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.国際  投稿日:2021/8/3

仏、健康パスとワクチン接種


Ulala(著述家)

フランスUlalaの視点」

【まとめ】

ワクチン接種により重症化するリスクが激減したというデータが明らかになった

健康パスによるチェックが必要になったことで、密になりにくくなっている

ワクチン接種をしていない若者を中心に義務を課されることに反対している

 

現在、フランスでは、一回でもワクチン接種を受けているのは、人口の62.20%。完全接種は51.94%となっている。すでに人口の半分が完全接種しており、十分な成果をあげているとはいえるものの、まだまだ目標の80%には届いていない。しかしながら現時点で、少なくともワクチン接種をした人については大多数に対して重症化を防げていることが、フランス厚生省の統計サービスのDreesによるデータから見えてきた。

ワクチン接種の効果

5月31日から7月11日までのDreesのデータによれば、コロナに感染し入院した患者は、なんと84%がワクチン未接種者であった。また、重症患者、死亡者においてもそのほとんどは、ワクチン未接種者でしめられていた。

具体的な割合は下記になる。

ワクチン接種していなかった場合
入院患者 84%、重症患者 84%、死亡者 78%

ワクチン1回接種した場合
入院患者 9%、重症患者 8%、死亡者 11%

ワクチン完全接種した場合
入院患者 7%、重症患者 7%、死亡者 11%

(引用 https://solidarites-sante.gouv.fr/IMG/pdf/2021-07-23_-_sivic-sidep-vacsi_premiers_resultats_-_drees-2.pdf)

ワクチン接種をしても完全にコロナ感染から逃れられるわけではないが、ワクチン接種を することで重症化するリスクが激減することがこの数字を見てもわかる。

また、現在フランスでは第4波がきており、新規感染者数が2万人以上の日がつづいているが、第2波、第3波に比べて入院患者は少ないものの 、やはりワクチン接種が進んだ結果と言えるだろう。

健康パス(パス・サニテール)の導入

フランスではワクチン接種を促進すると共に、感染自体を減らす目的で健康パス(パス・サニテール)の導入がはじまっている。すでに、50人以上を収容できる施設などを利用する際には、ワクチン完全接種か48時間以内の陰性の証明が必要になることが発表された。

また、28日には、ブランケール国民教育相から、新型コロナウイルス対策として9月からの新学期に小中高校で適用する新たな措置もあきらかにされた。健康パスは、学校に行くのには必要ないが、ワクチン接種対象となっている12歳以上にあたる中高生のクラスで感染者が出た場合には、ワクチン未接種の接触者のみ、7日間、自宅で遠隔授業を受けることに なる。以前は、クラス内で感染者が出た場合、接触者全員が自宅待機となったが、ワクチン接種を していれば学校に通い続けら れるようになるのは大きな変化だ。

職種によっては、特別措置も検討されている。例えば、トラックの運転手がシャワーや食事に立ち寄る休憩所に関しては、健康パスを適用しないという見通しだ。現時点のところ、トラックの運転手でワクチンを完全接種しているのは15%のみ。しかし、長距離の輸送の間に休息をとる必要があり、それを妨げることは避けたいとしているのだ。8月5日の憲法会がこの例外をどのように判断するかが待たれるところである。

しかし、基本的に、買い物など日常生活を送る分にはチェックを求められることはない。仕事場でのチェックは8月末からに延期され、8月末までに関係するのは、50人以上を収容できる、映画館、スポーツジム、アトラクションなどの施設や公共交通機関などだ。ようするに、遊びに行こうとする人が集まる場所が主にチェック対象なのである。

だが、まだワクチンを 完全接種していない人が多かったり、どういった書類が必要になるかを把握していない人もいたりする ため、現在はバカンス先でいざ遊園地に入ろうと思っても、健康パスをもっておらず入場を断られる場合も少なくない。その結果、場所により20%~70%の利用客が減少したところもあり、経営者には痛手となってはいるが、反対に言えば健康パスによるチェックが必要になったことで、密になりにくくなっているようだ

健康パスをもっていない場合でも、その場で準備できる方法はもちろん用意されている。特に、抗原検査を受けられる 薬局の数も増加し、エッフェル塔をはじめとする一部の大型施設では、抗原検査を できる場所が併設されているところもあるのだ。なお、気になる検査にかかるお値段は、今後は有料になる予定とはなっているが、現時点ではフランス人は保険で100%カバーされ無料だ。ただし、外国人は有料である。

健康パス・ワクチン接種に対するデモの様子

写真)健康パス・ワクチン接種に対するデモの様子(2021年7月17日) 出典:​​​​​​Kiran Ridley/Getty Images

健康パス・ワクチン接種に反対しているのは誰?

このように、感染拡大の 防止目的で導入された健康パスであるが、一部の国民は、健康パスまたは、ワクチン接種自体に反対しており、毎週末、反対デモが行われている。

それでも、7月16日に行われたFranceinfo/LeParisienの世論調査によれば、フランス人の62%が公共の場所に入るための健康パスチェックに賛成であり、69%が医療従事者に対するワクチン接種義務に賛成している。また、7月30日に行われたTF1 / LCIの調査においても、反対デモを支持 しない人は51%であり、支持 する人は40%と、健康パスに賛成する国民の方が多いようだ。

では、反対している人はどのような人たちなのであろうか?年齢別に見れば、65歳以上の反対デモへの支持率は18%に対し、25歳~34歳の若者は57%。支持している人は、予防接種を受けていない人々の92%とほとんどだが、逆に完全に予防接種を受けた人では反対者は19%しかいない。また、ワクチン接種自体への反対は33%であったが、措置を課すこと自体を拒否している人が65%と大半を占めている。

ようするに、フランス国民は、大多数が健康パスの導入に賛成しているが、ワクチン接種を していない若者を中心に、国民の約26%が義務を課されることに反対しており、約13%がワクチン接種に不安をもっており、その国民が反対デモを行っているようだ。

デモの参加者の中には、黄色いベスト運動参加者もわずかながらも含まれている。黄色いベスト運動中に片目を怪我したことでも有名な、指導者の一人であったジェローム・ロドリゲス氏が演説する姿もあった。また、反マクロン派も多く含まれている。24日は、パリでは3か所でデモが行われていたが、その中でも極右の国民連合党の元幹部フロリアン・フィリポ氏が開催したトロカデロの集まりが一番規模が大きい集まりとなった。フィリポ氏は、演説や、インタビューの中でも何回も健康パスの義務を課したマクロン大統領の辞任を訴え、31日も同様に反対デモを開催している。

31日のデモは、パリ、トゥーロン、ボルドー、マルセイユ、ニース、ナント、ポーなど、フランス各地で行われ、全国で20万人がデモに参加した。24日の16万人よりも参加者が増加している。

しかし、今回も、デモ隊によるいくつかの行為が問題となった。モンペリエでは、検査している薬局を、「暗殺者」「協力者」と叫び、検査用に設置されているテントを 撤去するように強要。この様子を見た、アタル報道官は、ツイッターで動画を引用しながら非難した。

そして、「我々は、屈しない。」とし、検査に協力してくれる薬局に感謝を示し、サポートすることを約束したのだ。

アタル報道官によれば、これまで審議・修正された法案が8月に開かれる国の憲法会により合憲とされれば、8月9日から施行予定だ。今は、ただ、憲法会の判断を待つのみの状態なのである。

参考資料

世論調査:フランス人の2人に1人がサニタリーパス反対運動を「理解」している

健康パス:トラック運転手用休憩所は例外の可能性

Covid-19: フランス人の10人中6人以上が、健康パスや介護者へのワクチン接種の義務化に賛成しているという調査結果が出ました

健康パスに反対するデモ:内務省によると、約204,090人が街頭に

トップ写真:パリにあるワクチン接種センター(2021年5月12日) 
出典:Kiran Ridley/Getty Images




この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

Ulala

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