「希望する国民がワクチン接種できるスキームが必要」自民党政調会長下村博文衆議院議員
細川珠生(政治ジャーナリスト)
「細川珠生モーニングトーク」2021年1月23日放送
Japan In-depth編集部(坪井恵莉)
【まとめ】
・新型コロナ、感染症対策と経済対策を両立させる。
・2月のワクチン接種に向けて準備を加速させる方針。
・東京オリンピックは開催を前提に大会規模を検討。
今回の「細川珠生のモーニングトーク」では、自民党政調会長の下村博文衆議院議員をゲストに招いた。第3波の拡大に歯止めがかからない新型コロナ対策を中心に、ワクチン接種や東京オリンピック・パラリンピックに向けた準備について政治ジャーナリストの細川珠生氏が話を聞いた。
■菅内閣の支持率急落
各紙の世論調査で菅内閣への支持率が急落している。細川氏は、発足から半分近くの水準に低下している現状に、党幹部としてどのように考えているのか聞いた。
下村氏は「国民の皆様のコロナに対する不安、対応への不満が全て支持率に表れていると思う。初めての対応をどうするかということで、試行錯誤をしており、全てに『こうしたら上手くいく』という処方箋を持っているわけではない。しかし出来るだけ国民の皆様の不安や将来への見通し等、丁寧に対応していきたい」と述べた。
国民の不満はどこにあるのか細川氏が聞くと、下村氏は「感染症対応と経済対応のバランスではないか」と述べた。昨年の緊急事態宣言では全国一斉の休校・休業要請を行い、感染症の抑え込みに成功したものの、経済的な打撃も深刻だった。下村氏は「ずっとブレーキを踏むのではなくて、アクセルを踏みながらブレーキを踏むというハンドリング(を求められている)。相手は感染症だからどこでアクセル・ブレーキを踏むかというのはズレもあるし、国民から見れば『大丈夫なの』という思いだと思う」と説明した。
■ワクチン接種に向けた準備
ワクチン接種に対する不安もある。政府は2月頃から医療従事者を中心にワクチン接種を開始する方針で、1月18日にワクチン担当大臣として河野太郎衆議院議員が就任することが決定した。細川氏は「(予定の)約一か月前の今、担当大臣を決めて間に合うのか」と政府の対応に懸念を示した。
下村氏は「今までももちろん(準備は)やってきている」と前置きしたうえで、今回ワクチン担当大臣を新設した理由について「一気呵成に(ワクチン接種に向けた)対応を進める」ためだと説明した。
アメリカの製薬大手ファイザーからのワクチン提供は既に合意がなされているものの、それ以外の製薬会社では依然として提供合意の目途が立っていない。また既にワクチン接種が始まっているアメリカやイギリスでは、計画に遅れが出ている。
下村氏は「実際に接種を進めるのは地方自治体だが、きめ細かい準備は自治体でまだできていない。全体的な監督として、チェックをしながらフォローアップをしていく」として、「組織的になおかつ出来るだけ早く、ワクチン接種を希望されている国民が接種できるスキームを作る必要がある」と接種開始に向けて政府全体で動きを加速させていかねばならないとの考えを示した。
■東京オリンピック開催に向けて
ワクチン接種はオリンピックの開催判断にも影響を与えそうだ。細川氏は、下村氏が1月20日の記者会見で「中止は100%ない」と発言した真意について聞いた。下村氏は「『組織委員会の中で中止を考えているという風な話も聞こえてくるがどうか』という質問に対して『組織委員会で一部であっても中止を考えているということは100%ない』と回答した」と振り返った。
さらに「日本政府、組織委員会、IOC(国際オリンピック委員会)でも今年7月に東京でオリンピック・パラリンピックを開催するという前提だ。国民の多くが不安を持っていることは良く承知しているが、今月中に世界陸上大会をドバイでやる。旧来と同じようにやるのはコロナ禍においては難しいかもしれないが、どれくらいのレベルだったら世界や国民に納得してもらえるか議論している」と述べた。
仮に感染力が非常に強い変異種が生まれたら中止の可能性はあるのか細川氏が聞いたところ、下村氏は「その場合でも変異種が市場で拡散しないような対応をどうするかが問われている」と述べた。
下村氏はインフルエンザと新型コロナウイルスの違いはワクチンの有無だと説明し、「インフルエンザでも日本で年間1千万人以上が感染し、多いときは5000人が亡くなっているが、予防接種のワクチンがあるから対応できているということになる。同じように、新型コロナウイルスも消滅させることはできないが、克服できるような医学的・科学的根拠を作れば開催はできる」との考えを明らかにした。
細川氏は「検討しなければならないことは多いが、ひとまずは11都府県に出されている緊急事態宣言が早く解除されるように都民の一人として願っている。早く色々な人と関われる時間が来て欲しい」と締めくくった。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2021年1月23日放送の要約です)
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。