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.経済  投稿日:2013/10/24

[安倍宏行]新国立競技場を巡る不思議


Japan In-Depth編集長

安倍宏行(ジャーナリスト)

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2020年東京オリンピック招致決定、おめでとう!というムードに水を指すニュースが続く、新国立競技場。その宇宙船のような外観に圧倒された人も多いだろう(注1)。コンペで優勝したのは、イラク出身でイギリス在住の建築家ザハ・ハディドだった。

そこに、建築界の大御所槇文彦氏が今年8月になって建設反対ののろしを上げたのがけちのつき始め(注2)。何故、今さら反対なのか? と訝る向きもあったが、「濃密な歴史を持つ風致地区になぜこのような巨大な施設をつくらなければならないのか」といわれると、まあ、それもそうかもな、とも思う。

「過去の五輪会場と比較しても巨大すぎる」とか、「緑が多い周辺景観にそぐわない」などという声も。更に、施設の維持管理費が巨額になる、との懸念も。が、もうプロジェクトは動き出しているだろうし、今さらどうにもならないだろう、と思っていた。なにしろ、2015年秋の着工、2019年春の完成予定である。

ところが。当初1300億円と試算されていた総工費が当初予算の倍以上になりそうだ、というニュースが飛び込んできた。その額、3000億円。どんなずさんな試算なんだ?なんでも3000億円には通路や緑地などの整備費も入っていると言うが、競技場建設に便乗してあれもこれもと予算に盛り込んだのであろう。想像に難くない。

下村博文文部科学相は23日午後の参院予算委員会で、「あまりにも膨大な予算がかかりすぎるので、率直に申し上げて縮小する方向で検討する必要がある」と述べたが、当たり前すぎる話で、民間ならあり得ない。そもそも、1300億円をオーバーしそうな時点で、何か無駄なものが乗っかってるのではないか、と考えるのが普通だろう。

予算が2倍以上になりましたといって、あ、そうですか、と言う予算管理部署ががどこにある? が、政府や公的機関では往々にしてそういう事が起きるから困ったものだ。それの最たるものが国会予算ではないか。収入と同等か、それ以上の借金をして帳尻を合わせている我が国の会計は、既に国と地方合わせて累積1000兆円の借金にまみれている。

冷静に考えて、毎年10兆円ずつ返しても100年かかる。こういうことが延々と続いている事をどれだけの人が理解しているのか。何も起きないから何もしなくていい、という発想は国を滅ぼす。少し話が脱線したが、オリンピックという祭りの熱に浮かされることを悪いとは言わない。しかし、無駄は徹底的に省き、2020年以降の日本にとっても必要な施設を建設してもらいたい。

祭りが終わったら、会場跡地は閑古鳥、という国を知っているだけに、日本の英知を見せてもらいたいものだ。

 

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