町譲高岡市議会議員・作家
1964年富山県高岡市生まれ。
富山県立高岡高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。
90年時事通信社入社。ニューヨーク特派員などを経て、2001年テレビ朝日入社。経済部で、内閣府や財界などを担当した。その後は、「報道ステーション」や「グッド!モーニング」など報道番組のデスクを務めた。
テレビ朝日に勤務しながら、11年の東日本大震災をきっかけに執筆活動を開始。『清貧と復興 土光敏夫100の言葉』(2011年、文藝春秋)はベストセラーに。
その後も、『母の力 土光敏夫をつくった100の言葉』(2013年、文藝春秋)、『九転十起 事業の鬼・浅野総一郎』(2013年、幻冬舎)、『景気を仕掛けた男 「丸井」創業者・青井忠治』(2015年、幻冬舎)、『日本への遺言 地域再生の神様《豊重哲郎》が起した奇跡』(2017年、幻冬舎)『現場発! ニッポン再興』(2019年、晶文社)などを出版した。
21年1月 故郷高岡の再興を目指して帰郷。
同年7月 高岡市長選に出馬。19,445票の信任を得るも志叶わず。
同年10月 高岡市議会議員選挙に立候補し、候補者29人中2位で当選。8,656票の得票数は、トップ当選の嶋川武秀氏(11,604票)と共に高岡市議会議員選挙の最高得票数を上回った。