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「アフターコロナの国家ビジョン作る」下村博文自民党選挙対策委員長

細川珠生(政治ジャーナリスト)

「細川珠生モーニングトーク」2020年6月20日放送

Japan In-depth 編集部(霜野莉沙)

【まとめ】

・日本はコロナ対策に成功しているが、政権批判の原因は検証すべき。

・新しい議員連盟は政権批判ではなく、政治家として日本の将来像を考えるもの。

・衆議院比例代表の「73歳定年制」撤廃については慎重に検討する。

 

今日は衆議院議員で自民党選挙対策委員長、元文部科学大臣の下村博文氏をゲストに招いた。第201回通常国会と安倍政権のコロナウイルス対策の総括、新たな議員連盟、9月入学などに関して政治ジャーナリストの細川珠生が話を聞いた。

■ 新型コロナウイルス対策について

第201回通常国会の大半はコロナ対策を含む予算審議が行われたが、対コロナ経済対策は70点と厳しい評価を下す党幹部もいた。第一次補正予算をやり直すという失態もあった。アベノマスク、持続化給付金、Go Toキャンペーンの委託先の問題なども存在する。細川氏は、安倍政権の政策に疑問符を付けざるをえない状況であると思うが原因は何か聞いた。

下村氏は、「世界と比べると日本のコロナ対策は、政府だけでなく国を挙げて大成功している」とした上で、「ワクチン、治療薬がないので、三密を防ぐために経済を止めなければならなくなった。第1次、第2次補正予算で総額230兆円近く、GDPの4割を出しており、これは世界でも突出している規模だ」と述べ、政府の経済対策を高く評価した。

その理由として下村氏は、海外のように国民を法律で強制することなく、ただの自粛のお願いであるにもかかわらず、日本の感染者数はヨーロッパの10分の1、アメリカの100分の1であり、死亡者も少ない事を挙げた。

一方、内閣支持率下がったことについては、「国民ひとりひとりの立場からみると、『あまりにも遅いんじゃないの』と国民が感じていることが原因だ」と述べ、「それぞれ理由があるため検証する必要がある」と述べ、特別定額給付金や持続化給付金などの支給にスピード感が無かった原因を検証すべきとの考えを示した。

一方下村氏は、それに関連し、世界104カ国では憲法に緊急事態条項があるが、日本はないことを挙げた。「第2次、第3次感染、また新たな感染症が起きた時には、スピーディーに対処できるよう、検証をしながら緊急事態のあり方を含めて整理する必要がある」と述べ、憲法に緊急事態条項を盛り込むことを今後憲法審査会などの場で議論する必要があるとの考えを示した。

 

■ 新たな議員連盟について

先週、下村氏は稲田朋美幹事長代行らと、新たな国家ビジョンを考える「WithコロナAfterコロナ新たな国家ビジョンを考える議員連盟」を立ち上げて会長になった。細川氏は、この議員連盟の立ち上げについて「党内でも安倍政権のコロナ政策の執行能力にかなりの危機感があることの表れか」と聞いた。

これに対し、下村氏は安倍政権を批判しているわけではないと否定した。自民党だけで138人の国会議員、47人が代理で、合計185人の驚異的な数の議員が集まった。

下村氏は「みんな危機感を持っており、それは安倍政権がなんとかということではない。情報公開や説明は政府の責任であるとし、政治家の責任は5年先、10年先をよりよい日本のためにどうして行くかというビジョンを持つことだ」と述べ、「政治家は国民が困る前にどう日本をよくしていくか、早めのビジョンを用意して自民党や政府に対して提案して行く」ことが役割だと述べた。

▲写真 ⓒJapan In-depth編集部

■ 9月入学について

細川氏は9月入学において「現場の先生の負担は大きくなるとしても、長い目で見ると今回やってしまうのは良かったのでは」として下村氏に、9月入学について改めて積極的に議論していくことになるか、聞いた。

下村氏は「議員連盟」の14の国家ビジョンの中には教育も入っており、「ピンチをチャンスに変えるきっかけとしてコロナを見るべきだ」と述べた。

今回の9月入学案は「予測不可能なコロナの状況でカリキュラムが終わらない懸念からの『止むを得ず9月』の案と、もう一つ、『積極(的)9月』という案があった。(後者は)コロナ前から存在していた日本の教育のマイナス部分を一気に変える(という発想から出てきた)案だ」と述べ、9月入学の実現に向け今後も活動を推進していく考えを示した。一方で、(そのためには)法律を30本くらい変えなくてはいけないので、直ぐに実行は出来ないと述べた。

また、下村氏は意外と9月入学に対して親からの反対が多かったと述べる。「小学校へ行く前のお母さんからの反対が毎日20−30件来た」と述べ、その理由として、計画的に4〜6月に産んだ場合、(9月入学だと)今度は早生まれになることへの懸念があることを明らかにした。

細川氏も、キャリアプランへの影響を懸念する母親たちもいた、と述べると共に、「それを言っていたら、いつまでたっても世の中は変えられない。こどもは意外と早く順応できるから、あとは大人の覚悟である」と述べ、9月入学の実現は必要との考えを示した。

 

■ 比例代表の制限について

自民党のベテラン議員らから、衆議院比例代表の「73歳定年制」撤廃を求める声が上がっていることについて、細川氏は現時点でどのような考えをもっているかを下村氏に聞いた。

これに対し下村氏は、73歳以上の衆議院議員は自民党だけで25人おり、撤廃してほしいという要請を受けていることと、青年局からは今の制度を堅持してもらいたいという声がある、と述べた。

また、去年7月の参議院選挙の比例では、71歳を超えると公認対象から外すという党則があると述べた。しかし、支援団体などから余人をもって代えがたいという申し入れがあればこの党則の例外とすることがあることも紹介した。

「去年の参院選では(71歳を超えていても)対象から外した人の方が多く、彼らは皆当選した」と述べた。「ただこれは党内議論が必要な話だと思うので、今すぐは決められないテーマだ」とも述べ、党則の撤廃には慎重な姿勢を示した。

(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2020年6月20日放送の要約です)

 

「細川珠生のモーニングトーク」

ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分~7時20分

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