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韓国大統領選直前世論調査 野党候補優勢

SEOUL, SOUTH KOREA - MARCH 02: (L to R) South Korea's presidential candidates, Sim Sang-jung of the opposition Justice Party, Yoon Suk-yeol of the main opposition People Power Party, Ahn Cheol-soo of the opposition People's Party and Lee Jae-myung of the ruling Democratic Party pose for photograph ahead of a televised presidential debate for the forthcoming March 9 presidential election at KBS studio on March 02, 2022 in Seoul, South Korea. On March 9, South Koreans will elect their next president. The two front-runners, Lee Jae-myung of the Democratic Party and Yoon Suk-yeol of the People Power Party, are locked in a tight contest. (Photo by Jung Yeon-Je - Pool/Getty Images)

朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

【まとめ】

・17世論調査の15で、野党「国民の力」の尹候補が与党「共に民主党」の李候補を圧倒。

・「地上波TV3社」調査では40代以外すべて尹候補優勢。安候補との電撃的一本化はさらに追い風に。

・尹候補優勢の流れに変化をもたらす最大変数は政権寄りの中央選挙管理委員会の動き。

韓国の選挙法に基づき、大統領選の世論調査は本投票前1週間以降(今回は3月2日以降)の発表が禁止されている。そうしたことから3月2日までに行われた調査が3日に一斉に発表された。

朝鮮ドットコムは3月4日に、「3月2日」を含む17の世論調査結果を検索発表したが、それを見ると、17の内15の調査で、誤差範囲内もしくは範囲外で野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソギョル)候補が与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補を圧倒した。

李候補の支持率が高かったのは1つに過ぎなかった(0.2%差)。この調査はWinGKoreaという会社が行ったが、代表のパク・シヨン氏は平素から李在明候補を公然と支持してきた人物なので調査の公平性に「?」がつけられた。

同率は、世論調査専門企業4社(EMBRAIN PUBLIC・KSTATリサーチ・コリアリサーチ・韓国リサーチ)が共同で実施した全国指標調査(NBS・National Barometer Survey)のみで支持率はそれぞれ40%だった。

4者対決構図で、尹候補が李候補を誤差範囲外で上回った結果を発表したのは、オーマイニュース依頼・リアルメーター調査、テレビ朝鮮および朝鮮日報依頼・カンターコリア調査、デイリーアン依頼・世論調査公正調査、地上波3社の依頼調査の4つで、その他は誤差の範囲内だった。

1)選挙直前17世論調査での両候補支持率

表)メディア別世論調査結果

筆者作成)

 

2)「地上波TV3社」世論調査で見る尹候補優勢指標

信頼度が高いとされる「地上波TV3社」の世論調査で尹候補優勢の中身を見ると、地域別支持率では、光州・全羅道を除いた全地域で尹候補有利だった。勝負の鍵を握るソウルでは尹候補44.2%李候補35.9%となっている。年代別では40代以外はすべて尹候補優勢となった。当選可能性では、尹候補47.1%、李候補41.3%で誤差の範囲を超えた。

大統領選挙に求めるものでは、政権交代が54.5%、政権延長が35.8%で、ほぼ20ポイントの差が出ている。選挙1週間前で、政権交代を求める世論が政権延長を求める世論より15以上20ポイント近く上回る状態が維持されていれば、これまでどのような国、どのような選挙でも、そこから世論が変わった事例はない。

以上の調査内容だけでも尹錫悦候補の優位は固いが、これらの調査には、尹錫悦候補と安哲秀候補の電撃的一本化は反映されていない。また3月4日、5日の両日行われ、5日午後6時に締め切られた事前投票の投票率が36.93%と過去最高となったことも反映されていない。

 

3)尹候補への一本化で尹錫悦得票が5%上乗せ?

 3月3日午前8時に、尹錫悦候補と安哲秀候補との1本化が電撃的に発表されたが、これで安候補支持率7%の内、約5%分が尹候補に上乗せされると専門家は分析している。このままの趨勢で推移すれば、8ー10ポイント差で尹候補が勝利するだろうと予測している。韓国株式市場でも、尹候補銘柄が上昇し李候補銘柄は下落した。

 

4)最大の変数は選挙管理委員会の動き

この流れに変化をもたらす最大の変数は政権寄りの委員で固められている中央選挙管理委員会の動きだ。これまでの選挙でも与党寄り決定事例が度々指摘されている。今回も李候補の選挙公報物に「虚偽の記載」があるにもかかわらず、削除の必要なしと結論づけた。

また4日からの事前投票では、恩平区シンサ1洞の投票所で、あらかじめ「1番李在明」と記された投票用紙が発見され大騒ぎとなっている。そうしたことから今回の大統領選挙でも、最大の変数は選挙管理委員会の与党寄りの動きだとの声が高まっている。

トップ写真)テレビ討論会に臨む大統領選候補者。左から野党「正義党」の沈相奵氏、主要野党「国民の力」の尹錫悦氏、野党「国民の党」の安哲秀氏、与党「共に民主党」の李在明氏(2022年3月2日 韓国・ソウル)

出典)Photo by Jung Yeon-Je – Pool/Getty Images