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.経済  投稿日:2020/7/24

次は「Go To イート」それでいいの?


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

 

【まとめ】

・「Go To Eat(イート)」キャンペーン、8月下旬スタート予定。

・「プレミアム付商品券」と「オンライン飲食予約」でのポイント付与からなる。

・個別の対策よりも、消費税減税を考えた方が合理的。

 

政府の業種別景気刺激策はまだまだ続く。迷走「Go To トラベル」の次は、「Go To Eat(イート)」だ。「皆の衆、外食せい!」というわけだ。8月下旬からスタート予定。予算は767億円だ。

 

■ 「Go To Eat」キャンペーンとは

農林水産省が所轄なので、説明してもらおう。その目的は以下の通り。そう、新型コロナウイルス感染症の拡大とそれによる行政からの(店と消費者と両方に対しての)自粛要請で大打撃を受けている飲食業者を救済するものだ。

▲図)Go To Eatキャンペーン事業の目的 出典:農水省

どのような飲食店が参加出来るのだろうか?農水省によると、「業界ガイドラインに基づき、感染予防対策に取り組んでいることを条件とし、その取り組み内容を掲示していただきます」ということらしい。当たり前といえば当たり前。「三密」を放置しているような飲食店は、はなからダメに決まってる。

キャンペーンの中身だが、2種類からなる。

一つは、「プレミアム付商品券」だ。地域の飲食店で使える食事券で、購入額の25%分を上乗せするもの。つまり、1万円の商品券を買えば1万2500円分使えるわけだ。お得かも。ただし、1回の購入2万円の購入制限がある。販売は2021年1月末まで、有効期限は同年3月末までとなっている。業者は都道府県、政令指定都市及び特別区単位で公募する。

▲図)プレミアム付食事券 出典:農水省

もう一つが、「オンライン飲食予約」だ。オンライン飲食予約サイト経由で、食事を予約した人に、次回以降に飲食店で使えるポイントを付与するもの。

ランチタイムは500円分、ディナータイム(15:00~)は1000円のポイントを付与する。ポイントの上限は1回予約あたり10人分(最大10000円分のポイント)。ポイントの付与は2021年1月末まで、利用は同年3月末までとなる。

▲図)オンライン飲食予約 出典:農水省

現在、食事券発行事業者とオンライン飲食予約サイト事業者などを公募中(7月21日~8月7日)だ。「プレミアム付食事券」については、準備が整った地域から順次実施する。「オンライン飲食予約」によるポイント付与は「状況を踏まえて開始時期を検討」としている。

 

■ 「Go Toキャンペーン」の限界

これまた「Go To トラベル」同様、もめなければいいのだが、それは楽観的に過ぎるかも知れない。

そもそも、あらゆる産業がコロナによりダメージを受けているのに何故特定の産業に利するような政策を打ち出すのか?

こんなキャンペーンをやることで、どれだけの工数が政府内で発生し、税金がそこに費やされるのか、考えただけでも無駄な気がする。

しかも、最近の感染拡大は、飲食店周りで起きている可能性が高い。いわゆる「夜の街」で「三密」回避がなされているとは到底思えない。そもそも客が「」になるために行くところだからだ。それをどうするのか、対策が全く見えてこない。

▲写真 イメージ 出典:PAKUTASO

通常の飲食店でも、「来客の体温管理」や「手指消毒」、「ソーシャルディスタンスの確保」が不十分なところは多い。実際、マスクしてないのに大声で話すような客も多くなっている。飲食店サイドも、感染防止対策を徹底しないと、やがて自分で自分の首を絞めることになるだろう。お上に助けてもらうという発想ではなく、自分たちで如何に需要を創造していくかを考えるタイミングに来ている。

例えば、コロナ後すっかり敬遠された「ブッフェ」だが、一部のレストランでは、席数を半減させるだけではなく、感染リスクを最小限にするために、客が料理をブッフェボードに取りに行くのではなく、店舗スタッフがワゴンに料理を載せてテーブル席を回る方式に変えた。もはやそれは「ブッフェ」ではない気もするが、ウィズコロナの時代では、サービスの形を根本から変えなければ生き残れないのだ。

▲写真 ブッフェワゴン 提供)品川プリンスホテル

 

■ 消費税減税考える時

「Go To キャンペーン」は、まだまだ続く。イベントなどのチケット代を補助する経済産業省の「Go Toイベント」(エンターテイメントキャンペーン)や商店街振興の「Go To商店街」(地域振興キャンペーン)が控えている。官僚の創造力には頭が下がる。

政府は、個別にキャンペーンをやり、その度に業者と消費者を振り回すのは止めてもらいたい。

消費を喚起したいなら、消費税減税が手っ取り早いだろう。一旦上げた消費税を戻すのは事務コストが半端ない、と政府は判で押したようにいうが、この「Go To キャンペーン」にかかっているコストもかなりのものだと思う。消費者にも関連業者にも負担を強いているという意味において、むしろ「筋が悪い」政策だ。

消費税を期間限定で一気に0%にする。半年後は5%、その次は・・・と段階的に上がることが分かっていれば、人は消費に走るはずだ。

今政府が行っている景気刺激策は本質的なものになっていない。旧態依然とした業界にイノベーションが起こるような政策誘導なり、補助金なりを考えてもらいたい。一時的なカンフル剤は意味がない。なぜなら、コロナ禍はまだまだ続くからだ。

繰り返すが、あらゆる業界はこれまでの業態を大きく変革しなければ存続出来ない。「密」を前提とした商売は消滅する運命なのだ。ならば、それに代わる価値を生み出さない限り、座して死を待つことになる。

お上頼みでない、経営者の知恵が試されている。

トップ写真:イメージ 出典:Wallpaper Flare


この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト、産業能率大学客員教授。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。


1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。


1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。


2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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