"Japan In-depth"[ジャパン・インデプス]

テロはISばかりではない? NY爆破事件

宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(9月19-25日)」

ニューヨーク(NYC)で国連総会が始まり、世界から首脳や主要閣僚が集まっている。そのNYCでは17日にマンハッタンで爆発事件が起きた。ミネソタで起きた刺傷事件はIS系テロらしいが、NYCについては未だ発表がない。IS以外にも数多くの容疑者が考えられるなんて、さすがは米国、ということか。死者ゼロは不幸中の幸いだ。
 
先週はドイツとロシアで選挙があり、明暗を分けた。民主主義が不完全なロシアで与党「統一ロシア」が過半数を占める勢いであるのに対し、民主的な市議会選挙が行われたドイツのベルリン市ではメルケル政権与党の「社会民主党」が票を減らす中、新興右派政党が躍進した。民主主義とはかくも非効率なものなのか。
 
選挙といえば、中国の全人代では、遼寧省選出の代表選挙で票の買収行為があったとして、代表45人の当選が無効とされた。遼寧省人代では議員617人のうち454人が不正関与で代表資格を失ったという。関係者は「歴史上なかったこと」と述べたが、なかったのは「不正」ではなく、「失格者の数の多さ」なのだから、始末に負えない。
 
〇欧州・ロシア 
19日に欧州委員会委員長がスイス大統領と会談する。EUはスイスがEU市民の移動の自由を制限すれば、スイスのEU統一市場へのアクセスを制限すると警告している。スイスのこの問題は英国のEU離脱問題と基本的に同じであり、EU側の態度は厳しいらしい。スイスとしては難民流入とEU市場アクセスのバランス取りが難しい。
 
〇東アジア・大洋州
東アジアの首脳は皆NYCにいるようだ。18日に柳条湖事件85年周年の記念式典が瀋陽市の「九・一八歴史博物館」で開かれた。参加した政治局員の劉延東副首相で、昨年よりも更にレベルを下げているそうだ。習近平政権の対日関係改善意欲の表れと報じられたが、こんな式典、いつでも参加レベルは上げられ
る。楽観は禁物だろう。
 
〇中東・アフリカ
24-25日に中国・イスラエル技術革新・投資サミットがテルアビブで開かれる。一昔前、中国がイスラエルからハイテク戦闘機技術を導入しようとした際、米国が同計画を潰した経緯がある。それでも中国はメゲテいない。さすがは中国、イスラエルとのハイテク交流の重要さを正確に理解しているようだ。日本も見習わなければ・・・。
 
○アメリカ両大陸
米大統領選挙の討論会第一回目は26日ということもあり、今週はあまり大きな動きはない。今のところ、両候補ともそれぞれお元気のようで、ご同慶の至りであるが、投票日まで既に二カ月を切っている。今まではエンタメに近かったが、本当の大統領選挙はこれから始まるのだ。今後は様々な情報を今以上に冷静に分析すべきだ。
 
〇インド亜大陸
特記事項なし。
 
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。