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Go To祭り 次は商店街だ!

安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・「Go To キャンペーン」事業の第3弾、「Go To商店街」が開始。

・1団体当たり上限300万円複数申請は500万円上乗せ1申請当たり上限最大1400万円

・商店街再生に繋がるものにするため、検証と今後の施策が必要。

 

中途半端なままどんどん突き進む「Go To キャンペーン」事業。第3弾が発進だ。その名も「Go To商店街」。経済産業省が10月16日に発表した。

 

■ キャンペーンの概要

経産省によるとその狙いと概要は以下の通り。

狙い:

本事業は、3密対策等の感染拡大防止対策を徹底しながら、商店街がイベント等を実施することにより、周辺地域で暮らす消費者や生産者等が「地元」や「商店街」の良さを再認識するきっかけとなる取組を支援するもの。

 

事業のイメージ:

地域の期待に気づく

(例)

 

地域、商店街の良さを伝える

(例)

 

成果を次につなげる

(例)

 

その上で、以下のGo To商店街における感染症対策の徹底を求めている。

 

事業対象は:

商店街組織(任意団体含む)、商工会、商工会議所、温泉街、飲食店街、 民間事業者など。

 

対象事業:

となる。

 

対象は「イベント等を実施するために必要な経費」とされ、以下の図の通り広範囲にわたる。

図)Go To 商店街事業の募集概要 出典)経産省

 

支援額:

1団体あたり上限300万円複数で申請する場合は500万円の上乗せがあり、1申請当たりの上限は最大1400万円となる。

 

経産省は、第1弾として34事業を採択したと発表、50団体が参加し、10月19日から順次、各地で取り組みが始まる予定だ。

 

写真)東京都品川区戸越銀座商店街 出典)flickr:Michael Vito

 

■ キャンペーンの効果は?

たしかに新型コロナは商店街にとって打撃に違いない。しかし、コロナ以前から商店街やアーケードは消えつつある。理由は明確だ。一つは、大型商業施設やドラッグストア・家電などの全国チェーン店、そしてコンビニなどに取って代わられた為であり、二つ目には経営者が高齢化し後継者がいないため廃業が相次いでいること、三つ目には従来から同じ対面販売などを続けているために新型コロナによる急激な客の減少や消費行動の変化に対応できていないからだ。いまさら、こんなカンフル剤を打ってどうにかなるものだろうか?

 

東京都渋谷に7月開業した低層複合施設「RAYARD MIYASHITA PARK(レイヤードミヤシタパーク」を訪問した。もともとは老朽化した宮下公園があった場所を三井不動産が再開発したもので、全長が約330mもあり、屋上が公園で、商業施設やホテルと一体となっている。

写真)RAYARD MIYASHITA PARK 出典)三井不動産

 

なにより目を引くのが全長100メートル、敷地面積1000㎡、バラエティ豊かな全19店舗が集結する「渋谷横丁」だ。総席数は店内1200席、テラス300席の計1500席を誇る。北海道から九州・沖縄までご当地フードが楽しめる。午後3時とまだ早い時間から店内はお客さんで一杯だ。路地の賑わいが復活し、渋谷の新しいスポットとなっている。再開発のモデルとして注目されている。

写真)渋谷横丁 ⒸJapan In-depth編集部

 

ここまでの巨大資本による再開発とまでは行かなくとも、地元の商店街が復活した例は他にもある。香川県高松市の中心部にある「高松丸亀町商店街」は、再開発にあたり、全国で初めて「所有権と利用権の分権」というユニークな事業スキームを採用した。

 

地権者は土地を所有し続け、まちづくり会社と定期借地権契約を結び、土地を貸し出し、建物はまちづくり会社が所有し運営するものだ。土地費を事業費に計上しなくてすむというメリットがある。

写真)高松丸亀町壱番街前ドーム広場 提供:(公社)香川県観光協会

 

また、「オーナー変動地代家賃制」というものを採用した。地権者はテナントの売上から家賃収入を得るが、テナントの売り上げによって収入は増減する。したがって、地権者、テナント、まちづくり会社が三位一体となって商店街全体の魅力向上と集客に努めなければならないシステムとなっているのだ。

 

「GoTo 商店街」を否定するものではないが、一過性のもので終わるのでは真の商店街再生など望むべくもない。シャッター街の再生は簡単なものではない。今回のこのキャンペーンが、商店街再生のきっかけになるのかどうか、経済産業省はしっかり検証し、今後の施策につなげるべきだろう。

トップ画像)GoTo商店街ロゴ 出典)経産省