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日常と活気を取り戻すフランス

PARIS, FRANCE - MAY 22: (L-R) Miss Montmartre 2021 Laura Druot, Miss Ambassadrice de Paris 2021 Julie Bourgeois, Madame France 2019 Abigail Lopez Cruz and Fashion designer Ekaterina Cherkasova attend the Make Art Covid Art Celebration of Champs Elysees Terraces Reopening at Arc de triomphe and Anath Tordjman’s RoofTop Cocktail on May 22, 2021 in Paris, France. (Photo by Foc Kan/WireImage)

Ulala(著述家)

フランスUlalaの視点」

【まとめ】

・フランスが外出制限を緩和。町中に日常と活気が戻りつつある。

・順調なワクチン接種はさらに加速化へ。コロナ後見据える動き活発化。

・東京五輪への参加も意欲的。マクロン大統領は開会式出席を表明。

 

フランスの新型コロナウイルスの感染状況は、3度目の外出制限をした結果、1日あたりの新規感染者数は1万人台に落ち着き、一時期は6,000人を超えていた集中治療室の入院患者数も3,544人(22日時点)と減少した。

そこで、現在は段階的に外出制限の緩和が行われているところだ。新型コロナワクチンの接種も急速に進んでいるなか、フランスは、すでにアフターコロナを見据えた未来に向けて前進していることが感じ取れる。

■ フランス人の59%「外出制限の緩和は成功する」

フランスでは、5月19日から外出制限が第2段階に緩和された。それにより、バー、レストランのテラス営業が再開され、美術館、映画館、小売店やスポーツ観戦(人数制限あり)なども再開されたため、現在すでに町中は日常を取り戻しつつある。また、この緩和に対しての国民の反応も良い。

5月21日に出されたOdoxa-Backboneによるアンケート結果によれば、59%のフランス人は、この外出制限の緩和は成功するだろうと考えている。フランス人の44%が、フランスは、新型コロナウイルスの危機から抜け出していると確信しており、制限解除が早すぎるため感染再拡大が起こるかもしれないと心配しているのはわずか29%であった。

Journal du DimanchのIFOP世論調査によれば、エマニュエル・マクロン大統領ジャン・カステックス首相の人気度は、5月にそれぞれ3%及び4%と増加。40%の国民が大統領の行動に満足しており、首相の人気度もこの6カ月の間では最高値を出したのだ。

▲写真 ジャン・カステックス首相(2021年3月17日)。マクロン大統領とともに人気度上昇中という。 出典:Chesnot/Getty Images

■ 順調なワクチン接種

このように、外出緩和が妥当であり、今後、感染再拡大が起こらないだろうと考える背景には、フランスでは予防接種が順調に進んでいることもあげられるだろう。

現在、33.71%のフランス人が最低でも1回のワクチン接種を完了しており、かなり順調にすすんでいる。そのため、他の年齢のワクチン接種のスケジュールを繰り上げて、さらに加速させるとした。当初は18歳~49歳の予防接種開始日は6月15日に設定されていたものが、5月31日からに変更され、また、優先の専門職(教師、警察官、レジ、バスなどの公共機関勤務、レストラン、etc)の職業従事者は5月24日から接種できることとなった。

▲写真 パリの大規模ワクチン接種センター(2021年5月12日) 出典:Kiran Ridley/Getty Images

5月の1,600万回に対して、6月には3,200万回のワクチン投与が見込まれており、8月末までには、大部分のフランス国民のワクチン接種は終わる予定だ。9月には感染拡大を気にしなくてもよい生活が送れると言われている。

また、2021年7月1日までには、欧州連合(EU)は、新型コロナウイルスの検査結果やワクチン接種の有無や、感染からの回復状況を証明する「健康パスポート」を正式に発表する予定だ。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、「夏までに運用を始めることを約束し、これで欧州市民は旅行を安心に再開することが可能になる」とコメントした。

ワクチン接種が進み、健康パスポートの運用が始まることにより、フランスでも、7月には外国人の観光客の受け入れも再開し、国外に旅行できる体制が整う予定となっている。

■ フランスは、東京五輪・パラリンピックにも意欲的

このように、海外への行き来を再開するフランスの政府およびスポーツ関係者は、東京五輪・パラリンピックにも意欲的だ。しかしながら、フランスのテレビではこの1週間ほど、「日本国民が東京オリンピック開催を拒否している」という映像が各局で流れていた。

そこには、黙々と東京オリンピック会場内で何事もないように練習している選手たちと対照的に、「IOCはマフィアだ!」「政府に押し付けられているのだ!」「外国人がやってくると感染が拡大する!」と言いながら、東京オリンピック開催反対デモをしている活動家たちの姿が映し出されていたのだ。

こういったことを受け、フランスをはじめとする世界のオリンピック関係者は、選手のために、そして3年後のパリ大会につなげるために、なんとかオリンピック開催に反対している日本国民に納得してもらえる状況にしようと努力を始めている。

フランスのマラシネアヌ・スポーツ担当相は、「一部の日本人にオリンピックは歓迎されていないが、日本の方々に安心していただくためと、選手のために、参加選手全員が予防接種する」ことを明言した。参加選手のワクチン接種は進んでおり、良い方向へ向かっているという。

▲写真 エマニュエル・マクロン大統領(2021年2月1日 パリ) 出典:Antoine Gyori/Getty Images

また、7月23日の開会式には、3年後のパリ大会の開催国としてマクロン大統領が出席することが発表された。フランスは東京の次の2024年パリ五輪・パラリンピックの開催国である。マラシネアヌ担当相は、「パリ大会のために聖火を引き継がなければならない」と述べて、大会の期間中、自身と、ブランケール国民教育・スポーツ相が時期を分けて東京を訪れると述べた。

■ コロナ危機後を見据えるフランス

フランスでは、現在コロナ危機が去った世界を見据えて動き始めている。すでに7月1日から旅行する人々の姿、9月からの普通に戻る日常生活に向けて、また、3年後のオリンピック・パリ大会まで視野に入れて活動しているのである。そういった未来を実現するためにも、ワクチン接種や健康パスポートの制定に注力し、前進し続けているのだ。

そんな現在のフランスは、とても活気に満ち溢れているようにも感じる。国民の間にも、長かった制限ある生活がとうとう終わるという、希望の光が見えてきているのかもしれない。現在、日本でも急速にワクチン接種が進んでいる。日本も、現在のフランスのように活気ある生活を迎えるのも、そう遠くはないかもしれない。

<参考リンク>

Covid-19 : six personnes sur dix pensent que la France va réussir son déconfinement, selon notre sondage/新型コロナ: 世論調査によると、10人中6人がフランスは外出制限緩和に成功すると考えている。

Jeux olympiques de Tokyo : Roxana Maracineau rassurante quant à la tenue de la compétition/東京五輪:ロクサーナ・マラシネアヌ・スポーツ担当相、競技について再確認

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トップ写真:凱旋門前で行われたシャンゼリゼのテラス再開を祝うイベント(2021年5月22日 仏・パリ) 出典:Foc Kan/WireImage/Getty Images