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物価急騰、仏大統領選への影響

PARIS, FRANCE - MARCH 09: French President Emmanuel Macron welcomes Armenian Prime Minister Nikol Pachinian prior to their meeting at the Elysee Presidential Palace on March 9, 2022 in Paris, France. Armenia and France are celebrating the 30th anniversary of the establishment of diplomatic relations between the countries. On March 9, 2022, a high-level event is organized on this occasion in order to translate into structuring actions the objectives defined in the Franco-Armenian Economic Roadmap signed on December 9, 2021 by the two governments. (Photo by Antoine Gyori /Corbis via Getty Images)

Ulala(著述家)

フランスUlalaの視点」

【まとめ】

・4月10日に行われるフランスの大統領選挙まで残り1カ月になった。

・マクロン氏が他の候補を圧倒している。

・4月10日に行われるフランスの大統領選挙まで残り1カ月になった。

正式に立候補として認められるために必要である500人以上からの推薦状の提出もおわり、正式な候補者が出そろったところだ。正式な候補者となったのは、現職大統領のマクロン氏、前回2回目投票でマクロン氏と一騎打ちになった極右政党のルペン氏、極右の評論家のゼムール氏、そして最大野党の右派・共和党のペクレス氏など12人である。

 

だが、各候補者がかなり健闘しているものの、すでに支持率に大きな差がでている。8日に行われたElabe Instituteの調査によれば、大統領選挙の1回目の選挙において、マクロン氏を支持する割合は33.5%となり、2位の15%のルペン氏を大きく引き離した。また、2回目でマクロン氏とルペン氏が決戦した場合、マクロン氏を支持する割合61%、ルペン氏が39%という結果がでており、マクロン氏が他の候補者を圧倒している。

 

現在ヨーロッパは、ロシアとウクライナ間の戦争の影響を大きく受けていることもあり、次期フランス大統領には確実に対応できる指導力が強く求められている。今後1カ月でどこまでその力をアピールできるかが重要なポイントだ。

写真)フランスの国民連合の次期大統領選挙の候補者マリーヌ・ル・ペン氏 2022年3月11日 フランス北部のアルマンティエール

出典)Photo by Sylvain Lefevre/Getty Images

 

■ ガソリン代、ガス代の高騰

マクロン氏の大統領任期期間には、ガソリン代の高騰で黄色いベスト運動が長期で活発化し、多大な被害を及ぼした。だが、ロシアとウクライナ間の戦争が行われている中、現在の方が多くの分野で物価が高騰しさらに厳しい状況となっている。


特に、ガソリン代の高騰は、想像の域を遥かに超えた上昇だ。すでに歴史最高値の記録を更新し続けており、その値上がりの嵐は一向に収まる様子はない。「1リッターあたり2ユーロを超えて、高いと思いつつも給油したが、その一時間後に見たらさらに値段が上がっていた。」という状況も起こっている。その上、来週にはさらに価格が上昇することが予測されており、1リッターあたりの値段が3ユーロ近くになる可能性もでてきた。

写真)ガソリンスタンドで給油するタクシードライバー フランス・パリ 2022年3月2日

出典)Photo by Chesnot/Getty Images

また、通常時には軽油の方がガソリンよりも値段が安かっため、フランスではディーゼル車に乗る人が多かったぐらいだが、ロシアからの石油輸入に関して決定される可能性がある禁輸措置による影響で前例のない異常事態がおきている。ガソリンよりも軽油の方が値段が高いガソリンスタンドもでてきたのだ。今後起こりうる状況に備え、ロシアからの購入を制限し、北米または中東からの購入に切り替えているためである。

そんな中、ガソリン車をトウモロコシやサトウキビを原料としたバイオエタノール燃料車に切り替えようと、ユニットの設置を手掛ける自動車修理店に注文が殺到している。

ユニット設置には、700ユーロから1600ユーロの費用がかかるが、3月11日時点で、1リッターあたり、ディーゼル2.19ユーロ、ガソリン95が2.08~2.09ユーロであるところ、バイオエタノールが0.91ユーロであることを考えると、すぐに元が取れると利用者は期待している。

だが、物価の上昇はガソリンだけにとどまらず、小麦、原材料にも大きく影響をあたえている。ガス代、電気代の高騰も顕著だ。フランスのテレビでは省エネ生活の方法を紹介するニュースも増えた。今後の生活に国民の不安は募るばかりである。

このような状況の中、国民の要求にどこまで対応していけるか。今期の大統領に課された課題は大きく、通常時よりもより強い指導力を持つ人物が求められている。

 

■ 日本-ヨーロッパ便への影響

ロシアとウクライナ間の戦争は、日本とフランス間のフライトにも影響をあたえている。今後発生しうるさまざまなリスクを考慮し、JAL, ANAなどの欧州線の一部が便を欠航、または、通常とは異なる飛行ルートを利用して運航している状況だ。少なくとも3月16日までは続くことになっている。

 

また便数が減った結果、日本からヨーロッパ行の空路での郵便物も一時停止されることとなった。具体的には、英国やドイツ、フランス、ベルギー、フィンランドなどへの国際郵便物のうち、航空便と国際スピード郵便(EMS)の引き受けが一時停止される。なお、郵便が全て停止するわけではなく、船便は継続される予定だ。

ガソリン、ガス代の高騰、飛行機欠航、郵便物の一時停止など、フランス国内で直接起こっている戦争ではないが、それでもフランス国民にも大きな影響を与えている。先日行われた農業物産見本市でもマクロン大統領はこの状況は長引くと語っており、今後ますます不便になるだろう。こういった状況に対応するために、今からそれなりの心がまえも必要であるとともに、次期の大統領に大きな期待がかかる。

 

参考リンク

 

BFMTV調査 – 大統領選挙:マクロンが第1回投票で33.5%に急上昇、ルペンの15%、メランションの13%を上回る

 

ウクライナ戦争:なぜヨーロッパはロシアの石油とガスの禁輸措置をとらないのか|TF1 INFO

 

Guerre en Ukraine : des PME françaises à la peine

 

ウクライナ戦争:苦戦するフランスの中小企業

 

一部のガソリンスタンドで軽油がガソリンより高い理由

 

3月11日の燃料価格:ガソリンとディーゼルの値下げはなし

トップ写真)エリゼ大統領宮殿で、アルメニアのニコルパキニアン首相を歓迎するマクロン仏大統領 2022年3月9日 フランス・パリ

出典)Photo by Antoine Gyori /Corbis via Getty Images