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.国際  投稿日:2016/8/2

相模原殺傷事件とISの相似“破壊願望”


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(2016年8月1日-7日)」

早いもので2016年もあと5ヶ月となった。5日には遂に「リオ五輪」が始まる。ブラジルという国は、大統領がいなくても、突貫工事が間に合わなくても、何とかなるのか。これが日本だったら、間違いなく国中がパニックになるだろう。これまでのところ、一応テロリストの動きを防いでいるようだが、油断は禁物。何事もないことを祈るしかない。

先週7月26日未明に相模原市の障害者施設で起きた大量殺人事件はショックだった。この卑劣極まりない犯行の犠牲となった方々に心から哀悼の意を表したい。この事件と、最近欧米で続発する「イスラム過激テロ」事件には共通点がある。欧米でのイスラム国(IS)のテロの原因は「イスラムの過激化」ではないと確信した。

特に気になるのは、享楽的で素行も悪かった若者が、犯行前の数か月間に「急速に過激化」していった点で、この事件が欧米のイスラム過激テロと酷似していることだ。欧米でのホームグロウン型ISテロ犯人の動機は「宗教的信仰」ではなく、彼らの「破壊願望」ではないのか。詳しくは今週木曜日の産経新聞のコラムをお読み頂きたい。

 

〇欧州・ロシア 

欧州は完全に夏休みに入り、3日の欧州中銀役員会と4日の英国中銀の金利等に関する発表以外、重要会議は事実上ゼロだ。一方、3日にはワシントンで中央アジア五カ国(カザフ、キルギス、タジク、トルクメン、ウズベク)の外相が米国務長官と会談する。やはり、米国人の方が欧州人より働き者なのだろうか。

〇東アジア・大洋州

マレーシアでは首相に広範な治安上の権限を与える「国家安全保障会議法」が1日に施行される。日本でこれを詳しく報じたのは「しんぶん赤旗」だけ。日本のメディアの関心は低い。一方、同日、中国は南シナ海の一部での漁業を解禁する。例年通りとはいえ、仲裁裁判所の判断を無視し続けるのか。3日には日本で内閣改造がある。

〇中東・アフリカ

1日にシリア和平会議の「移行期間」に関する交渉期限が来るが、関係者間の話し合いに進展ゼロだ。あれだけ多くの死者と難民が発生しているのに、国連は何もできない。状況はイエメン和平会議も同様、4日には合意の交渉期限が来るが、こちらも見通しは立っていない。アラブ諸国・諸勢力の自己統治能力は衰えるばかりだ。

アメリカ両大陸

イラク戦争で戦死したイスラム教徒米兵の母親を侮辱したトランプ候補の発言に批判が高まっている。7月28日の民主党大会で米兵の両親は、「トランプ候補は今までアメリカのために何一つ犠牲を払ってこなかった」と非難していた。「息子という犠牲を払った母親の苦しみ」を理解しようとしないトランプの政治的直感は鈍りつつある。

〇インド亜大陸 

パキスタンで南アジア諸国の内務大臣会合が開かれる以外、特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。


この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表

1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。

2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。

2006年立命館大学客員教授。

2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。

2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)

言語:英語、中国語、アラビア語。

特技:サックス、ベースギター。

趣味:バンド活動。

各種メディアで評論活動。

宮家邦彦

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