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.国際  投稿日:2022/2/25

大統領選 ウクライナ危機でマクロン氏リード


Ulala(著述家)

フランスUlalaの視点」

【まとめ】

・マクロン大統領、再選目指し、3月5日にマルセイユで最初の選挙集会開く予定

・マクロン氏は今、全候補の中で、ヨーロッパとフランスを保護する能力が最も高い人物という評価が強まっている。

・4月の大統領選まで約1カ月ちょっと。候補者の戦いも最終局面に近づく。

 

フランスのエマニュエル・マクロン大統領が再選を目指し、3月5日に南部マルセイユで最初の選挙集会を開く予定としていることがわかった。マクロン氏は、ロシアとウクライナの問題が悪化しその対応に追われ、未だに正式に出馬表明していないものの、選挙集会があるということで出馬の意思は確認できたといえる。

■ ロシアとフランス大統領選挙2022

マクロン氏は、実は、2月26日に出馬の正式発表があるだろうと予測されていた。しかし、ウクライナ状勢の悪化を受け、全ての予定をキャンセルし対応に挑んだのだ。この結果、2月中の正式発表は無理だろうと言われている。

マクロン氏は緊迫するウクライナ情勢を緩和するために、今回、米国のジョー・バイデン大統領、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と電話会談、また、ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領英国のボリス・ジョンソン首相とも電話会談をするなど、関係各国への精力的に働きかけた。

欧州の現在の安全保障の枠組みは、「ほとんど時代遅れ」になっており、たとえプーチン大統領がウクライナを侵攻しなくても、ロシアが欧州大陸にとって恒久的な脅威となる恐れがある。ドイツのショルツ首相はまだ就任したばかりであるとともに、アメリカのバイデン大統領がロシアを挑発しつづけている現在の状況では、一番交渉に適しているのはフランスしかおらず、西洋の代表のような立場でマクロン氏が交渉に挑み危機解決を試みたのだ。

しかし、会見ではミンスク合意を完全に履行することでロシア側と認識が一致していたのにもかかわらず、プーチン大統領は、その後行った演説でミンスク合意を一方的に破棄。そしてウクライナ東部の親ロシア派が事実上支配している地域の独立をどことの合意もなく承認し、ロシア軍の現地への派遣を指示したのだ。

これに対し、フランスはもちろんのこと、アメリカ、ドイツ、日本と関係国は一斉に非難し、公式であれ、非公式であれ、約束を守らないプーチン大統領の行動を嘆いた。そして、ロシアの銀行がもはやヨーロッパ市場で資金を調達できなくなるようにするなどの制裁を決定したのだ。

■ 現在の大統領候補者の状況

緊迫するウクライナ情勢のために立候補の宣言を延期しなければならなかったにもかかわらず、その交渉が求める結果にならなかったマクロン氏。これを機とみて、急進左派「不屈のフランス」の創設者ジャン=リュック・メランション氏をはじめとする野党候補らは批判を繰り返した。選挙で優位な立場になるための、恰好の攻撃材料とみたのだ。しかし、マクロン氏はフランス国内では一定の評価を得ている。結果がどうであれ、マクロン氏は、今、すべての大統領候補の中で、ヨーロッパとフランスを保護する能力が最も高い人物という評価が強まっている。

一方、急激に支持率を下げているのが、中道右派の共和党、イルドフランス地域圏議長のバレリー・ペクレス氏だ。正式に大統領選候補になるためには、3月4日までに国会議員、欧州議員、地域圏議会及び県議会の議員、そして市長から集めた、500人以上の推薦署名を提出しなければいけないが、推薦署名の数においては、2143件と最高値を出しているペクレス氏。しかし人気度は下落の一途をたどっている。

現在、マクロン氏が24.5%でトップなのに対し、ペクレス氏は11.5%と4位にまで落ちた。原因としては、まず、政策内容がマクロン氏とほとんど変わらないという点がある。また集会での返答があまり評価されておらず、ロシアとの交渉のような強い姿勢の外交が求められるときに、強靭な対応ができるかという点に不安が残った。

▲写真 イルドフランス地域圏議長バレリー・ペクレス氏(2022年2月21日、フランス・パリ) 出典:Photo by Chesnot/Getty Images

人気度では、2位に極右政党・国民連合のマリーヌ・ルペン氏18%、3位は極右の政治評論家、エリック・ゼムール氏13.5%であるが、現時点では推薦署名の数が500件に達していない。ルペン氏393件、ゼムール氏350件である。3月4日までの提出期限までに推薦をどこまで集められるかで今後が決まる。

なお、現在、推薦署名が集まっていないルペン氏、ゼムール氏及び、メランション氏は、この推薦署名制度を批判している。しかしながら選挙直前に制度が変更できるかはかなり疑問であるが、人気度トップクラスの候補者が立候補できないというのもおかしな話であることは、報道官のアタル氏もある程度の共感を示している。

大統領選の候補者たちは現在このような状況にいる。4月の投開票日まで約1カ月ちょっとになった。候補者の戦いもいよいよ最終局面に近づいている。

<参考>

2022年大統領選:スポンサー、世論調査、発言時間のダッシュボード

トップ写真:EUーアフリカサミットの2日目 記者会見に臨むマクロン仏大統領(2022年2月17日、ベルギー・ブリュッセル) 出典:Photo by Thierry Monasse/Getty Images




この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

Ulala

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