「オリパラ来年開催決断は安倍政権の命取りに」松沢成文参議院議員
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
Japan In-depth編集部(油井彩姫)
「編集長が聞く!」
【まとめ】
・緊急事態宣言の遅れは、首相独断専行批判と財界からの圧力が理由。
・中国頼みのサプライチェーン見直しとアフリカ支援が急務。
・オリパラ開催1年延長は拙速、安倍政権の命取りに。
新型コロナウイルス感染症が拡大し、医療崩壊が現実味を帯びつつある中、政府は4月7日夕方緊急事態宣言を発令した。
法律に基づいた緊急事態宣言は果たしてどのような効果があるのか?また来週にも出される見込みの政府の緊急経済対策について、日本維新の会の松沢成文参議院議員に話を聞いた。
なぜこんなにも緊急事態宣言が遅れてしまっているのか。その理由として松沢氏は2つの理由を挙げた。
ひとつは、「学校休校を安倍首相主導で行ったことに対する批判」
「(安倍首相の決断で)学校が休校になり混乱した。なぜ充分に準備せず独断で決めてしまったのか、と相当批判の声が出た。次の決断をすぐに下しにくくなってしまっていたと思う」
二つ目は「景気への影響を恐れる財界からの強い反対」
「安倍総理はこれまでもアベノミクスとして、経済を重視した政策を進めてきた。緊急事態宣言を出すことで、経済が滞ってしまうことを財界は恐れたのではないか」と述べ、財界から官邸に強い圧力があったとの見方を示した。
また、欧米のロックダウンとは異なり、強制力がない緊急事態宣言を出すことに意味があるのか、という問いに対しては松沢氏は、「外出しないように要請するにも、これまでのようにただ呼びかけるのではなく、法的な根拠が伴うことで影響力は大きくなる。不要不急の外出をする人や通勤させる会社はゼロにはならないだろうが、より多くの企業や人が従うようになる、一定の効果は期待できる」と話した。
さらに、対外的にも日本の危機意識が高まっていることのアピールになるという点でも意味がある、とした。
・緊急経済対策
まず松沢氏は、現金給付など、国民に対する支援をできるだけ早くスタートさせるべきだと述べた。
「明日明後日の生活が危うい人はいる。欧米の対応は早かった。日本は遅すぎる」と批判した。
また、政府の緊急経済対策に先立ち、日銀はETF(上場投資信託)の購入倍増を決めているが、これについて松沢氏は、
「このような政策は資本主義社会としてはご法度だ。当たり前のようになってきてしまっているがきわめて不健全な状態」だと批判した。
その上で松沢氏は、元神奈川県知事として、経済的に困窮している各自治体に対して、「自治体の地方債を日銀が買う」施策を提案した。その分コロナ対策に使うことを条件とすれば、自治体が直接住民にお金を配りやすくなる。
もう一つは、マイナンバーを使って個人事業主等、明日の生活に困っている人に対して無利子無担保で月に10万~20万を貸し、3年後から返却させるというシステムも提案した。
・コロナ後の日本の針路
感染症の拡大はグローバル化とセットである。今後も新たな新型ウイルスによる感染が起きる可能性は極めて高い。今後の日本の進路について聞いた。
まず第1に松沢氏は、「グローバル化の見直し」を挙げた。
「今回、多くの企業が中国に頼っていたことが、経済的に大きく裏目に出た。アジアの中でも中国一国に頼らず、東南アジア、インドなどともパートナーシップを組んで拡げていくことが必要だ」と指摘した。
2番目に「途上国への支援」を挙げた。
感染症の影響は、スペイン風邪の前例にもあるように、第2波、第3波とまだまだ続く可能性が高い。日本はどうしていったらいいのか。
松沢氏は、今後、アフリカなどの貧困国で感染拡大が始まる懸念を示した。
「中央アフリカには人工呼吸器が数台しかないという。衛生状態が非常に悪く、感染が始まったら今より多くの死者が出かねない。また、清潔な水が水道からいくらでも出てくることもない。手洗いが一番大事、と呼びかけても、身近には汚れた川の水しかない」
今後、日本はアフリカの人々に手を差し伸べることができるのか、と松沢氏は問題提起した。
「中国は、アフリカに既に援助の手を差し伸べ始めている。手をこまねいていては、日本は国際政治でも遅れをとることになる」と警鐘を鳴らした。
・オリンピック1年延長の影響
安倍首相は東京2020オリンピック・パラリンピックの開催を1年後と決めた。この判断は拙速だったのではないか、と松沢氏は言う。
「聖火リレーのことを考えると、来年の4月頃までには、コロナウイルス感染拡大が鎮静化していなければならない。オリンピックは世界大会なので、世界中が沈静化している必要がある。1年後収まっていなかったら、もう1年延期できるのか! それでもできなかったら中止になってしまう。本当に1年後に行えるのか?」と述べ、2021年夏の開催は厳しいとの見方を示した。
また、東京五輪組織委員会会長森喜朗氏の健康問題や、組織委理事を務める電通元専務の高橋治之氏が、五輪招致を巡り招致委員会から約9億円相当の資金を受け取り、国際オリンピック委員会(IOC)委員らにロビー活動を行っていたと一部メディアが報じた件などを上げ、
「危機管理の観点から、不安定要因を取り除いて新生組織委員会を組みなおす必要がある」と述べた。
その上で、「自民党の総裁選は来年9月であり、安倍首相は、自分の総裁任期の内にやりたいという思いがあったのでは。(1年延長という)この決断は安倍政権にとって命取りになるかもしれない」と松沢氏は述べた。
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。