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解放食堂・大阪の陣

Japan In-Depth編集長

安倍宏行(ジャーナリスト)

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177人が集まった、27日(日)大阪で開催された解放食堂。

今回は大阪のリバ邸(注1)の子たちが中心となって、会場、ゲストの確保・調整、PR、当日運営まで総てやり遂げてくれた。その結果がこれだった。

「そもそも東日本大震災は関西には遠い話」「大阪人はお金にシビアだから5000円も払ってそんなイベントに行くわけない。」「絶対失敗する。」とまで言われて、正直不安だった。しかし、そんな不安は全くの杞憂に終わった。過去2番目の大集客だった。

今回のゲストも本当に素晴らしい方々ばかりだった。Music Activistのshihoさん(注2)は、私も何回も足を運んでいる岩手県陸前高田市を中心に復興支援をしている人。彼女は、被災地の映像に言葉を重ね合わせ、そして歌声を披露して、会場の人達の心をわしづかみにした。

そして、shihoさんとのトークイベントに参加してくれたのは、一般社団法人 東日本大震災復興サポート協会代表理事・遠藤雅彦氏。いわき市豊間出身の氏は、東日本大震災により住宅が流出し、大阪市へ避難して来た方だ。震災後に関西へ避難した避難者について自立を目指したサポートをしている。

私と共に、主催者側の安藤美冬さんも参加して行われたトークで、遠藤氏から衝撃の事実が次々と明らかにされ、会場は静まり返った。

それは、福島県から関西地区に避難している方々が1000人超もいる事。サポート協会がネットワーク化しているのはそのうち僅か100人程度である事。個人情報保護法案が避難している人々の情報アクセスの前に立ちはだかっている事、今仮に住んでいる住宅には入居期限があり、いつかは出て行かねばならない事(そして多くの人には故郷の家はもう、無い。もしくは、避難区域となっていてそもそも帰還出来ない。)、等だ。衣食住のうち「住」が深刻なのに、政府は、もしくは自治体は助けの手を差し伸べてくれない、と遠藤氏はこの問題が如何に避難民にとって深刻か、訴えた。

圧巻だったのは、書家、徳山尭浩さん(注3)のパフォーマンス。音楽に合わせ、「陽」という大きな文字を書ききった。その書は直ぐにチャリティー・オークションにかけられ、安藤美冬さん提供の本やスカーフ、そして駆け付けたライフスタイル・プロデューサーとして注目を集める村上萌さんの新刊本「カスタマイズ エブリディ」もオークションにかけられた。

shihoさんも遠藤さんも徳山さんも、沢山の若者が集まっている事にひたすら驚いていたが、彼だけではない。一番、びっくりしているのはこの私である。参加していた多くの若者から、来年予定されている京都、鹿児島に続き、札幌、名古屋でも!との声も上がった。

「風化」と「風評被害」。二つの「風」に立ち向かうため、東北の食と酒を楽しむイベントとして産声をあげた「解放食堂」第1回から半年で、自立的に回り始めている。来年は全国各地で開催され続けるだろう。そして、被災地への想いもまた広がり続ける事だろう。

(注1)連続起業家であり、解放集団Liverty代表である家入一真氏や、同代表高木新平氏がオープンした、「現代の駆け込み寺」現代のアジール(自由領域)を目指す。世の中の枠組みや空気に苦しくなった人たちが集まる場所=シェアハウスとして、東京を皮切りに、大阪、京都、と全国各地で続々増殖中。

(注2)shiho 【プロフィール】

(注3)徳山尭浩 【プロフィール】

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