カナダ「トラック・デモ」仏に飛び火
Ulala(著述家)
「フランスUlalaの視点」
【まとめ】
・カナダでコロナ規制反対の「自由の車隊」デモが欧州に飛び火。各地が対応迫られる。
・触発されたフランス・パリでは7600人超が集結し車が道路を占拠。警察は催涙弾も投入。
・デモは「黄色いベスト」運動の様相。参加者の共通点は「うんざり」感か。
フランス・パリ中心部で12日、カナダで行われた新型コロナウイルス規制に反対するトラック運転手による「自由の車隊」デモに触発された人々が集会をおこなった。
この集会については、フランスのクレマン・ボーヌ欧州問題担当相が9日に、「それは恥と利己主義の列」彼らは「愛国者」ではなく「無責任者」です。「市民の生活を妨害しておきながら自由を装うとは矛盾している」と、非難しており、パリ警察は10日にはすでに、参加者による道路の封鎖を禁止すると警告していた。そして当日には、警官7200人近くが動員され、装甲車や放水砲も配備された。
また、「自由の車隊」を呼びかけるfacebookページには、一時は36万人が登録していたが、フランスでも他の国と同様に、「自由の車隊」に関連するグループ、個人アカウント、ページが次々と削除された。これらはいくつかのルールに違反しており、特にスパム行為が問題とされたのだ。
しかしながら、デモ禁止令や、マクロン大統領の最大限冷静をとの呼びかけにもかかわらず、内務省の発表によれば、12日には各地からパリに7600人以上が集まり、パリの凱旋門の前をデモ隊の車が占拠し交通が妨害された。
シャンゼリゼ通りでは、「マクロン辞職しろ」と連呼する声が響き、警察の車への妨害も行われた。また、まかれた催涙ガスは通り沿いのレストラン内にも影響を及ぼして、テラス席にいた客が避難する姿も見られた。最終的には、警察との衝突は9時間におよび、午後10時過ぎまで続いたのだ。
▲写真 シャンゼリゼ通りは、デモ隊を解散させるための催涙弾で覆われた。(2022年2月12日 仏・パリ) 出典:Photo by Sam Tarling/Getty Images
パリ警察本部によれば、この日パリで97人が逮捕され、513人に罰金が科されたとしている。(参照:パリ警察本部ツイッター)
■ どちらかと言えば、黄色いベスト運動に近い動き
かなりの警戒をしたのにもかかわらず、このような激しい展開になった「自由の車隊」の集会だが、参加している人々はどういった人たちだったのだろうか。新型コロナウイルス対策の規制に反対する人たちによるものとされているが、どちらかと言えば黄色いベスト運動に近い集まりだとも言われている。集会で連呼されていた「マクロン辞職しろ」というのも、黄色いベスト運動のメンバーが中心になっていた。
実際に、SNS上には「自由の車隊」の集会の主催者の1人として黄色いベスト運動のシンボルとして活躍したジェローム・ロドリゲス氏が名前を連ねている。(参照:『「黄色いベスト運動」の人々(下)』2019年3月30日 )
ロドリゲス氏は、1月23日にベルギーの首都ブリュッセルで行われた大規模な新型コロナウイルスの感染防止策やワクチン接種に抗議するデモにも参加しており、積極的な活動を各地で繰り広げている人物だ。
この日、車でブロックされたシャンゼリゼ通りにもその姿を現したが、最終的には、シャンゼリゼ通りから一歩入った道にあるエリゼ宮殿の近くで逮捕された。
▲写真 黄色いベスト運動で中心的に活動したジェローム・ロドリゲス氏(眼帯をし、拳を上げている人物)2019年2月2日 仏・パリ 出典:Photo by Omar Havana/Getty Images
フランス・アンフォのマシュー・スラマ氏によれば、集会への参加者は多種多様にあふれているという。自由の問題であれ、購買力の問題であれ、民主主義の問題であれ、みんなが現状に「うんざり」しているということ以外、共通点がない集団だ。なかには、ワクチンパス反対者もいれば、極右、極左、右派、左派、なんでもありで、陰謀論者もいるが、陰謀論者だけとは言い切れない。
要するに、黄色いベスト運動時に爆発した時の一般的なうんざり感、特に社会的なうんざり感が再び表れている結果ともみられている。特に、この2年間は新型コロナウイルスの感染拡大のために、強制的な規則とともに特別な期間を過ごしてきたという事実も大きく影響を与えているのは間違いない。
パリでのデモを終えた「自由の車隊」は、その後、14日のデモに向けてベルギーを目指した。ブリュッセル市長も、車列のブリュッセル進入を禁止すると発表。
カナダで始まった新型コロナウイルス規制反対デモが飛び火した欧州では、現在、各国が対策を強いられているところなのである。
<参考>
・『≪自由の車隊≫ エリゼ宮付近で「黄色いベスト」運動のジェローム・ロドリゲスが尋問を受ける』
・『“自由の車隊” マシュー・スラマによれば、「うんざり」以外に共通点なし』
トップ写真:カナダの「トラック・デモ」に触発され、政府のコロナ規制に反対する車両デモは凱旋門前でも行われた。(2022年2月12日 仏・パリ) 出典:Photo by Sam Tarling/Getty Images
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この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー
日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。